中間選挙敗北なら大統領のせい。側近はスケープゴート探し開始

トランプ政権の側近たちが中間選挙敗北に備え、責任を負わせるスケープゴート探しを開始した内部事情を解説。

投稿者 central
ハイライト
  • 共和党の戦略担当者は敗因がトランプ大統領の政策判断にあると認めている。
  • スケープゴートの最有力候補はホワイトハウス次席補佐官のジェームズ・ブレア氏だ。
  • 共和党にとって最大のリスクは民主党ではなく自陣営の内輪もめにある。

本当の責任は大統領にある。だが、それを本人に言うことはできない。2026年中間選挙を目前に控え、ホワイトハウスでは「責任の押し付け合い」が水面下で始まっている。下院・上院ともに過半数を失う可能性が指摘されるなか、トランプ大統領の側近たちは敗北に備え、差し出すべき「スケープゴート」の選定に動き出した。複数の関係者への取材で明らかになった。

共和党が中間選挙で苦戦する理由は何か

共和党が中間選挙で苦戦する最大の理由は、トランプ政権が選挙の年に開始したイランとの戦争と、物価全般の上昇を招いた政策に対する有権者の反発だ。共和党の選挙戦略担当者たちは内々に、敗因がトランプ大統領の政策判断にあると認めている。

「明らかに大統領のせいです」——ある戦略担当者はこう断言した。だが、この本音を公の場で語ることはもちろん、非公開の場で大統領本人に伝えることすらできない。トランプ氏を批判すれば、自身の政治生命が危うくなるからだ。政権内部では、本音を封じ込めざるを得ない側近たちの不満がくすぶり続けている。

その結果、側近たちが向かった先は、問題の根本ではなく「責任を負わされる人」の選定だった。異例の早さで始まったこの動きは、ホワイトハウス内にどれほど深刻な危機感が広がっているかを如実に示している。

スケープゴートの最有力候補、ジェームズ・ブレア氏とは

矛先として浮上したのは、ホワイトハウス次席補佐官の職務を一時的に離れ、中間選挙の戦略を指揮するジェームズ・ブレア氏だ。2024年の大統領選でトランプ陣営の支持者動員戦略を取り仕切り、今回の中間選挙でも同様の役割を担う。いわば「投票動員の総責任者」であり、トランプ政治の屋台骨を支える人物のひとりである。

ブレア氏が進めた施策の目玉は、一部の州で連邦下院の選挙区割りを前倒しで変更する計画だった。2024年にトランプが動員した幅広い支持層が2026年も共和党に票を投じれば、下院で議席を獲得しやすくなる——確実とは言えないまでも、そうした見通しがあった。イランとの戦争の影響を織り込んでも、この区割り変更により10〜15議席の上積みが見込めるはずだった。

大統領の政党は中間選挙で議席を失うのが通例だ。政権2年目で支持率が伸び悩むなか、区割り変更による「地盤の確保」は、共和党にとって生き残りをかけた最重要カードだった。ブレア氏がその責任を一手に引き受ける立場にあったことは、皮肉な運命と言える。

区割り変更がもたらした「10〜15議席」の誤算

この戦略は、序盤こそ順調に見えた。バージニア州最高裁が民主党側の区割り変更を阻止した際、ブレア氏はX(旧ツイッター)に「主よ、わたしに謙虚さをお与えください」と投稿し、優位を誇示していた。しかし、その5カ月後、事態は一変する。区割りを変更した選挙区の一部が、いまや民主党に有利になっていると分析されているのだ。

典型例が、フロリダ州フォートローダーデール南方の第25選挙区だ。区割り変更後、ここは「民主党やや優勢」と判定されており、下院共和党を支援する政治団体「Congressional Leadership Fund(CLF)」はこの選挙区への資金投入を取りやめた。選挙戦の趨勢を示す指標として、資金の引き揚げは特に深刻なシグナルとされる。

共和党の牙城であるテキサス州でも動揺が広がる。同党に有利な区割りへと変更した選挙区で議席確保が危うくなっており、現職のモニカ・デラクルス氏が臨む第15選挙区は、選挙分析の専門媒体『クック・ポリティカル・レポート』により「接戦で勝敗を見通せない」と評価された。共和党が固いと見なされてきた地域で、勝敗の行方が見えなくなっているのである。

ブレア氏を擁護する声と残された「信頼」

こうした批判に対し、ホワイトハウス内外のブレア氏の支持者たちは「イランとの戦争や政権高官を巡るスキャンダルが計画を狂わせることは予見できなかった」と反論する。区割り変更そのものは論理的に構築された策略であり、実行段階で想定外の事態が重なった側面は確かにある。

一方で、ブレア氏はトランプ大統領と首席補佐官スージー・ワイルズ氏から、いまも厚い信頼を得ているとみられる。この1週間にも大統領専用機「エアフォースワン」に同乗し、ふたつの選挙集会に同行した。最終的に責任を問われたとしても、形だけの措置になる可能性が指摘されている。

共和党が直面する「内輪もめ」というリスク

ブレア氏は声明で次のように述べた。「大統領も、上下両院の仲間たちも、わたしも、11月の勝利に集中しています。共和党員は全員、この大義のために同じように力を尽くすべきです」

彼が今年、政権の外から選挙戦略を指揮するためにホワイトハウスを離れた際、トランプ大統領は「一時的な措置にすぎず、選挙後には復帰する」と説明していた。だが、その前提はすでに揺らぎ始めている。

中間選挙まで残された時間は限られ、民主党の攻勢も強まるなか、共和党が「責任の所在」をめぐる内輪もめに割く時間はもはやほとんどない。いまや同党にとって最大のリスクは、民主党ではなく自陣営の混乱にあると言えるだろう。スケープゴート探しの行方は、共和党の選挙戦略そのものの成否を映し出す試金石になりつつある。

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