『ファイアーエムブレム 万紫千紅』の感想を求められたら、筆者はまず「カオス」と答えるだろう。それ以上でもそれ以下でもない。発売から20時間ほどプレイした時点での正直な印象は、とにかく要素が多すぎて、何がどう評価すべきポイントなのか、まだ言語化できないというのが実情だ。RPG、SRPG、ストラテジー、ダンジョン探索、リソース管理――これらが一つのタイトルにこれでもかと詰め込まれ、さらに複数のルートが存在する。まさに混沌の坩堝である。
なぜ「感想を言うのが難しい」のか――その正体
本作がここまで評価を難しくしている理由は、一言で言えば「贅沢すぎる」ことにある。シリーズとして明確にAAA級の予算とリソースが投じられており、モデルやアニメーション、演出のすべてがリッチだ。しかし、その贅沢さが裏目に出ている面がある。ボリュームを出すために詰め込まれた要素の多さが、ゲーム全体の焦点をぼやけさせているのだ。
具体的には、SRPGとしての純粋な戦術パートに割かれる時間が相対的に少なく感じられる。『風花雪月』でも似たような印象はあったが、今作はその傾向がさらに顕著だ。しかも、『風花雪月』ほど緻密な人間ドラマが構築されているわけではなく、大味なストーリーテリングに終始している場面も少なくない。シリーズ古参のファンほど、この「薄味感」に戸惑うかもしれない。
混沌の中にある野心的な試み
しかし、本作を単なる「ごちゃ混ぜ」と切り捨てるのは早計だ。物量そのものは圧巻で、その混沌を「ごちゃ混ぜゲーム」として正面から受け止めたとき、かなり野心的な作品であることが見えてくる。戦闘以外の要素――ダンジョン探索やリソース管理、拠点運営など――は、どれも単体で見れば一定の完成度を誇っており、これらが有機的に絡み合う瞬間に独特の面白さが生まれる。
実際、序盤は「何をすればいいのかわからない」という混乱が先行するが、中盤以降で各要素が連鎖し始めると、一気にのめり込める場面もある。問題は、その「中盤以降」にたどり着くまでのハードルが高いことだ。ゲームバランスもストーリーも、クリアして初めて全体像が見える部分が多く、途中段階で「おもしろい」と断言するのは難しい。
古参ファンと新規プレイヤーの間で
筆者は比較的古めのエムブレマーだが、それゆえに最初は面食らった。SRPGの時間が減ったこと、人間ドラマが大味になったこと――これらは明らかにシリーズの方向性の変化を示している。しかし同時に、その変化を拒絶するだけではもったいないとも感じる。『ファイアーエムブレム 万紫千紅』は、従来のファンが求める「純粋なSRPG体験」とは別の次元で、新しいゲーム体験を提示しようとしているのだ。
新規プレイヤーにとっては、これら多様な要素がむしろ歓迎されるかもしれない。一つのゲームで様々なジャンルを味わえるという点は、間違いなく本作の強みだ。問題は、そのバランスが極端すぎること。すべてを中途半端に感じさせる危うさと、すべてを高水準でまとめ上げた場合に得られる圧倒的な満足感との間で、開発チームは綱渡りをしている。
現時点での評価とこれから
現時点で「どういうゲームか」を一言で説明するのは不可能だ。それほどまでに本作は複雑で、多層的で、混沌としている。しかし、そういうゲームと出会えること自体が、ゲーマーにとっては貴重な体験であることも確かだ。
クリア後に評価ががらりと変わる可能性も十分にある。序盤の不満が中盤以降の展開で帳消しになる要素がいくつか存在することも確認している。まずは最後までプレイし、その上で改めて「混沌の全貌」を語るべきだろう。それまでは、『ファイアーエムブレム 万紫千紅』は「カオス」という一言で評するのが、最も正確であり、最も誠実な答えなのかもしれない。