ドイツ・ベルリンで開催された欧州最大級のテクノロジー見本市「IFA Berlin 2026」で、ロボット掃除機がアレルギー対策という新たな領域に本格参入した。AnkerのEufyとEcovacsが、ダニアレルゲンの除去率を第三者認証で実証した新製品を相次いで披露。ロボット掃除機は「掃除道具」から「健康機器」へと進化しつつある。
今年のIFAは、昨年と比較すると派手さはやや後退した印象だ。それでも、iRobotの「Roomba Duo」やヒューマノイドのデモ、空飛ぶクルマのコンセプトなど、話題は尽きない。むしろ今年は各社が「自社の得意分野を徹底的に磨き込む」方向へシフトしたことが、明確なトレンドとして浮かび上がった。
ロボット掃除機によるアレルギー対策が本格化 ダニ除去率は最大99%
ロボット掃除機はこれまで、ホコリやペットの毛を日常的に除去する「メンテナンスツール」としての役割が中心だった。しかし、喘息や重度のアレルギーを持つ人にとっては、HEPA認証済みの掃除機と空気清浄機を別途用意するのが一般的だ。IFA Berlin 2026では、この常識に挑戦する製品が登場している。
Anker(Eufy)の「Eufy Omni E35aa」は、米国喘息・アレルギー財団(AAFA)の認証を取得し、99%のダニ除去を謳う。一方、Ecovacsの「Deebot X12S Omnicyclonea」は、SGS Testing & Control Services Singaporeの試験で、カーペットからダニアレルゲンを平均97.44%、ダニを平均95.45%除去したことが実証されている。
ロボット掃除機のアレルギー対策とは?
アレルギー対策対応のロボット掃除機は、Eufy Omni E35(ダニ除去率99%)やEcovacs Deebot X12S Omnicyclone(ダニアレルゲン除去率97.44%)など、第三者認証を取得したモデルが登場。吸引に加え、除菌・殺菌機能も備えています。
数値だけを見れば、97.44%と99%の差はそれほど大きなものではない。注目すべきは、ロボット掃除機メーカーが「高い清掃・除菌性能」を第三者認証という形で証明し始めたことだ。3匹の喘息持ちの猫と暮らし、季節性アレルギーにも悩む筆者としては、これらの主張が実際の生活でどの程度の効果を発揮するのか、非常に興味深い。
ロボット掃除機が清掃だけでなく除菌・殺菌の領域へと役割を広げる流れは、スチームやUVライト、スプレー機能を搭載したモデルの登場により、さらに加速するだろう。過去10年で空気清浄機が「手軽に空気をきれいにする方法」として一般家庭に浸透したのと同様に、認証付きの高性能ロボット掃除機も同じ道を辿るかもしれない。
こびりついた頑固な汚れが次の課題 高圧スプレーと大吸引力の攻防
ロボット掃除機の吸引性能はここ数年で飛躍的に向上したが、まだ克服できていない課題がある。それが、乾燥してこびりついたシミへの対応だ。タイルにこぼれたトマトソースや赤ワイン、ケチャップの古いシミを除去するには、今でも人間の腕力に頼らざるを得ない。
各社はこの課題に、それぞれ異なるアプローチで挑む。iRobotとEufyの新モデルは、14N~18Nの下向き加圧を実現したセルフクリーニング式ローラーモップを採用し、物理的な「こすり力」を強化。iRobotはRoomba 875 Comboに「スカート」機構を追加し、すでに35,000パスカルの吸引力を持つモデルにさらなるブーストをかけた。
一方、EcovacsのDeebot X12S Omnicycloneは高圧ウォータースプレーを搭載し、固着したシミを飽和させて浮かせる手法を採る。アイデアは興味深いが、実演ではケチャップのシミを外して床を水浸しにしてしまう場面も見られた。それでも最終的にはシミを除去できていたのだから、潜在能力は侮れない。Roomba 875 Comboは底部からの高温スチームスプレーでシミを緩めるとのことだが、デモは行われず、実際の効果はラボテストを待つ必要がある。
しかし、ロボット掃除機にはサイズという物理的な制約がつきまとう。iRobotのDuoのように、床洗浄ユニットとモバイルドッキングステーションを組み合わせた設計でもない限り、本格的なウェット&ドライモップやアップライト掃除機のパワーに及ばないのが現実だ。
ヒューマノイドロボットは「期待外れ」 実用化まで5〜10年、価格は10万ドル級
今年のヒューマノイドロボットのデモは、正直なところ「退屈」だった。バック転を披露するPrimeBot T1/Q1、洗濯物の仕分けやピッキングを行うDreameのロボットバトラー、SwitchBotのOnero H1などは依然として存在感を示しているが、昨年と比較して本質的な進化が見られない。
現実的なタイムラインを見れば、洗濯物をたたむなどの家事を部分的にこなせるホームアシスタントの実用化には5〜10年かかり、価格も1万ドルではなく10万ドルに近い水準になるとみられる。つまり、購入して家庭で使えるヒューマノイドロボットが登場するまで、IFAのステージでは今後何年も同じようなデモが繰り返されることになるだろう。
