金融市場は週末にかけて、債券の急落が世界を揺るがす展開となりました。米10年債利回りが一時5.23%を記録し、2007年以来の高水準に達したほか、30年債も5.53%前後に上昇。債券のボラティリティを示すMOVE指数は週間で約30%上昇し、2025年4月以来の大きな振れを記録しました。こうした金利上昇の逆風のなかで、株式市場はAI関連株の強さを支えに相対的に底堅く推移。日経平均は一時6万6000円台を回復する場面も見られました。以下では、直近3営業日の市場動向を、債券急落の背景、半導体需給の逼迫、そして米中会談の3つの観点から整理します。
| 主要指標 | 水準 | 内容 |
|---|---|---|
| 米10年債利回り | 一時5.23%前後 | 2007年以来の高水準、週半ばに20bp超急騰 |
| 米30年債利回り | 5.53%前後 | 2004年以来、超長期ゾーンの売り圧力顕著 |
| 日本10年国債利回り | 3.1%超 | 30年ぶりの高水準、国内金利に波及 |
| MOVE指数 | 週間約+30% | 2025年4月以来の大きな振れ、債券市場の不安定さ示唆 |
| 日経平均 | 6万6000円台 | 24日に一時1200円超高、25日も続伸し大台回復 |
| ドル円 | 157〜159円 | 一時159円近辺まで円安進んだ後、157円台へ戻す場面も |
| ブレント原油 | 一時106ドル超 | 中東情勢背景に高止まり、25日は協議進展期待で反落 |
| 米9月フラッシュPMI | 総合58.4 | 5年ぶりの高水準、投入価格の上昇も確認 |
債券利回り急騰の背景──強い景気指標と原油高が重なる
利回り急騰の直接的な要因は、インフレ再燃への警戒です。米国の9月フラッシュPMIが総合58.4と5年ぶりの高水準を記録し、投入価格も上昇しました。加えて、中東情勢を背景にブレント原油が一時106ドルを超えて高止まりしたことも、物価見通しを押し上げています。FRB当局者からは追加利上げに前向きな発言が相次ぎ、10月会合での利上げ確率は66〜70%程度まで上昇しました。米新規失業保険申請件数が約57年ぶりの低水準となったことも、労働市場の底堅さを裏付けました。
この動きは米国にとどまらず、日本でも10年国債利回りが30年ぶりとなる3.1%超を記録。ドイツやフランスの国債も2007〜08年以来の高水準となりました。為替市場ではドルが2カ月ぶりの高値圏となり、ドル円は一時159円近辺まで円安が進んだ後、157円台へ戻す場面も見られています。金利上昇が株式市場に与える影響は限定的で、むしろAI関連株への資金流入が続いている点が注目されます。
半導体・AIチップ需給逼迫──HBMの85%確保済み、TSMCは値上げへ
債券市場の混乱をよそに、半導体セクターでは需給逼迫を示すニュースが相次ぎました。NVIDIAはAIコンピューティング需要が加速しているとの認識を示し、大手テック企業が2027年までの世界HBM供給の約85%をすでに確保したとの報道も出ています。メモリー各社の業績見通しも強気で、サムスン電子とSKハイニックスは過去最高益を見込み、自社株買いを前倒しする動きを見せました。AMDの時価総額が一時1兆ドルを超える場面もありました。
供給側では価格転嫁の動きが表面化しています。TSMCは2027年1月からウエハー価格を3〜6%引き上げる方針と報じられ、先端ノードを中心に成熟ノードも対象になるとされています。同社は需要見通しを2030年まで延長し、2nm/3nmの逼迫が続くとの見方を示しました。中国勢ではCXMTが第5世代DRAMの量産を開始し、国産化の加速も確認されています。日本市場では、こうしたAI・半導体関連株の上昇がアドバンテストや東京エレクトロン、イビデンなどを通じて日経平均を押し上げる要因となりました。
米中会談と今後の焦点──貿易休戦延長も半導体規制は据え置き
9月23日から25日にかけて、トランプ大統領と習近平国家主席のワシントン会談が行われました。貿易休戦を2カ月延長し、非センシティブ品目で各300億ドル規模の関税優遇を協議することで合意しています。AIに関する対話チャネルの設置も決まりました。もっとも、半導体輸出規制やレアアース、台湾問題では目立った進展がなく、市場が注目していた規制緩和は議題になりにくい状況です。結果として、中国側の国産化加速が続く構図が改めて確認された形です。次回の会談は11月の深圳APEC、12月のマイアミG20が予定されています。
当面の焦点は4つに整理できます。10月のFOMCで実際に利上げが決定されるか、米・イラン情勢が原油価格をどちらに動かすか、TSMCの値上げが正式にどの水準で発表されるか、そして11月の米中再会談で半導体が議題に上がるかです。金利上昇がAIインフラ投資の資金調達コストにどう影響するかも、今後の論点になりそうです。