テザー、最大30億ドル調達へ英ファサナーラと融資ファンド設立

テザーとファサナーラが共同で設立した私募信用ファンドは、最大30億ドルを調達し、中小企業向け融資を提供する。

投稿者 central
ハイライト
  • テザーはファサナーラ・キャピタルと共同で、最大30億ドルを調達する私募信用ファンドを設立した。
  • このファンドは、中小企業やフィンテック企業の資金調達ギャップ約5.7兆ドルをターゲットにしている。
  • テザーはUSDTの準備資産を活用し、ステーブルコイン建て融資で新たな収益源を確保する。

暗号資産(仮想通貨)市場で最大のステーブルコイン「USDT」を発行するテザー(Tether)は9日、英国の資産運用会社ファサナーラ・キャピタル(Fasanara Capital)と共同で、企業向け融資を専門に扱う私募信用ファンド「StableFund(Tether-Fasanara Lending Fund)」を設立したと正式に発表した。このファンドは、両社が共同出資者としてすでに4億ドルを拠出。第三者の機関投資家から追加で最大30億ドルを調達する常設型(エバーグリーン)ファンドとして運用される。世界で約3兆ドルに達する私募信用市場において、テザーが持つ圧倒的な流動性と決済基盤を武器に、新たな資金供給の仕組みを構築する試みだ。

5.7兆ドルの資金ギャップがターゲット

今回のファンド設立の背景には、世界的な資金調達環境の大きな変化がある。特に、銀行からの融資が受けにくい中小企業やフィンテック企業の間では、約5.7兆ドルに上る深刻な資金ギャップが存在するとされている。従来の銀行融資に代わる資金調達手段として、私募信用市場は急速に拡大しているが、その中でもテザーが目をつけたのは「USDT建ての融資」というニッチでありながら巨大な潜在需要だ。

テザーは発表の中で、「従来の金融システムではアクセスが困難だった企業に対し、ステーブルコインを通じて迅速かつ低コストな資金提供を可能にする」と強調。ファサナーラ・キャピタルも、運用実績とネットワークを活かした案件の発掘と審査を担当することで、両社のリソースを相乗させる構図となっている。

テザーが私募信用ファンドを始動させた理由

テザーがなぜ自ら融資ファンドを組成するのか。その最大の理由は、同社が保有する莫大な準備資産の有効活用にある。テザーはUSDTの発行を支えるため、米国債や社債などを含む巨額の資産を保有している。この資産を直接レンディング(貸付)に回すのではなく、ファンドへの出資という形で運用することで、安定した利息収入を得る新しい収益源を確保できる。

さらに、融資の原資産としてUSDTを提供するだけでなく、決済基盤そのものを担う点がこのファンドの独創的な部分だ。融資の実行から返済、利息の支払いに至るまで、すべての決済をテザーのブロックチェーン基盤上で行う。これにより、銀行を介さないシームレスな資金移動が実現し、為替リスクや送金コストを大幅に削減できる。

ファサナーラ・キャピタルとの協業体制

ファサナーラ・キャピタルは、欧州を拠点とするオルタナティブ運用会社で、テクノロジーと信用市場の融合に強みを持つ。同社はこれまでもフィンテック分野への投資で実績を積んでおり、今回のファンドでは主に案件の発掘、デューデリジェンス、ポートフォリオ運用を担当する。テザーが持つ「信用」とファサナーラが持つ「運用力」を組み合わせることで、単独では実現できない規模のファンド運用が可能になったと言える。

このファンドは、テザーとファサナーラという異なる専門性を持ったプレイヤーが、機関投資家の資金を呼び水にしながら、未開拓の融資市場に挑戦する国際的な協業モデルといえる。

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私募信用市場の現状と成長可能性

私募信用(プライベートクレジット)市場は、近年、伝統的な銀行融資の代替として急成長している分野だ。世界中の年金基金や保険会社などの機関投資家は、低金利環境が長期化する中で、高い利回りを求めてこの市場に資金を振り向けてきた。現在の市場規模は約3兆ドルに達し、今後も拡大が続くと予測されている。

しかし、これまでの私募信用市場の主役は、ブラックストーンやKKRといった大手オルタナティブ運用会社が中心だった。そこに、ステーブルコインの発行元であるテザーが参入することで、市場構造そのものに変化が生まれる可能性がある。特に、融資の決済にブロックチェーンを活用する点は、既存の運用会社にはない強みだ。

安定性への懸念とリスク管理の課題

一方で、テザーがCredit(信用)ファンドを手掛けることに対しては、一部から慎重な見方も出ている。テザーが過去に発行準備金の透明性を巡って批判を受けてきたことを踏まえると、融資事業の拡大は新たなリスク要因を生む可能性がある。

融資ファンドの成否は、デフォルト率(貸し倒れ)の管理にかかっている。仮に景気後退などで貸付先の倒産が増えれば、テザー本体の財務健全性にも影響が及ぶ。テザーはこの点について、「ファンドは独立した法的構造を持ち、厳格なリスク管理の枠組みの下で運用される」と説明。第三者機関による監査も受ける方針で、透明性の確保に努めるとしている。

今後の展望:暗号資産と伝統金融の融合点として

テザーによる今回のファンド設立は、ステーブルコインというデジタル資産が、単なる暗号資産取引の基盤通貨から、実体経済における資金調達手段へとその役割を広げる象徴的な出来事だ。特に、USDT建て融資という形式は、送金の速さやコスト面での優位性があり、新興国を中心に中小企業の資金調達手段として普及する可能性を秘めている。

最大30億ドルという調達目標額は、私募信用市場全体から見ればまだ小規模だが、常設型ファンドであることから、長期的に資産規模を拡大していく余地は大きい。テザーとファサナーラ・キャピタルは、このファンドを皮切りに、ブロックチェーン技術を活用した新しい信用供与の枠組みをさらに拡大する方針だ。暗号資産業界と伝統金融の境界がますます曖昧になる中で、この動きは安定した利回りを求める機関投資家にとっても、新たな投資対象として注目されそうだ。

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