ヒューマノイドに食指が動かない理由のひとつが、ロボット掃除機の進化だ。編集部のラボテストでも、最新モデルは障害物を回避しながら驚くべきスピードと応答性で部屋を駆け抜けている。IFAの会場でDreameのX60 Ultra Complete Proが複雑な障害物を完璧に避けながら移動する様子も、ロボット掃除機の新時代を印象付けた。ただし、同モデルの米国投入についてDreameの担当者は「現時点で確定した計画はない」と語る。
さらに、FCC(米連邦通信委員会)による規制と免除措置をめぐる不確実性が影を落とす。多くの先進的なロボット部品は中国のサプライチェーンから調達されており、FCCの裁定が免除なしで維持されれば、米国でのヒューマノイド開発は今後10年、停滞する可能性もある。
バルコニーソーラーが欧州から世界へ 米国でも合法化が進む
バルコニーソーラーとは、バルコニーや屋外スペースにプラグイン式のソーラーパネルを設置し、発電した電力を蓄電池に貯めて電力料金の高い時間帯に家電へ供給する仕組み。集合住宅の住人や賃貸住宅に暮らす人々にとって、屋根にソーラーパネルを設置できない場合の有力な代替手段として、欧州で普及が進んでいる。
IFA Berlin 2026では、Bluettiの「Balco 260」「Balco 500」、Jackeryの「Solar Vault 3シリーズ」、EcoFlowの「Stream」など、主要メーカーがこぞってバルコニーソーラー製品を展示した。これらのシステムは拡張性が高く、ニーズに応じてバッテリー増設やソーラーパネルの追加、スマート電力管理が可能だ。
米国では、ニュージャージー州が10番目のバルコニーソーラー合法化州となった。同州の法律は、不動産管理会社やHOA(住宅所有者協会)がバルコニーソーラーの設置を妨げることを制限しており、電力コストが高く屋根への設置が難しいニュージャージーやニューヨークなどの都市部で需要が見込まれる。
ただし、Bluettiの担当者はIFAのブースで、FCC規制の不確実性を理由に米国展開を一時停止していると明かした。JackeryとEcoFlowが計画通り前進する中で、バルコニーソーラーの普及そのものは進むだろうが、家庭用バッテリーとソーラーパネルの供給には影響が出る可能性がある。
ダイソンが異例の11製品を投入 新カテゴリー「CameraJet」登場
ダイソンは今回、IFAのメイン会場ではなくオフサイトでの展示だったが、その存在感は圧倒的だった。11の新製品を発表し、これまでのリリースペースと比較しても異例の速さでポートフォリオを拡充している。
最大の話題は、「Dyson CameraJet」だ。ウォーターフロッサーを統合したAI最適化電動歯ブラシで、価格は500ドル。カメラを搭載し、歯間のクリーニングをサポートする。掃除機や空気清浄機とは異なり、既存の技術をそのまま転用できる領域ではないだけに、新カテゴリー参入として大きな注目を集めた。
その他にも、フルモデルチェンジされた「HushJet」空気清浄機、ロボット掃除機の新モデル群、初のドライヤーブラシ、次世代ヘアストレートナーなどが発表された。Roborock、iRobot、Dreame、Narwal、Mova、Sharkなどが毎年多数のモデルを投入する中で、ダイソンも市場のペースに適応し始めたと見るべきだろう。
米国では買えない「逸品」の存在 IFAが突きつける市場の壁
IFAのブースを歩いていて毎回感じるのが、米国市場では購入できない優れた製品の多さだ。特にDreameとMovaの展示は圧巻で、ロボット掃除機、コードレス掃除機、ウェット&ドライ掃除機、ロボット芝刈り機、プールロボット、窓掃除ロボット、空気清浄機、スマートペットテック、美容機器、家庭用バッテリーまで、あらゆるカテゴリーの製品が並んでいた。
DreameはIFA向けに40以上の製品リリースを用意し、Movaも同規模の新製品を披露した。しかし、これらの大部分は米国では販売されておらず、実際に評価することも難しい。AnkerやEcovacs(Tineco、Yeedi)についても同様の状況がある。
関税や規制が一夜にして変わり得る現状を踏まえると、この構図は容易に改善しないだろう。世界の優れた製品が市場の壁に阻まれ続けるのは、技術の進歩を実感したい消費者にとって実に惜しいことだ。
IFA Berlin 2026は、ロボット掃除機が「掃除」から「健康管理」へと役割を広げる転換点となった。アレルギー対策、深掃除への挑戦、バルコニーソーラー、ダイソンの新カテゴリー参入。個々の発表は派手さに欠けるかもしれないが、テクノロジーが生活の質を確実に向上させていることを実感させる内容だった。来年のIFAで、これらのトレンドがどのように発展しているのか、注目が集まる。
編集部注:本記事の執筆にあたり、IFAカンファレンスへの渡航費はRoborockが負担した。編集上の判断と意見は独自のものである。