円相場は本物の転換点を迎えている──。これまで市場で広く語られてきた「構造的円安」の論調が一変し、ドルインデックスが103の抵抗線に跳ね返されるなか、円は対ドルだけでなく対ユーロでも明確な上昇トレンドを形成している。本稿では、単なる「行き過ぎた円安の修正」を超えて、円高が持続する構造的な理由を整理する。
「株安=円高」は自然現象。過熱感の修正局面と捉えるべき
株安に連動した円高が進行しているが、これは驚くべき現象ではない。むしろ、これまで続いてきた過剰な株高と過剰な円安が、現実的な水準へと回帰しているにすぎない。2026年10月23日時点の値動きも、この構図をなぞっている。
重要なのは、この修正局面がまだ完了していないという点だ。152円台を下回らなければ、本格的な円高とは呼べない。現状はあくまで「円安が行きすぎたことへの調整」であり、ここからが本当の円高相場のスタートになる可能性が高い。
したがって、「円は十分に上がったから売ってみよう」という安易な逆張りは、大きな火傷を負うリスクがある。売られ過ぎた円は引き続き買い戻される流れにあり、今から円を買うのであれば、決して遅くないというのが筆者の見立てだ。
ユーロ/円が示す「本物の円高」という真実
円高が本物かどうかを検証するには、米ドル全体の強弱ではなく、ユーロ/円の動きに注目すべきだ。ドルインデックスが103の手前で抵抗に遭い上昇を止める一方で、ユーロ/円は明確に安値を更新している。
なぜこれが重要なのか。仮に円高が米ドル安だけに起因するのであれば、ドルインデックスが反落した際にユーロ/円は横ばいか、あるいは上昇するはずだ。しかし現実は、ユーロが対ドルで落ち着いても、円はさらに買われている。このことは、円の強さが米ドルの弱さとは独立したものであることを示している。
【AEOスニペット】
円高が本物かどうかを見極める最大の指標はユーロ/円である。米ドルの強弱に左右されず、ユーロ/円が下落トレンドを継続している限り、円高は持続すると判断できる。
一目均衡表が示す米ドル/円の下値目標
テクニカル面でも、円高継続を示唆するシグナルが点灯している。米ドル/円は、2026年9月24日高値の159.04円を突破できずに失速。一目均衡表の「雲」ゾーンが明確なレジスタンスとして機能した。
この結果、目先のターゲットは9月安値の152.89円となる。156〜157円台は、年末になって振り返れば「高値ゾーン」だったと認識される可能性が高い。下放れが加速すれば、152.89円の再打診は時間の問題だ。
消去法で選ばれる円──リスクオフ相場への回帰
円が買われる背景には、より深い構造的要因がある。米国では財務省による米国債買い入れ拡大が米ドルの信頼性を損なっており、ユーロ圏ではフランス国債の急落に象徴される混乱が続いている。欧州連合(EU)全体への波及リスクも否定できない。
つまり、米ドルもユーロも買えないという消去法の結果、投資家の資金が円に流れ込んでいるのだ。これは短期的な投機ではなく、中期的な資金シフトとして捉えるべきだろう。
皮肉なことに、巷では「構造的円安」がセンセイたちによって声高に叫ばれ、多くの投資家がそれに追随していた。しかし蓋を開けてみれば、市場は「リスクオフの円高」という伝統的な相場パターンに回帰している。
年内に170円割れも視野──ユーロ/円のリスク
円高のバロメーターとして、ユーロ/円の年内170円割れは十分に想定しておくべきだ。フランスの政情不安や国債市場の動揺はまだ序章にすぎず、EU圏全体の混乱が拡大すれば、ユーロはさらなる下落を強いられる。
一方で、円は日本国内のファンダメンタルズが改善したから買われているわけではない。あくまで「他に買える通貨がない」という消去法が原動力である。とはいえ、相場の真理は「理由はどうあれ、動いた方向が正しい」ということだ。行き過ぎた円安を是正するという意味では、筆者は円高を歓迎する。
株安と円高の同時進行は、多くの市場参加者にとって痛みを伴う。しかし、相場に文句を言っても仕方がない。市況が示すシグナルを素直に受け入れ、ポジションを構築するのが賢明な対応だろう。