高評価を得ていたFPSアドベンチャー『Luna Abyss』を手がけたKwalee Labsが、発売からわずか約1ヶ月で突如閉鎖されたことが明らかになった。同スタジオのCEOであるHollie Emery氏が6月17日、LinkedIn上で全スタッフの解雇とスタジオ閉鎖を発表した。デビュー作のリリースから間もないタイミングでの出来事に、業界内外から驚きの声が広がっている。
デビュー作『Luna Abyss』、5月にリリースされたばかり
Kwalee Labsは、英国のパブリッシャーKwaleeの社内スタジオであり、その前身はUnreal Engineでの開発経験を持つベテランたちが2019年に設立したスタジオ「Bonsai Collective」だ。同スタジオが約7年もの歳月をかけて開発したのが、ストーリー主導型のFPSアクションアドベンチャー『Luna Abyss』である。
本作の舞台は、まやかしの月「ルナ」。月に擬態する奇妙な衛星の地下には巨大建造物の廃墟が眠り、狂気を誘う声がこだまする。主人公は刑罰としてこのルナの探索を課せられた囚人であり、謎の脅威と戦いながら武器を手に深淵へと進んでいく。『サイレントヒル』『DOOM』『Destiny』といったゲーム作品に加え、「新世紀エヴァンゲリオン」や弐瓶勉氏の「BLAME!」、伊藤潤二氏や芥川龍之介の怪奇作品などからインスピレーションを得たという独自の世界観が特徴だ。
『Luna Abyss』は5月21日にSteam版、22日にPC(Epic Gamesストア/Microsoft Store)/PS5a/Xbox Series X|S版がリリースされ、Xbox Game Passにも対応。リリース後は高い評価を獲得し、Steamユーザーレビューでは約600件中86%が好評とする「非常に好評」ステータスを達成した。ステージを駆け回る銃撃戦や、不気味でホラー要素も感じられる演出が多くのプレイヤーから支持された形だ。
CEOが「完全に我々のコントロール外」と説明
Hollie Emery氏はLinkedInへの投稿で、今回のレイオフが「完全に我々のコントロール外(completely outside of our control)」の出来事だったと述べている。この発言から、母体であるKwalee経営陣の判断による突然の決定であり、スタジオ側にとっては寝耳に水の事態だったことがうかがえる。具体的な閉鎖理由は明らかにされていないが、経営上の判断が背景にあるとみられる。
本作の開発母体であるBonsai Collectiveは、開発途中に350万ドル(約5億6000万円)の投資などを受けて開発費を確保していたものの、昨年には経営破綻を起こしていたことが明らかになっている(英国政府の登記情報による)。その後、Kwaleeに買収され、ついにリリースに漕ぎ着けた『Luna Abyss』だが、好評レビューが多数寄せられるタイトルであったにもかかわらず、スタジオの存続にはつながらなかった。赤字を補いきれなかったか、あるいはKwaleeが期待するほどの売上を達成できなかった可能性が指摘されている。
高評価タイトルでもスタジオ存続に至らぬ現実
今回の一件は、ゲーム業界の厳しい現実を改めて浮き彫りにした。特にインディーや中規模スタジオにとって、作品が批評的・商業的に成功しても、開発費を回収し、スタジオを継続的に運営することの難しさを示している。『Luna Abyss』のように高評価を獲得しながらも、開発元が消滅するケースは後を絶たず、業界関係者の間では持続可能なビジネスモデルの模索が続いている。
なお、『Luna Abyss(ルナ・アビス)』の販売・配信は現在も継続されている。PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)、PS5、Xbox Series X|S向けに販売中で、PC/Xbox Game Passにも対応している。スタジオ閉鎖が今後のアップデートやサポートにどのような影響を与えるかについては、現時点では不明だ。