Nothingは2026年9月30日、同社史上最高峰のワイヤレスヘッドホン「Nothing Headphone (1) Pro」を発表した。最大の特徴は、ヘッドホンとしては異例となる3基のドライバーを搭載した3ウェイ構成、およびロンドンの名門Metropolis Studiosとの協業により開発されたプロフェッショナルオーディオ機能にある。メキシコ市場ではすでに7,999ペソでの販売がスタートしており、スタジオクオリティのサウンドと日常的なリスニング体験の融合を掲げる製品として、同社の新たな挑戦を示す一台となっている。
Nothing Headphone (1) Proとは
3基のドライバー構成と最大46dBのANC精度、Metropolis Studios監修によるプロ仕様のオーディオ機能を搭載するNothingの最上位ワイヤレスヘッドホン。メキシコにて7,999ペソで販売中。
3ドライバー構成が実現する3層の音響
一般的なヘッドホンが単一のドライバーで全周波数帯域をカバーするのに対し、Headphone (1) Proは3基の専用ドライバーを低域、中域、高域にそれぞれ割り当てる設計が最大の差別化要因だ。低域を担当するダイナミックドライバーが深みのある重低音を生み出し、プレシジョンダイナミックドライバーがボーカルや楽器の微細な質感を引き立てる。高域はxMEMSドライバーが担当し、繊細な輝きと空気感を加える。
3ウェイ構成そのものは有線のハイエンドイヤホンでは見られるが、ワイヤレスヘッドホンでの採用はまだ珍しい。特にxMEMSはシリコン基盤上のマイクロメカニカルスピーカー技術であり、従来のバランスドアーマチュアとも異なるアプローチだ。Nothingはこの3ウェイ構成により「より深い低音、より豊かなボーカルテクスチャー、より高い楽器の再現性」を実現したと説明する。両イヤーカップにはPanda Glass 9Hを採用しており、内部のドライバーアーキテクチャを外側から視認できるデザインもNothingらしさを象徴している。
Metropolis Studiosがもたらした2つのプロ機能
音質チューニングは世界的に名高いMetropolis Studiosとの協業により行われた。このスタジオは数多くの名盤を手がけてきたロンドン屈指のレコーディング施設であり、ヘッドホンの音質監修にこれが関与した点は、製品のプロフェッショナル志向を如実に物語っている。
協業から生まれた機能は2つある。1つ目は専用のFlat EQスイッチ。フラットな周波数特性をワンタッチで呼び出せ、イコライザーによる補正が一切加わらないニュートラルなサウンドプロファイルを提供する。2つ目は「Studio B」と命名されたダイナミック空間オーディオモードだ。ミキシングルームのアコースティックキャラクターを再現し、英国音楽にインスパイアされた5種類のEQプリセットを内蔵する。プロデューサーやクリエイターが求める再現性の高いリスニング環境を、ヘッドホン単体で実現する試みと言える。
46dBのANCと10マイクの制御力
ノイズキャンセリング性能はNothing製品として過去最高となる最大46dB。10基のマイクを搭載したハイブリッドANCシステムが、環境ノイズを高精度で検知し強力に打ち消す。この数値はソニーのWH-1000XシリーズやAppleのAirPods Maxなど、業界トップクラスの製品に迫るものであり、NothingのANC技術が大きく進化したことを示している。特に強い風下や交通騒音が多い環境での性能が大幅に改善された。
イヤーパッドも完全に設計を見直した。内部に8mmのシリコンデフレクターを内蔵し、クッション材による物理的な遮音と組み合わせることで、ANCの効果を最大限に引き出す構造。見た目の透明感だけでなく、機能面でも細部にまでこだわりが及んでいる。
ハイレゾ、空間オーディオ、アプリによるカスタマイズ
Headphone (1) Proは、ワイヤレス接続とUSB-C有線接続の両方で最大24bit/192kHzのハイレゾ・ロスレス再生に対応する。また、ヘッドトラッキングに対応した5種類のダイナミック空間オーディオモードを搭載し、コンテンツに応じて没入感を段階的に調整できる。
専用アプリ「Nothing X」では、周波数帯域をグラフィカルに操作する高度なイコライザー機能を提供する。特筆すべきは、メインドライバーとプレシジョンドライバーを独立して制御できる点で、ユーザーの好みに応じて細かな音質調整が可能。簡易EQモードでは低音とボーカルの強弱を直感的に調整でき、Personal SoundプロファイルやカスタムEQの保存にも対応する。
チタン採用と327gへの軽量化
Nothingのトレードマークである透明感を継承しつつ、素材にはアルミニウムとチタンを採用。アーム部を従来のスチールからチタンに変更したことで、本体重量は327gに抑えられた。ヘッドバンドは幅が拡大されパッドの厚みも増しており、スタジオワークからフライト中の使用まで、長時間の装着でも快適さを保つ設計だ。
バッテリー持続時間はANCオフ時で最大68時間。急速充電に対応し、IP52の耐性認証も取得している。カラー展開はホワイトとブラックの2色。
メキシコで販売中、今後の展開に注目
メキシコにおける販売価格は7,999ペソ。nothing.tech公式ストア、Amazon、その他販売パートナーで購入できる。現時点での販売地域はメキシコに限定されているが、Nothingは過去の製品展開を見ても、ラテンアメリカ市場での投入後に段階的に他地域へ拡大する傾向がある。日本を含むアジア市場や北米、欧州での販売がいつ開始されるのか、今後のアナウンスが待たれる。
Nothingはこれまで、スマートフォン「Phone」シリーズやワイヤレスイヤホン「Ear」シリーズで独自のポジションを築いてきた。Headphone (1) Proは、プロフェッショナルオーディオ市場への本格参入を象徴する製品であり、3ドライバー構成やMetropolis Studiosとの協業に代表される設計思想は、音楽制作から日常のリスニングに至るまで幅広いユーザー層にアピールする可能性を持つ。今後のグローバル展開と市場での評価が、同社の次の一手を占う試金石となるだろう。