ビットコイン(BTC)は11日正午時点で1190万円前後に下落し、心理的な節目である1200万円を割り込んだ。週明けから上値の重い展開が続いており、週初の1250万円台から約60万円の下落を記録している。背景には、予想を上回る米国の生産者物価指数(PPI)の発表や、日銀の追加利上げ観測に伴うドル円相場の急変動がある。今週後半に迫る米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果と、原油価格の上昇が市場の新たな焦点として浮上しており、ビットコイン相場は短期的な方向感を模索する展開が続いている。
米PPI上振れと雇用統計の余波が重なる展開
先週発表された米国の雇用統計が市場予想を上回る強い結果となったことに加え、週明けに公表されたPPIもまた上振れとなった。これにより、インフレの粘着性が改めて意識され、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が後退。リスク資産全般に売り圧力がかかる流れが生じている。ビットコインもその例に漏れず、特に円建てでの取引が主体となる国内市場では、米金利動向に連動したドル円相場の変動が更なる下落要因として作用している。
具体的には、日銀の金融政策正常化への期待が高まるなかで、円高が進行。ドル円相場は1ドル=149円台まで円高方向に振れ、BTC/JPYのペアに対して直接的な下押し圧力を加えた。ビットコインそのもののドル建て価格がほぼ横ばいで推移したとしても、円高が進めば円建ての価格は目減りする構造にある。
日銀利上げ観測とドル円下落が生んだ円建てビットコインの弱地合い
日銀が早期の追加利上げに踏み切るとの観測は、週を通じて為替市場での円買いを誘発した。特に、今週に入ってから複数の日銀関係者からタカ派的な発言が相次いだとされ、金融市場では年内のさらなる利上げを織り込む動きが加速している。これにより米国との金利差が縮小するとの思惑から、ドル円は下落。週央には149円台を試す展開となり、円建てビットコインの需給構造を大きく変化させた。
bitbankのアナリストである長谷川友哉氏のレポートによれば、この円高進行が「BTC/JPYの上値を強く抑制している」との見方が示されている。実際、ドル建てのビットコイン価格が大きな変動を見せていないにもかかわらず、国内取引所の板は売りが厚く、買い戻しのタイミングを計る投資家の姿勢もうかがえる。
週末に向けた注目材料:FOMCと原油高
市場参加者の関心は、今週開催されるFOMCの結果と、パウエルFRB議長の記者会見での発言内容に集中している。今回のFOMCでは政策金利の据え置きがコンセンサスとなっているが、最新の経済見通し(SEP)やドット・チャートの改定が注目される。利下げ開始時期や年内の利下げ回数に関する示唆が、リスクトレードの方向性を左右する可能性が高い。
また、これに加えて原油価格の上昇が新たなリスク要因として浮上している。OPECプラスの減産延長や地政学的リスクの高まりを受け、WTI原油先物は直近で節目を突破。エネルギー価格の高騰はインフレ見通しの上振れリスクを高め、FRBの金融政策運営をより慎重なものにすると予想される。結果として、ビットコインを含むリスク資産にとっては逆風となる可能性がある。
今後の展望:1200万円回復には複数の条件が必要
ビットコイン相場が再び1200万円台を回復するためには、複数の条件が満たされる必要がある。第一に、FOMCにおいてハト派的なメッセージが確認されること。第二に、原油価格の上昇が一服し、インフレ懸念が後退すること。第三に、ドル円相場が安定ないしは円安方向へと転換することだ。
特にFOMCにおいて、FRBが利下げに対して慎重ながらも前向きな姿勢を示せば、ドル建てのビットコイン価格が再び上昇に転じるきっかけとなり得る。しかし、足元のインフレ指標が強い動きを見せている以上、現時点では楽観的な見方は困難である。現在のビットコイン価格は、投資家がイベントリスクを回避するためにポジションを圧縮している段階と捉えるのが妥当だろう。
こうした状況下では、方向感がはっきりするまでは短期的な値幅取りに徹するか、あるいは月末にかけての押し目買い戦略を検討する投資家も増えるとみられる。筆者としては、FOMC通過後のボラティリティ拡大に備え、ポジションサイズの調整とリスク管理の徹底を改めて推奨したい。ビットコイン市場は依然として強いファンダメンタルズを有しているが、マクロ経済環境の不透明感が短期トレンドを決定づけるフェーズにある。