米Palantir Technologiesのアレックス・カープCEOが、米CNBCのインタビュー(7月1日公開)で、OpenAIやAnthropicといった最先端AI企業のビジネスモデルを痛烈に批判した。「なぜ顧客が、自らの競争優位性(アルファ)を構築するために、データへのアクセス権を相手に渡さなければならないのか」——カープ氏はこう問いかけ、企業顧客の代弁者としての立場を鮮明にした。この発言は、AI業界における「データとモデルの所有権」を巡る議論に新たな火種を投じている。
カープCEOが語る「モデルは無責任に過大評価」
「ダリオ(Anthropic CEO)とプライベートで議論するほど楽しいことはない。彼らを中傷するつもりはない」と前置きしつつ、カープ氏は現在のAI製品の販売手法について「何かが完全に間違った方向へ進んだ」と切り出した。同氏によれば、米国企業の基本認識として、「トークンに時間を浪費して何の価値も得られず、知的財産(IP)だけを奪われる」という不満が広がっている。司会者が「それは中傷に聞こえる」とただすと、カープ氏は「いや、これはリポート(報告)だ」と反論。「企業トップは公の場では発言を控えるが、プライベートでは激怒している」と述べ、その原因を「モデルが完全かつ無責任に過大評価されて売られてきたからだ」と断じた。
さらに、トークン課金(利用量に応じた従量課金)の構造そのものに疑問を投げかけた。「それほど価値があるなら、なぜトークン単位で課金するのか。明日10億ドルを稼がせられるなら『稼がせる分の30%が欲しい』と言うはずだ」——つまり、成果に連動しない一律の課金体系こそが、AIの真の価値を証明できていない証左だと主張する。
安全保障についても警鐘を鳴らした。「(シリコンバレーの企業によってウェイトが調整されたモデルを国防に利用することで)この国の戦場をシリコンバレーのコンセンサス(合意形成)にアウトソーシングするのは狂気だ」——軍事判断の根幹を、特定地域の価値観に委ねることの危険性を鋭く指摘した。
NVIDIA提携が示す「生産手段」の奪還
こうした業界の課題に対してPalantirが6月29日に打ち出したのが、NVIDIAとの戦略的提携である。両社は、NVIDIAのオープンモデル「NVIDIA Nemotron」をベースに、米政府機関向けに「フロンティア級」のカスタムモデルを構築する。最大の特徴は、モデルを外部ネットワークから完全に遮断した「エアギャップ」環境で稼働させる点だ。これにより、政府機関や重要インフラ事業者は、自前のインフラで自らのデータを学習させ、ウェイト(重み)を含むモデルの完全な所有権を保持できるという。
カープ氏は、PalantirとNVIDIAの方向性が一致した点を、「顧客自身がコンピューティング、モデル、データスタック、アルファへのコントロールを保持すること」だと説明。「オープンモデルを最先端モデルと同水準まで引き上げることは可能だ。しかもウェイトは顧客がコントロールする」とし、強調した。「顧客は『生産手段』を自分たちが所有していると確信したいのだ」——この言葉に、同社の戦略の本質が凝縮されている。
問われるAI業界の「所有権」モデル
現在のAI業界では、OpenAIやAnthropicのようなクローズドなAPI型モデルが主流だ。ユーザーはモデルにデータを送り、結果を受け取るが、モデルそのものや学習に使われたデータの管理権限は持てない。特に企業顧客にとって、自社の機密データがモデル学習に利用されるリスクや、特定ベンダーへのロックインは深刻な問題である。カープ氏の批判は、こうした構造的な不満を代弁したものと言える。
一方で、オープンモデルを採用した場合、モデルのカスタマイズ性やデータ主権は確保できるが、クローズドモデルに匹敵する性能を引き出すには高度な技術力とインフラ投資が必要となる。PalantirとNVIDIAの提携は、この「性能と主権のトレードオフ」を解消する試みとして注目される。
カープ氏は、この提携を「顧客が『生産手段』を取り戻す」ための第一歩と位置づけている。AIがビジネスの中核に据えられる時代において、データとモデルの所有権を誰が握るのか——この問いは、今後のAI産業の勢力図を大きく変える可能性を秘めている。