韓国政府は、新潟県佐渡市の世界文化遺産「佐渡島の金山」で今週土曜日に予定されている追悼式に、政府関係者を派遣しない方針を固めました。韓国政府筋への取材で明らかになったもので、同追悼式を欠席するのは3年連続となります。
追悼式は、閉山した金山で働いた労働者を追悼する目的で開催されています。韓国政府は日本側と真剣な協議を重ねたものの、主要な争点で合意に達することはできませんでした。両国間では、朝鮮半島出身の労働者が強制労働に従事させられたかどうかをめぐって、現在も隔たりが残っているとみられます。
今年も韓国政府は、日本側の追悼式とは別に、独自の追悼式を開催する予定です。
世界遺産登録の「約束」と今回の欠席
佐渡島の金山は2024年、ユネスコの世界文化遺産リストに登録されました。登録をめぐっては、韓国側が「強制労働の現場だった」と主張し、これに対して日本側が「鉱山で働いたすべての労働者を追悼する式典を毎年開催する」ことを約束することで、韓国の同意を取り付けるという経緯がありました。
韓国側が不満を抱えているのは、式典の開催そのものではなく、その運用のあり方です。追悼の対象や歴史の捉え方を含めた日本側の姿勢が問われていると解釈できます。
韓国側の根底にあるのは、式典の開催実績以上に、朝鮮半島出身の労働者が強制労働の被害者だったという歴史認識が、日本の公的な対応の中に明確に位置づけられるかどうかという問題です。この点が共有されなければ、式典への出席は困難だというのが韓国側の論理とみられます。
強制労働の認定が対立の核心にある
両国の隔たりの核心にあるのは、朝鮮半島出身労働者の「強制」をどう位置づけるかという問題です。韓国政府は、佐渡金山の歴史について、朝鮮半島出身者が過酷な環境の下で働かされたという認識を維持しており、日本の展示や式典の内容がこの認識を十分に反映していないと判断しています。
この問題は、日韓の二国間関係にとどまらず、世界遺産という国際的な枠組みの中で歴史認識の違いが浮き彫りになる構造を持ちます。登録後の運用もまた、国際社会の視線にさらされています。
ユネスコ決議と「誠実な履行」の要求
今年7月、ユネスコ世界遺産委員会は、佐渡島の金山の展示を改善し、島の鉱業史を包括的に示すよう求める決議を採択しました。韓国政府筋は、日本側に対し、この決議を「完全かつ誠実に」履行するよう求めています。
「誠実な履行」という表現には、日本のこれまでの対応に対する韓国側の強い注文が込められているとみられます。決議が求める展示の改善が実際に伴うのかどうかが、今後の日韓協議の焦点となります。
韓国はなぜ佐渡金山の追悼式に参加しないのか
韓国が佐渡金山の追悼式に参加しないのは、強制労働をめぐる歴史認識の隔たりが解消されていないためです。2024年の世界遺産登録時に日本が「毎年開催」を約束した追悼式ですが、韓国側はその運用や展示内容に不満を示し、今回で3年連続の欠席となります。
追悼式をめぐる日韓協議の行方
今回の欠席決定は、文化遺産分野で続いてきた日韓の協力関係に影を落とします。一方で、韓国政府が日本側との協議の枠組みを維持してきたこともまた事実です。合意に至らなかったことが、交渉そのものの放棄を意味しない点は重要です。
佐渡島の金山をめぐる問題は、今後もユネスコの場で国際的な議論の対象となり得ます。登録時に交わされた約束が誠実に実行されているかどうかは、世界遺産としての信頼性にも関わる問題です。
その意味で、日本に問われているのは、式典という形式ではなく、歴史とどう向き合うかという継続的な姿勢です。両政府が来年以降、追悼式をめぐって再び合意を築けるかどうかが、日韓関係の試金石の一つになりそうです。