米暗号資産運用会社ビットワイズは9月2日付のリポートで、ビットコイン(BTC)と金の価格相関性が2020年以来、約6年ぶりの高水準まで上昇したとの分析を明らかにした。90日間の相関係数が0.5を超え、両資産の連動性が顕著に強まっているという。同社欧州調査責任者アンドレ・ドラゴッシュ氏は、マクロ経済への懸念が高まる局面で投資家がビットコインと金を区別せずに扱う傾向が強まっており、ビットコインが金の値動きを増幅させるような動きを見せ始めていると指摘している。
金とビットコインの90日相関、0.5超え——約6年ぶりの高水準
ビットワイズの分析によれば、ビットコインと金の90日間の相関係数は0.5を突破。この水準は2020年、すなわち新型コロナウイルスのパンデミック初期において両資産が同様の値動きを見せて以来の高さとなる。0.5という数値は統計的に明確な正の相関を示すものであり、短期間における両資産の価格変動が極めて似通ったパターンを描いていることを意味する。
注目すべきは、この動きと対照的な株式市場との関係性だ。ビットコインと米国株式市場との相関性は約1年ぶりの低水準にまで低下している。これは、ビットコインがリスク資産として株式と同列に扱われるという従来の見方が変わりつつある可能性を示唆する。投資家の間で、ビットコインに対する認識が「ハイリスク・ハイリターンの投機対象」から「金に似た価値保存手段」へとシフトし始めている証左とも解釈できる。
なぜ今、ビットコインと金が連動するのか——マクロ懸念の高まり
ドラゴッシュ氏は、この相関性上昇の背景として、マクロ経済をめぐる不透明感の強まりを挙げる。具体的には、インフレ圧力の持続や主要中央銀行の金融政策の行方、地政学的リスクの顕在化など、従来であれば金の買い材料とされてきた要素が、今やビットコインの価格形成にも直接的な影響を及ぼしているという。
本来、金は「安全資産」として、経済混乱時には価値が上昇する傾向がある。一方、ビットコインはその歴史の浅さから、市場の混乱時にはリスク資産として売られることが多かった。しかし今回のデータは、そうした構図に変化が生じていることを示している。投資家は、マクロ懸念が強まる局面において、両者を「法定通貨に対抗する代替資産」として同列に評価し始めているのだ。
特に注目されるのは、ビットコインの値動きが金のそれを単に追随するのではなく、増幅させる傾向にある点だ。金が上昇局面に入ると、ビットコインはそれ以上の率で上昇する。逆に下落時にも、その変動幅は大きくなる。ドラゴッシュ氏はこの現象を、ビットコインが金の「高ベータ版」として機能していると表現する。
6年前の2020年と何が違うのか
前回、ビットコインと金の相関が現在と同水準に達した2020年は、コロナ禍による未曾有の経済混乱期だった。当時、各国中央銀行が大規模な金融緩和を実施し、財政出動も歴史的な規模に及んだ。その結果、インフレ懸念とドル安を背景に、金とビットコインがともに買われた経緯がある。
しかし今回の局面は、当時とは状況が異なる。現在は、むしろ金融引き締めの長期化や経済減速への懸念が根強い。にもかかわらず両資産の連動性が高まっているという事実は、投資家の間で「金とビットコインを同質のものと見なす動き」が、政策環境の変化を超えて定着しつつあることを示唆している。
ビットコインは「デジタルゴールド」の地位を確立しつつあるか
ビットコインはこれまで、その供給量が2100万BTCに限定されていることから、「デジタルゴールド」と称されることが多かった。しかし実際の価格変動は極めて大きいため、このレッテルはむしろ希望的観測に過ぎないとの批判も根強かった。今回のデータは、そうした批判に対して一定の反論材料を提供するものだ。
もちろん、90日間という期間での相関が今後も持続するとは限らない。暗号資産市場の流動性や規制環境、技術的なアップデートなど、金にはない独自の要因がビットコインの価格に影響を与える可能性は常に存在する。それでも、マクロ要因に対する反応の仕方が金に接近しつつあることは、ビットコインが「代替資産」としての成熟度を高めている証拠と言える。
この流れが続けば、機関投資家の間でビットコインをポートフォリオに組み込む動きがさらに加速する可能性がある。金と同様に、インフレヘッジや分散投資の手段としての認知が広がれば、長期的な価格の安定化にも寄与するだろう。
今後の焦点——相関の持続性と株式市場とのデカップリング
市場関係者の間で今後注目されるのは、この金とビットコインの連動性がどの程度持続するかという点だ。特に、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測や、各国の規制動向といった外部要因が、この相関関係にどのような影響を及ぼすかが鍵となる。
また、ビットコインが株式市場との相関をさらに低下させ、金との連動を強めることができれば、投資家にとってはより明確な資産クラスとしてのポジショニングが確立される。これは、暗号資産が伝統的な金融市場の中で占める役割を大きく変える可能性を秘めている。ビットワイズのリポートは、そうした構造転換の兆しが現実のデータとして表れ始めたことを告げる、極めて示唆に富んだ分析と言えるだろう。