米ナスダック上場のビットマイン・イマージョン・テクノロジーズ(BMNR)は、イーサリアム(ETH)の保有量が598万3,940ETHに達したと発表した。これはイーサリアムの総供給量(約1億2,210万ETH)の4.9%に相当する規模であり、同社が「5%の錬金術(Alchemy of 5%)」と称する戦略目標の達成率は、約15カ月で98%にまで到達した。
ビットマインのETH保有量598万ETH——5%目標に迫る背景
ビットマインは暗号資産(仮想通貨)マイニング事業を主力とする企業だが、近年はビットコイン(BTC)に加えてイーサリアムの大量保有戦略を鮮明にしている。今回の発表は2025年10月20日(米東部時間)時点のもので、前回の報告からも着実に買い増しを続けている実態が明らかになった。
目標とする「5%の錬金術」は、イーサリアムの総供給量の5%を長期保有することで、資産価値の上昇とエコシステムへの影響力を獲得しようという戦略だ。現在の保有比率4.9%は、この目標に対してわずか0.1%差に迫っている。残りの必要量は約6万ETHであり、今後の買い増しペース次第では年内にも達成する可能性がある。
なぜ「5%」なのか——需給構造への影響
イーサリアムは2022年9月の「The Merge」によってプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行しており、新規発行量が大幅に抑制されている。さらに、トランザクション手数料の一部が焼却(バーン)される仕組み(EIP-1559)により、状況によっては供給量が減少するデフレ局面も発生する。
こうした環境下で、特定の事業者が総供給量の5%を保有することは、市場の流動性に影響を与えるだけでなく、イーサリアムの価格形成にも一定の影響力を持ちうる。ビットマインの大量保有は、単なる投資ではなく、イーサリアムネットワークそのものに対するコミットメントの表明とも受け止められている。
トム・リー氏も注目——イーサリアム市場の見通し
ファンダストラットの創業者であり、著名な暗号資産アナリストであるトム・リー氏は、ビットマインの動きとイーサリアムの今後の上昇に期待感を示している。同氏はこれまでもビットコインやイーサリアムに対し強気の見解を一貫して示してきたが、機関投資家レベルの大口保有が増加している点を評価している。
イーサリアムの価格は2025年に入り、現物ETFの承認期待やDeFi・NFTセクターの回復などを背景に堅調に推移している。ビットマインのような上場企業が継続的に買い増しを行っている事実は、個人投資家にとっても一つのシグナルとして機能している。
継続的な買い増し——その戦略的意図
ビットマインは2024年半ばからイーサリアムの大量取得を本格化させてきた。当時は価格がやや低迷していた時期であり、同社は割安感のあるタイミングでポジションを積み上げたとみられる。約15カ月で総供給量の4.9%という驚異的なペースでの蓄積は、計画的な買い付けと資金調達力の高さを示している。
同社のビジネスモデルは、マイニングによる収益に加え、保有する暗号資産の値上がり益を活用するハイブリッド型だ。イーサリアムのステーキングによる報酬も得られるため、保有コストをある程度相殺しながら長期的な資産価値の増大を目指していると考えられる。
イーサリアムの供給量4.9%——市場への具体的なインパクト
イーサリアムの総供給量1億2,210万ETHのうち、ビットマインが保有する598万ETHは、時価で約200億ドル(約3兆円)規模に相当する(執筆時点のレートによる)。この規模のポジションが売りに回ることは短期的には考えにくく、むしろ長期的な「ホールド」戦略が市場に安心感を与えている面もある。
ただし、特定の事業者への需給集中は、価格操作の懸念を招く可能性も否定できない。ビットマインが目標とする5%という閾値は、同社が「エコシステムの重要なステークホルダー」としての立場を確立するためのラインであり、今後の動向は業界全体から注目されている。
ナスダック上場企業という信頼性
ビットマインはナスダックに上場しており、四半期ごとの開示義務や監査を受ける立場にある。この点は、匿名性の高い大口保有者(いわゆる「クジラ」)とは異なり、透明性が確保されているという強みがある。機関投資家や一般投資家にとっては、同社のETH保有量を正確に把握できるため、市場の不確実性を低減する要素として機能している。
今後の焦点——5%達成後の戦略
ビットマインが5%目標を達成した後、どのような戦略を取るのかが次の注目点となる。考えられる選択肢としては、目標達成後の買い増しを継続する「上方修正」、あるいは5%を維持しながらステーキング報酬で収益を安定化させる「現状維持」の2つが有力だ。
また、同社のビットコイン保有戦略との比較も興味深い。ビットマインはビットコインにも積極的に投資しており、両資産のバランスをどのように調整していくのかが、今後の企業価値を左右する要素となる。
イーサリアムのエコシステムは、レイヤー2ソリューションの拡大や現実資産(RWA)のトークン化など、応用範囲を広げている。ビットマインのような大口保有者がネットワークガバナンスにどの程度関与するのかも、今後の注目トピックだ。
業界全体から見たビットマインの動き
暗号資産市場では、上場企業によるバランスシートへのデジタル資産組み入れが世界的なトレンドとなっている。米国のマイクロストラテジーがビットコインの大量保有で知られるのに対し、ビットマインはイーサリアムに特化した戦略で差別化を図っている。
日本国内の暗号資産関連企業の動きと比較しても、ビットマインの規模感は突出している。国内の暗号資産交換業者やマイニング企業がここまでの規模でETHを保有している事例はなく、海外企業の積極的な姿勢が改めて浮き彫りとなった。
ビットマインの「5%の錬金術」が現実のものとなれば、他の上場企業や機関投資家が追随する可能性もある。イーサリアムの需給構造がさらに逼迫すれば、価格に対して構造的なサポートとなるシナリオも考えられる。