COMPUTEX Taipei 2026、11万人超えの過去最大規模で閉幕

アジア最大級のICT展示会が11万人を動員、AIとグリーンテクノロジーで新たな時代を示した。

投稿者 central

アジア最大級のICT(情報通信技術)専門展示会として知られる「COMPUTEX TAIPEI 2026」が、6月5日をもって5日間の会期を終了した。主催者である台北市コンピュータ協会(TCA)aは、来場者数が過去最多となる11万人を突破したと発表。前回2025年の記録を大きく上回り、グローバルなテクノロジー産業の回復基調と、台湾エコシステムの中心地としての存在感を改めて証明する形となった。

メイン会場となった台北南港展覧館(Taipei Nangang Exhibition Center)の模様は、公式が公開したダイジェスト動画にも収められており、開幕初日から連日、各ブースに人垣が絶えない光景が映し出されている。特に目を引いたのは、AIアクセラレーターや次世代GPU、そしてエッジコンピューティング関連のデモンストレーションが従来以上に多くのスペースを占めていた点だ。展示規模の拡大は、参加企業数と出展ブース数の増加にも如実に表れており、2026年は過去最大級のフロアプランで運営された。

過去最大の10万人超え、コロナ禍前の水準を完全に回復

COMPUTEXは1981年の創設以来、世界有数のB2B(企業間取引)展示会として成長を遂げてきた。2020年から2022年にかけては新型コロナウイルスの影響で縮小やハイブリッド開催を余儀なくされたが、2023年以降は急速に回復。2025年に約9万人だった来場者数は、2026年には遂に11万人の大台を突破した。

この数字は単なる集客記録の更新にとどまらない。来場者の約半数が海外からのバイヤーやメディア関係者であるとされ、特に東南アジア、中東、欧州からの訪台者が顕著に増加している。台湾政府関係者によれば、半導体サプライチェーンの重要性が世界的に再認識される中で、COMPUTEXは単なる展示会ではなく、国際的なビジネス交渉の最前線としての役割を強めているという。

展示の主役は次世代AIとグリーンテクノロジー

今回のCOMPUTEX 2026の最大のテーマは、間違いなく「人工知能(AI)の実装フェーズ」だった。NVIDIA、AMD、Intelといった大手チップメーカーはもとより、ASUS、MSI、GIGABYTEといった台湾系システムメーカーも、AI PCやサーバー向けの新製品を多数投入した。

具体的には、NVIDIAは次世代アーキテクチャを採用したデータセンター向けGPUを、AMDはAI推論処理に特化した新たなAPUのロードマップをそれぞれ披露。Intelに至っては、クライアント向けCPUに統合するNPU(Neural Processing Unit)の性能向上率を具体的な数値で示し、競争が一段と激化している様子がうかがえた。また、TSMC(台湾積体電路製造)のブースでは、2ナノメートルプロセス技術の進捗状況が公開され、業界関係者の注目を集めた。

一方で、環境対応も主要な柱として浮上した。電源効率の向上やリサイクル素材の活用について具体的な数値目標を掲げる企業が増加した点は、この分野の大きな変化といえる。特にデータセンターの消費電力問題に対するソリューションとして、液冷システムや高効率電源ユニットを前面に押し出した展示は、バイヤーから真剣な商談の対象となっていた。

COMPUTEX 2026の会場ダイジェストに見る熱量

公開された会場ダイジェスト動画には、台北南港展覧館の4階部分にあたる大ホールの全景が収められている。広大なフロアには巨大スクリーンを設置したブースが立ち並び、各社のトップ自らがステージでプレゼンテーションを行う姿が印象的だ。

動画の中でも特に多くの時間が割かれていたのは、ロボティクスとスマートマニュファクチャリングの展示エリアだった。AIを搭載した協働ロボットが実際に部品を組み立てる様子や、クラウド経由で遠隔制御される物流システムのデモには、絶えず見学者が詰めかけていた。こうした展示は、単なる理論発表ではなく、すでに量産段階に入った製品が多くを占めており、台湾製造業の技術力の高さを印象づけるものだった。

COMPUTEXとは何か——その意義と日本企業の関わり

COMPUTEXは「台湾最大のテクノロジー見本市」と定義されることが多いが、実際には世界のPC・半導体産業の動向を決定づける重要なイベントである。国際見本市としての格付けでは、ドイツのIFAや中国のCESと並ぶ位置づけとされることが多い。

日本の読者にとって特に重要なのは、COMPUTEXが日本の家電量販店やPCショップのバイヤーだけでなく、ゲーム業界やエンターテインメント産業の技術担当者にとっても欠かせない情報源となっている点だ。最新のGPUやCPUの発表は、そのまま次世代ゲーム機やハイエンドゲーミングPCの性能に直結する。また、近年では日本のゲームメーカーが現地でパートナーシップを発表するケースも増えており、APEC(アジア太平洋経済協力)の枠組みを超えたビジネスチャンスの場としても機能している。

次世代ゲーミングとグラフィックス技術の進化

ゲーマーにとって見逃せないトピックとして、NVIDIAとAMDのGPUロードマップが挙げられる。両社ともレイトレーシング性能のさらなる向上と、AIによるアップスケーリング技術の進化を強調した。特にNVIDIAは「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」の次世代バージョンにおいて、フレームレートを従来比で約3倍に引き上げるデモを実施。実機を用いたプレイアブルデモには長蛇の列ができるほどの人気ぶりだった。

また、AMDは自社の「FidelityFX Super Resolution(FSR)」技術をオープンソースで提供する方針を改めて表明。これにより、対応タイトルが大幅に増加する可能性が示唆されており、普及が進めばゲーミングPCのエントリーモデルでも高画質・高フレームレートの環境が実現しやすくなるだろう。

COMPUTEX 2026の閉幕が示すもの——今後の展望

11万人超えの来場者数は、世界経済の不透明感が依然として残る中で、テクノロジー業界の活力が決して失われていないことを鮮明に示した。ただし、展示の内容を詳細に分析すると、成熟市場であるPCの新規需要は横ばいである一方、AI関連インフラや産業用システムへの需要が急拡大している実態が浮かび上がる。

この傾向は、COMPUTEXが従来の「PC見本市」から「AI×製造業の総合展示会」へとシフトしていることを如実に物語る。来年2027年の開催に向けては、さらに量子コンピューティングの実用化デモや、次世代半導体パッケージング技術の展示が増えると予想される。会場を提供する台北南港展覧館も、隣接地での新展示棟建設を計画しており、今後ますますの規模拡大が期待されている。

日本のテクノロジー企業や投資家にとっても、COMPUTEXから得られる情報は極めて有益だ。半導体不足が一巡した後の新たな競争軸として、性能効率やソフトウェアエコシステムの重要性が高まっている今こそ、台湾の現場から直接得られる知見は、今後の事業戦略の要となるだろう。閉幕から早くも、業界関係者の間では来年の出展計画や商談の予約に向けた動きが活発化している。COMPUTEX 2026は、単なる記録更新以上の意味を持つ、産業の未来を予見する貴重な機会となったといえる。

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