RTX Spark搭載ノート、GPUは強力もCPUに弱点が判明

RTX Spark搭載ノートPCのGPU性能は高いがCPU性能が想定以上に低いことが判明。

投稿者 central
ハイライト
  • RTX SparkのCPUはApple M5/M6と比較してシングルコア性能で大きく劣る。
  • 最大6,144基のCUDAコアを内蔵しながら、CPUがボトルネックになっている。
  • RTX Spark搭載ノートの価格は2,599ドルから6,999ドルと非常に高価だ。

Nvidiaが新たに投入した「RTX Spark」こと「N1X」チップを搭載するノートPCの実力が、米メディアによる集中的なテストで明らかになってきた。その結論は、GPU性能は確かに強いが、CPU性能が想定以上に弱いという、アンバランスなものだ。最大20コアのCPUを搭載しながら、Apple M5やM6シリーズと比較するとシングルコア性能で大きく引き離され、マルチコアでもエントリークラスのM6にすら並ばれている。RTX 5060〜5070相当とされる統合GPUは十分なゲーム性能を発揮するものの、CPU負荷の高いタイトルではフレームレートが伸び悩む場面も確認されている。最大6,144基のCUDAコアを内蔵しながら、肝心のCPUがボトルネックになるという皮肉な状況だ。

RTX Sparkとは何か──MediaTek製CPUとNvidia GPUの統合SoC

RTX Spark(開発コード名:N1X)は、NvidiaがPC向けに開発したArmベースのSoC(System on a Chip)だ。これまでノートPC向けSoCはQualcomm Snapdragon XシリーズやApple Mシリーズが先行してきたが、Nvidiaは自社の強みであるRTX Blackwell世代のGPUを統合し、競争に参入した。CPU部分は台湾MediaTekとの協業で開発され、合計20コアで構成。GPUは6,144基のCUDAコアを備え、最大128GBのユニファイドメモリに対応する。対応デバイスとしてはMicrosoft Surface Laptop Ultra、Asus ProArt P16、HP OmniBook Ultra、Lenovo Yoga 9nなどがラインアップされ、価格は2,599ドル〜6,999ドルと非常に高価だ。

NvidiaはRTX Sparkを「AppleやIntel、AMD、Qualcommに対抗する高性能チップ」と位置づける。実際、統合GPUとしては前例のない性能を備えており、ローカルAIモデルの実行やクリエイティブワーク、PCゲームを1台でこなすワークステーション的な使い方を想定している。

GPUは健闘──RTX 5060〜5070相当、DLSSでゲームも一応動作

複数のライターによるテストで、RTX SparkのGPU性能はおおむね好評だ。Tom Warren氏は「ブラックミス:悟空」をネイティブ解像度3,270×2,180、中設定、DLSSパフォーマンスモードで平均70fpsを記録。「Cyberpunk 2077」でも同条件で平均66fpsを達成した。ただし中設定が前提で、最高設定では厳しい。Antonio Di Benedetto氏は「RTX 5070ラップトップ版とRTX 5060ラップトップ版の中間程度」と評価し、DLSSやフレーム生成への依存が不可欠だと指摘する。

  • Asus ProArt P16(20コア/6,144 CUDA/128GB):Cyberpunk 2077 Ultra + DLSS Frame Gen x4 → 平均92fps
  • HP OmniBook Ultra(同構成/32GB):同条件で平均103fps
  • 比較対象(RTX 5070ノート):同条件で68fps(Frame Gen x2)

GPU性能だけ見れば、同程度のApple M5 MaxやRTX 5070ノートに匹敵する場面もある。BlenderのレンダリングではM5 Maxと同等の15秒を記録した。しかしこれは「統合GPUとして」の優秀さであり、価格を考えれば専用GPU搭載ゲーミングノートの方が明らかにコストパフォーマンスは高い。

