プラグマタ・ディアナ、ボブカット案検討がCEDECで判明

カプコンがCEDECで『プラグマタ』主人公ディアナのボブカット案検討とフェイシャルアニメーション技術の詳細を公開しました。

投稿者 central
CEDECで明かされた『プラグマタ』ディアナのボブカット案検討とフェイシャルアニメーションの制作秘話。
ハイライト
  • 開発初期段階でディアナの髪型にボブカット案が検討されていたことがCEDECで明らかになった。
  • フェイシャルアニメーションでは「常に可愛いキャラクター」にしない方針で表情表現が追求された。
  • ストランドヘアは「沼注意の新技術」とされ、導入前にプロジェクト全体での価値判断が推奨された。

ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」の2日目、カプコンによる『プラグマタ』の開発事例セッションで、主人公ディアナの髪型について、開発初期段階で「ボブカット案」が真剣に検討されていたことが明らかになった。本セッションは、同作のヒロインであるディアナの魅力を支えるフェイシャルアニメーションとストランドヘア技術の全貌を公開する内容で、開発チームが直面した技術的課題とその解決策が詳細に語られた。

「生き生きとした実在感」を追求したフェイシャルアニメーション

リードフェイシャルアニメーターの小原芹菜氏は、ディアナの表情表現において「常に可愛いキャラクター」にしないことを基本方針に据えたと説明する。単調な表情ではプレーヤーの感情移入を阻害するため、「ディアナ(子ども)らしくて可愛い」という微妙なラインを追求。困り眉や唇を噛む仕草といった記号的な表現に頼らず、その瞬間にディアナが何を感じているのかを一つひとつ意識したアニメーション制作が行われた。

本作では、ボイスアフレコ時に俳優の頭部に専用カメラを装着し、声と表情を同時収録。その後、分析ソフトウェア「Faceware」でアニメーションデータ化する手法が採用されている。しかし、この生データには口元の微小な動きのノイズが含まれており、フェイシャルアニメーターが手作業で調整を加える工程が必須となる。ディアナの場合は、子どもらしいハキハキとした印象を与えるため、口元と表情のバランス、自然な目線の動きに特に注意が払われた。セッションでは、調整前後の比較動画も公開され、その緻密な作業の一端が示された。

最終調整は3DCGソフトウェア「Maya」とゲームエンジン「RE ENGINE」で行われるが、実制作ではディアナが老け込んで見えたり、いわゆる「死んだ目」になってしまうケースも発生。試行錯誤を繰り返しながら、狙い通りの表情に仕上げていったという。小原氏は「フェイシャルアニメーションは単なる表情の再現ではなく、キャラクターの性格や感情をプレーヤーに届けるための重要な要素」とし、今後も技術とアートの両面から表現力向上に挑む姿勢を示した。

43万ポイントのストランドヘア、その裏で検討された「ボブカット案」

続いて登壇したリードキャラクターアーティストの入江健二氏は、ディアナのヘア表現について解説。『プラグマタ』では、髪の毛を1本単位でレンダリングする「ストランドヘア」技術が採用された。従来の「ヘアカード(ジョイント数:22カ所)」とは次元の異なる、なんとポイント数43万カ所による超高精細な表現が、ディアナのトレードマークであるロングヘアのリアルな質感を実現している。

しかし、品質向上の影には、アセット制作コスト、シミュレーションコスト、処理コストという3つの大きな課題が立ちはだかった。アート段階において、各アーティストがこの難易度の高さを認識していたため、ディアナの髪型を「ボブカット」に変更することも、チーム内で真剣に話し合われたという。このエピソードは、最先端技術の導入が時に創造性の制約と隣り合わせであることを如実に物語っている。

最終的に、ディアナのキャラクター性を表現する上でロングヘアは不可欠な要素と判断され、研究開発チームとの連携のもと、制作が継続された。髪の毛の総数は最終的に2万本以下に抑えられ、1本1本をやや太めに調整するなど、スタイリング面での工夫を凝らすことで、人間の髪(約10万本)に近い視覚的印象を獲得している。

「沼注意」の新技術、導入にはプロジェクト全体の判断を

入江氏はストランドヘアについて、「キャラクターの魅力をブーストさせる沼注意の新技術」と表現。従来を超えるヘア表現を可能にする一方、様々な課題が発生するため、導入を検討する際は「最初にプロジェクト全体でやる価値があるかどうか、見極めることを強くおすすめする」と警鐘を鳴らした。このコメントには、技術への熱意と同時に、現場の責任者としての冷静な視点がにじむ。

フェイシャルアニメーションとストランドヘア、この二つの要素に対するチーム全体の努力が、ディアナを「より魅力的なキャラクター」へと昇華させたことは間違いない。CEDECならではの、制作現場の葛藤と突破口が凝縮されたセッションとなった。

セッションの詳細はオンラインパスでタイムシフト視聴可能

本稿で紹介した内容以外にも、本セッションではフェイシャルアニメーションの詳細な制作工程や、ストランドヘアのモデリングデモ映像など、貴重な資料が多数公開された。見逃した方も、オンラインパスを購入することで、8月4日10時までタイムシフト視聴が可能だ。技術面からゲームキャラクターの魅力を再発見したい方にとって、またとない機会となるだろう。

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