8月24日より事前登録が開始された「マビノギモバイル」。本作の発表会に合わせて来日した開発スタジオDevCAT代表のキム・ドンゴン氏と開発ディレクターのイ・ジフン氏への単独インタビューが実現した。キム氏は「マビノギ」の原初コンセプトを提示し、初期ストーリー「女神降臨(G1)」までを手掛けたオリジネーター。そのキム氏が再び立ち上げるモバイルタイトルは、単なるリメイクでも続編でもない――「異なる吟遊詩人が語る全く新しい『マビノギ』」として、ファンに衝撃と期待を与えている。
同じ世界、しかし別の吟遊詩人が紡ぐ物語
体験会でまず感じたのは、ティルコネイルの情景やナオの登場など、PC版「マビノギ」と地続きの世界だという親近感だった。キム氏はこの点を「まず『同じ世界だ』と感じていただくのが第一段階。プレイするうちに違いが見えてくる」と説明する。重要なのは「マビノギモバイル」が「マビノギのリメイクでもなければ、全く別作品でもない」という立ち位置だ。
キム氏は「マビノギは吟遊詩人が歌い伝える物語。吟遊詩人によって解釈が変わる。今回のモバイル版は、私と違う吟遊詩人――つまりディレクターのイ・ジフンが語る物語だ」と語る。イ氏は「大きな柱は守りつつ、20年前に実現できなかったアイディアを大量に盛り込んだ」と付け加えた。実際、開発チームはキム氏が「マビノギ」用に作成した未公開の開発資料をすべて共有し、当初の構想を再解釈する作業から始めたという。
カットシーンの進化と「特別な自分」体験
本作で特に印象的なのは、豊富に挿入されるカットシーンのクオリティだ。イ氏は「20年前、MMORPGにカットシーン演出を導入したのは『マビノギ』が初めてだった。しかし初挑ゆえの失敗や、技術的にできなかったことが多くあった」と振り返る。モバイル版では当時できなかった一人称視点のカットシーンを積極的に採用し、プレイヤーが「自分自身が冒険している」という没入感を高めている。
キム氏が最もこだわったのが「特別な自分」というコンセプトだ。「プレイヤーキャラクターはエリンを訪れた特別な存在。自分のキャラクターが物語で重要な役割を果たし、エリンに大きな影響を与える人物であることを強く感じてほしい」。装備や外見がそのままカットシーンに反映される仕組みも、この思想を具現化している。
間口を広げた戦闘システム――武器切り替えで変わるプレイスタイル
PC版「マビノギ」は長年のアップデートでスキルが複雑化し、新規プレイヤーには敷居が高くなっていた。モバイル版では、武器を変更することで画面に表示されるスキルが切り替わるシンプルな設計を採用。「すべてを直感的に」を掲げ、移動、戦闘、風景の閲覧までスマートフォンに最適化した。
ただし、戦闘中に武器を切り替えることはあえて不可能にしている。キム氏は「戦闘中にプレイスタイルを変えると難易度が上がり、間口の広さを損ねる」と説明。一方で「理論上はすべての武器スキルをマスターした最強キャラクターも作れる」とし、クラス特化の楽しみとキャラクター育成の自由度を両立させている。イ氏は韓国で「クラスバッジ」が大人気だったエピソードを紹介。「自分のクラスにプライドを持つプレイヤーが多く、職業議論が盛んだ」と語る。
「女神降臨」の先へ――キム氏が描き直す物語の行方
インタビューの最大のトピックは、ストーリーの今後だ。キム氏は「『マビノギ』では『女神降臨』の終わり方をうまくできなかった。その後、私の手を離れてしまったので、伝えたかったメッセージを届けられなかった」と率直に認める。だからこそ「マビノギモバイル」で、当時準備した物語を完全な形で実現したいという。
イ氏は「現在の『マビノギ』の延長がモバイル版ではない。全く違う『マビノギ』と言える」と断言。キム氏の資料にはG1以降の壮大なプロットがすべて収められており、それを基に新たな展開が用意されている。つまり、本作はPC版「マビノギ」とは異なるストーリーラインを歩むことになる。ファンにとっては「もしキム氏が作り続けていたらこうなっていた」というパラレルワールドを体験できる貴重な機会といえる。
短時間プレイからがっつり攻略まで――縦横対応の柔軟な設計
プレイスタイルの幅も注目点だ。イ氏は「現代の最も使われるゲーム機器はスマートフォン。縦画面では短くサクッと遊べるように、横画面では戦略的で本格的なプレイを想定している」と説明。さらに韓国ではIMAXスクリーンでプレイするイベントも行ったという。ストーリーボリュームは非常に大きいが、短時間で遊べるコンテンツも多数用意。ソロプレイにもNPCパーティーシステムや「偶然の出会いマッチング」など、プレイヤーの好みに応じた設計がなされている。
「マビノギモバイル」は、筆者にとってまさに「マビノギの世界に帰ってきた」感覚を呼び起こす作品だった。キム氏が語った「別の吟遊詩人が語る物語」というコンセプトは、単なる言い回しではなく、開発の根幹を貫く哲学である。『女神降臨』がどのような結末を迎え、その後どのような世界が広がるのか――2026年以降のサービス開始が待ち遠しい。