成長を感じる。よつばと!16巻で見せる新たな表情

待望の16巻で描かれる、よつばの確かな成長と新たな人間関係の変化とは?

投稿者 central
約3年ぶりの新刊『よつばと!』16巻が2024年に発売され、ファンを歓喜させた。
ハイライト
  • よつばの自転車上達が象徴する、彼女の視覚的な成長が本巻の冒頭で描かれる。
  • ヤンダとの関係性が山登りイベントを通じて協力関係へと変化する。
  • 『あずまんが大王』から大阪が教師役で登場し、シリーズを超えた感動を呼ぶ。

待望の新刊『よつばと!』16巻が、2024年に日本で発売され、長い沈黙を破ってファンのもとに届いた。前巻15巻の発売から実に約3年ぶりとなる本作は、単なる日常のひとコマを描くだけでなく、主人公・よつばの確かな“成長”を鮮やかに印象づける一冊だ。あずまきよひこ氏が長年にわたり描き続けてきたこの少女が、今、新たな表情を見せ始めている。

自転車の上達が象徴する、見える“経験値”

本巻の冒頭で読者が目にするのは、父親の小岩井葉介が、よつばが自転車を乗りこなす姿を見守る何気ない光景だ。かつてよつばが初めて自転車を手にし、ヨタヨタと漕ぐ姿を描いたエピソードを覚えている読者であれば、このシーンの持つ重みに気づくだろう。彼女のライディングは明らかに安定し、経験の積み重ねが如実に表れている。

興味深いのは、この成長を小岩井自身も自覚し始める点だ。自転車屋の店主が「お嬢ちゃん、ずいぶん上手くなったね」と何気なく口にする言葉に、父親はどこか複雑な表情を浮かべる——それは、子の成長を実感する親の感情の機微を巧みに捉えた場面といえる。もちろんよつばは相変わらずクリスマスの飾りに夢中で、あの無邪気さは健在だ。だが、そこに「できるようになったこと」が確実に積み上がっていることが、本巻では随所で示される。

ヤンダとの関係に見る、新たな局面

よつばの成長を象徴するもう一つの要素が、父の同僚であり友人でもあるヤンダとの関係性の変化だ。ヤンダはこれまで、まるで年上の兄弟のようによつばをからかい、よつばもまた彼を毛嫌いする——そんな図式が長らく続いてきた。しかし16巻では、山登りというイベントをきっかけに、状況が変わる。

登山という共通の目的の下、ヤンダが第二の保護者的な役割を担うことで、二人の間に今までにない協力関係が生まれる。もちろん随所でお決まりの衝突も描かれるが、過去のハイライトシーンと比較すれば、これは明らかに“前進”だ。からかい合いの中に、ほのかな信頼感が芽生え始めている。

学校への憧れ——新たな世界への扉

本巻で最も印象的なテーマの一つが「学校」だ。よつばと小岩井が恵那やみうらと出会い、やがて自分が通うことになる小学校について話を聞くシーンでは、彼女の内面の変化がよく表れている。教師とは何か、通学路はどんな道か、校庭の遊具はどれほど難しいか——彼女は真剣な表情で情報を吸収する。

特筆すべきは、よつばが「先生になる」という将来の夢を口にする場面だ。しかし、その次の瞬間には「パパをカブトムシにする」と言い出す。ここに、彼女の成長と変わらぬ無邪気さが同居している。つまり、思考の深度は確実に増しているものの、根底にある奔放な想像力は失われていないのだ。

あずまんが大王とのクロスオーバーが示す継承

そして、本巻最大のサプライズの一つが、あずまきよひこ氏の前作『あずまんが大王』とのクロスオーバーだ。昨年予告されていた通り、春日歩(通称・大阪)のその後の姿が描かれている。かつてあの作品で独特の脱力感を見せていた彼女が、なんと教師になっている——この意外すぎる設定には思わず笑みがこぼれる。

さらに、彼女がよつばと交流するシーンは、シリーズを超えた感動を呼ぶ。よつばに対して「私も昔、先生に影響を受けたんだ」と語る大阪の姿は、『あずまんが大王』で谷崎ゆかりが彼女に与えた影響が、今なお連鎖していることを示唆している。この小さなカメオ出演は、ファンにとってたまらない一本の線で結ばれた瞬間だろう。

『よつばと!』が描く、成長という名の普遍性

『よつばと!』は、決してドラマチックな展開で読者を驚かせる作品ではない。しかし、本巻16巻は「日常こそが成長の舞台である」ということを、これほど明確に示した巻はなかったのではないか。よつばは自転車に乗りこなし、ヤンダと協力し、学校を意識し始める。彼女の中で、世界は確実に広がっている。

この作品の魅力は、読み進めるたびに「あの頃のよつば」と「今のよつば」を比較できる点にある。1巻から読み返せば、その差は歴然だ。小さな積み重ねが、確実に彼女を変化させている。本巻は、そのプロセスを愛おしむようにして描き出した、シリーズ屈指の充実した一冊といえるだろう。

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