CPUが弱点──シングルコアでAppleに大きく水をあけられる

最大の批判点はCPU性能だ。Geekbench 6のシングルコアテストで、RTX Spark(N1X)は3,000〜3,170点台。一方、Apple M5 Maxは4,330点、M6エントリーチップであるM6(12コア)に至っては4,653点と、30〜35%の差がついている。マルチコアでも、M6(12コア)の21,005点に対してN1Xは20,343〜20,074点とほぼ互角。コア数で上回りながら、Appleの下位チップと同程度なのだ。

チップ シングルコア マルチコア
Nvidia N1X(20コア) 3,170 20,343
Apple M5 Max(18コア) 4,330 29,143
Apple M6(12コア) 4,653 21,005

このCPU性能の低さは、ゲームでも如実に現れる。Sean Hollister氏は「Helldivers 2」でDLSS倍率を下げても敵が多いミッションで60fpsを維持できず、「Star Wars Zero Company」では画質設定を変更しても37〜39fpsが上限だったと報告している。また2003年発売の「Max Payne 2」でさえ50fpsに落ち込む場面があり、エミュレーション層のオーバーヘッドも加わって、旧世代のゲームでももたつくことがある。

Tom Warren氏は「Qualcomm Snapdragon Xシリーズの方がCPU性能ではAppleに近い。RTX SparkのCPUはMediaTek製だが、次世代では大幅な改善が必要」と述べている。QualcommがNuvia買収を経てCPUを磨き上げたように、Nvidiaにも時間がかかるという見方だ。

バッテリーは平均的、5時間で限界

Sean氏の実測では、Web作業やビデオ通話を含む一般的な利用で5時間40分。動画編集を含めると5時間を切る。ゲームやAI処理ではさらに短く、バッテリー駆動時間は特別良いわけではない。ただし充電は速く、140W USB-C PDで1時間15分で95%まで回復する。筐体は99.9Whの大型バッテリーを搭載し、航空機持ち込み上限ぎりぎりだ。

ローカルAIはまだ発展途上

NvidiaはRTX Sparkの売りの1つとしてローカルAI実行を掲げるが、現状は開発者向けベータの域を出ない。Microsoftの初期セットアップでHermes AgentやOpenClawをワンクリック導入できるが、その後はユーザー任せ。Qwen 3.8 27Bモデルを使った画像編集処理では36分でバッテリーの30%を消費し、しかもトリミングが失敗するなどクオリティも安定しない。

Tom氏は「クラウドAIの方が速く確実。エージェントにファイルアクセス権を渡すのも気が引ける」と述べ、Sean氏も「Claudeの方が結果が良く、しかもバッテリー消費が少ない」と語る。ユニファイドメモリの利点は将来のモデル進化で生きる可能性があるが、いまのところ「無料のトークン」を得る代償として熱とバッテリー消費が大きすぎる。

ハードウェア品質は高いが、価格が重い

各メーカーはハイエンドモデルにふさわしい素材とディスプレイを採用している。Asus ProArt P16のOLEDは明るく正確、HP OmniBook Ultraは重いが剛性感が高い。Lenovo Yoga 9nは2-in-1の柔軟性が光る。しかし価格は最小構成でも2,599ドル(約41万円)、最大構成では6,999ドル(約112万円)と、MacBook Proと同等かそれ以上だ。PC市場全体が減少傾向にある中、誰がこの価格を払うのかという疑問は拭えない。

Antonio氏は「競争が増えたことは歓迎だが、第2世代でCPU性能を改善し、より手頃な価格のモデルが出てくることを期待する」と総括。Sean氏は「方向性と理念は評価するが、自分で買いたいと思える製品ではない」と切り捨てる。

総括:GPUは一級、CPUは二級──次世代に期待

RTX Sparkは、統合GPUとしての可能性を強く示した。Nvidiaが本気でArm PC市場に参入したという事実は、業界全体にとって好ましい。しかし、MediaTek製CPUの性能不足は明らかで、AppleやQualcommに対抗するには大幅な改善が必要だ。GPUとCPUのバランスが改善され、価格がこなれた第2世代が登場するまで、多くのユーザーにとって「魅力的だが買えない製品」にとどまるだろう。なお、Nvidiaはより安価な「N1」チップの準備も噂されており、今後の動向から目が離せない。

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