クレイジータクシー開発者が語る、加点法で笑いながら走る新作の魅力

加点法で笑いながら走る『クレイジータクシー:ワールドツアー』の開発者インタビュー後編。自由なプレイスタイルと楽曲先行の開発哲学に迫る。

投稿者 central
クレイジータクシー開発者
ハイライト
  • 菅野顕二氏が減点法を排除し、加点法を軸にした設計で多様なプレイスタイルを認めている。
  • 楽曲を先に決め、それに合わせてゲームを組み立てる独自の開発手法が明かされた。
  • 菅野氏は「自分たちも楽しんで作らないと意味がない」という信念で開発を続けている。

約四半世紀ぶりの完全新作『クレイジータクシー:ワールドツアー』が2027年に発売される。本稿は、クリエイティブプロデューサーの菅野顕二氏とディレクターの百渓曜氏へのインタビュー後編。加点法を軸にしたゲームデザイン、楽曲へのこだわり、マルチプレイの実装背景、そして「笑いながら走る」というシリーズの根源的魅力について、両氏が詳細に語った内容をお届けする。

加点法が生む自由なプレイスタイル――減点を排除した設計思想

菅野氏が開発チームに強く求めたのが「加点法」の採用だ。「減点法は取らないでほしい。いいことをしたらプラスの効果を得られる設計にしてくれ」と指示したという。その背景には、プレイヤーごとに異なるスタイルをすべて正解にしたいという思いがある。華麗なテクニックで乗客を運ぶプレイヤーもいれば、壁にぶつかりながらもスピード優先で目的地を目指すプレイヤーもいる。どちらも等しく称賛されるべきであり、「限定的なプレイスタイルでしかゴールにたどり着けない仕様には絶対にしたくなかった」と菅野氏は強調する。

百渓氏もこの哲学に共鳴し、ワールドツアーモードではさまざまなミッションを通じて多様な遊び方を用意した。例えば乗客を遠くへ飛ばすチャレンジでは、成功すれば数百メートルも吹き飛ばすクレイジーな体験が可能だ。「『クレイジータクシー』はドライブゲームというよりアクションゲームに近い。クレイジーダッシュやドリフトといったコマンド操作と、街中の一般車両や歩行者を巻き込むダイナミックな走行が、他タイトルでは味わえない独自性を生んでいる」と百渓氏は説明する。

楽曲がゲームを形作る――曲先行で生まれるグルーヴ感

シリーズの根幹を成すのが楽曲の存在だ。菅野氏は「アクションゲームを作るときは曲を先に決め、それに合わせてゲームを組み立てる」という独自の手法を明かす。リズムに乗ったプレイが爽快感を最大化するため、グルーヴ感を指針として示すために楽曲を先行選定するという。過去作でThe Offspringの「All I Want」やBad Religionの「Ten In 2010」が起用されたのも、このスタイルの賜物だ。

新作でもその伝統は継承されている。アナウンストレーラーで再び「All I Want」が使われたことに対し、世界中のファンから好評を得たという。「もし過去曲が一切使われなければ、多くの人に怒られたかもしれない」と菅野氏は笑う。百渓氏も「開発チーム全員が、楽曲とゲームプレイの密接な結びつきを認識している。新作を進める中でその重要性を改めて痛感した」と語る。

マルチプレイが実現した理由――技術進化と非対称ルール

過去作では技術的制約から実現できなかったマルチプレイが、新作で初めて搭載される。菅野氏は「満を持して『クレイジータクシー』がマルチプレイに対応できるようになった」と胸を張る。百渓氏は『ボーダーブレイク』シリーズで培った知見を活かし、二つのゲームルールを設計した。

一つ目は全員がタクシードライバーとして乗客を運び合う競争。二つ目はタクシー陣営4人vs警察陣営2人の非対称型ケイドロ形式で、警察はタクシーの乗客乗せを妨害し、逮捕されたタクシーは味方の救出を必要とする。百渓氏は「マルチプレイでは勝ったときのプラス感情が負けたときのマイナスを上回るバランスが重要。不快感を完全に排除するのではなく、勝ったときの気持ちよさを最大化することで爽快感を生む」とデザイン哲学を語る。

マップ制作の妙――「自由に感じさせる不自由さ」と密度

菅野氏がマップ制作で掲げる概念が「自由に感じさせる不自由さ」だ。自由度が高すぎるとプレイヤーは逆に迷う。一定の制限があるからこそ、人は自由を感じられるという。具体例として「ジュースが100種類あるより5種類のほうが選びやすい」と説明し、そのバランスを意識しながらマップを設計している。

百渓氏は密度の高さをアピールする。各マップはオープンワールドと比較して圧倒的に濃密で、大通りから狭い路地まで多彩な走行ルートが用意されている。リアルな街並みをベースにしつつも、忠実な再現ではなく「雰囲気」を重視。サンフランシスコや東京(SHIBUYA109やセガのゲームセンターが登場)など、各都市の特徴をゲーム的なアレンジで落とし込んだ。海外での試遊でも「それだよ」と評価を得ているという。

ストーリーモードがもたらすキャラクター深化

過去作では断片的な情報からプレイヤーがキャラクター像を想像するしかなかったが、新作ではワールドツアーモードを通じて世界観や人物描写を一段深く掘り下げる。菅野氏は「『クレイジータクシー』というIPをもっと深く楽しんでほしい。ストーリーを進めることでキャラクターのことを知れる設計にした」と語る。ストーリーモードの搭載は開発当初からの決定事項であり、マルチプレイ対応や新操作性と並ぶ三本柱の一つと位置づけられている。

開発プロセスでは、菅野氏のアイデアが百渓氏に「ボツ」にされることも珍しくなかったという。「初代から関わっている自分でもよくあること」と菅野氏は笑い、百渓氏は「セガの社内には『クレイジータクシーはこうあるべき』という強い意見を持つ人が多く、その違いが面白い。学びになることも多い」と述べる。

開発者自身が楽しむことの重要性

最後に菅野氏は「人を楽しませるコンテンツを作るなら、自分たちも楽しんで作らないと意味がない」という上司の言葉を引用。自身が楽しみながらゲームを作り続けてきたと明かす。百渓氏も「セガには遊びながらゲームを作る感覚を持つスタッフが多い。苦しいときもあるが、それでも楽しんでいる人が多い会社だ」と応じる。

読者へのメッセージとして、菅野氏は「旧作ファンにはお待たせしました。新作は期待に応えられる内容です。初めて触れる方には、騙されたと思ってプレイしてほしい。気持ちよくなれます」と約束。百渓氏も「変わっている部分もあるが、それも含めて必ず楽しめる『クレイジータクシー』になっている。サプライズも含めてお楽しみに」と語った。

『クレイジータクシー:ワールドツアー』はPS5、Xbox Series X|S、Nintendo Switch 2、PC(Steam/Microsoft Store)向けに2027年発売予定。本インタビュー前編では、シリーズ復活の経緯や開発チームの特徴を詳報している。先行プレイの感想記事も併せて確認されたい。

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