全米オープン、深夜3時33分試合終了が波紋——選手から改善求める声相次ぐ

全米オープンで史上最遅の午前3時33分に試合終了。選手の疲労や公平性を懸念する声が高まっている。

投稿者 central
ハイライト
  • ベン・シェルトン対カルロス・アルカラス戦は午前3時33分に決着し、大会史上最も遅い終了時刻を記録した。
  • 開幕週だけで深夜0時越えの試合が5試合発生し、選手や観客への負担が深刻化している。
  • ビーナス・ウィリアムズは午前0時13分開始の試合を経験し、改善の必要性を訴えた。

全米オープンは現地時間の水曜早朝、前回王者カルロス・アルカラス(スペイン)とベン・シェルトン(アメリカ)の一戦が午前3時33分に決着する、大会史上最も遅い終了時刻となる激闘を記録した。シェルトンが番狂わせで勝利を収めた一方、試合後の会場では「さすがに遅すぎる」という困惑の声が広がった。今大会は開幕から複数の試合が深夜に及んでおり、主催者には「どこで打ち切るのか」という根本的な問いが突きつけられている。

遅すぎる試合開始・終了は、選手の回復時間を奪うだけでなく、放映や観客動員、大会スタッフの労働環境にも影を落としている。選手たちからは、スケジュール改革を求める声が日ごとに強くなっている。

午前3時33分だけじゃない——開幕週だけで深夜0時越えが5試合、最遅スタートは午前0時13分

今回の問題は、シェルトン対アルカラス戦の1試合だけが原因ではない。全米オープンの開幕週だけを見ても、午前2時以降に終了した試合が3試合。そのほかに、深夜0時を大幅に回ってからの試合終了も2試合あった。つまり、わずか1週間のうちに5試合が日付を越えて行われたことになる。

なかでも象徴的だったのが、ビーナス・ウィリアムズが出場した1回戦だ。開始時刻は午前0時13分。今大会で最も遅く始まった一戦として、大きな話題を集めた。

全米オープンの深夜試合はなぜ問題になっているのか

全米オープンは開幕週だけで複数の試合が深夜0時を回って続行し、ベン・シェルトン対カルロス・アルカラス戦は大会史上最遅となる午前3時33分に決着。選手の疲労回復や競技の公平性、観客やスタッフへの負担を懸念する声が強まっている。

ビーナス・ウィリアムズ「ほかのスポーツでこんな遅く始まるものはない」

46歳のビーナス・ウィリアムズにとって、今回の深夜スタートは受け入れがたいものだった。自身の1回戦はソフィア・ケニンとの対戦となり、試合は午前0時13分に開始。ウィリアムズは敗戦後、「理想的な状況ではない」と切り出し、こう続けた。

「もっと別の時間帯を希望していたのは確かよ。ほかのスポーツで、こんなに遅い時間に始めなければならない競技を、私は知らない。改善の余地は十分にあると思う」

賞金・待遇改善と結びつく深夜試合への不満

この問題は単なるスケジュール上の都合にとどまらない。トップ選手たちが求めてきた賞金の増額や福利厚生、労働条件の改善をめぐる大きなうねりと結びつきながら、“ツアー生活のあり方”そのものを問い直す火種となっている。深夜まで及んだ試合は、次のラウンドに向けた回復時間を圧迫し、選手のパフォーマンスやケガのリスクに直結する。

競技の公平性という観点からも、ナイトセッションの出場選手だけが大きなハンデを背負う状況は望ましくない。深夜テニスが“当たり前”になることへの警戒感が、選手たちの間に広がっている。

ウィンブルドンは午後11時打ち切り、全仏は夜間1試合のみ——4大大会の対応に温度差

グランドスラムのなかでも、全米オープンは“深夜テニス”が特に目立つ大会となっている。同じくオーストラリアン・オープンは過去、悪名高い深夜試合で批判を浴びてきた。その一方で、ウィンブルドンは午後11時を期限として試合を打ち切るルールを採用。全仏オープンも夜間セッションを1日1試合に限定している。

この差は何を意味するのか。全米オープンはデーセッションとナイトセッションの2部構成で大会を運営しており、特に夜間の“興行価値”を重視してきた経緯がある。ニューヨークの夜を彩るエンターテインメントとしての側面を持つ一方、選手や関係者への負荷が軽視される傾向があったとの批判も根強い。

午後7時開始の前倒しが難しい——ニューヨークの“現実”

では、ナイトセッションの開始時間を午後7時より早めれば解決するのか。主催者側には、仕事を終えたニューヨーカーがフラッシング・メドウズまで移動する時間を確保しなければならないという事情がある。さらに、デーセッションからナイトセッションへと観客を入れ替える運営上の制約もあり、安易な前倒しはできないのが実情だ。

ショーとしての盛り上がりと、選手たちの健康や労働環境のバランスをどう取るのか。この構造的な課題が、今回の騒動であらためて浮き彫りになった。

大会主催者「あらゆるスケジュール選択肢を検討する」

一連の深夜試合について、全米オープン広報担当者は「火曜日は、全米オープン史上でも最も特別なテニスの一日のひとつになった」と振り返る。そのうえで、「我々はコート上で繰り広げられた信じられないような競り合いに驚かされるばかりだ。4試合は最大16セットに及び、3試合は最終セットのタイブレークを迎えた。同時に、今後はあらゆるスケジュールの選択肢を検討しなければならないことを認識している。焦点は、試合終了時刻ではなく、素晴らしいアスリートたちのパフォーマンスに注がれるべきだ」とコメントした。

その一方で、深夜までの試合が続いても会場には人が集まる。大会そのものの人気は衰えていないが、試合によっては帰宅の長い道のりを考えて席を離れるファンが多く、薄い客入りのままで進行する場面も見受けられた。

ペグラが問う「午前2時までプレーさせることの是非」

アメリカの世界ランク3位、ジェシカ・ペグラは、この議論を選手個人の回復問題にとどめて考えるべきではないと話す。ファン、テレビ中継、サポートスタッフ、メディアにまで影響が及ぶ「大会全体の持続可能性」の問題だという。

「試合数が多く、放送やテレビ局との兼ね合い、どの試合を何時に始めるかなど、主催者は多くの要素を調整していると分かっている。それでも、選手が午前2時に試合を終えるのが本当に正しいことなのかは疑問だ。特に、テレビで観ている人がいない時間帯の試合はね。残って観る人もいるけれど、帰らなければならない人も大勢いる。1時間早く試合を始めるなど、もっと良い方法はないのか、わたしは根本から問い直したいと思っている」

5セット制の維持を支持——ティアフォー「物語を生むのは5セッターだ」

深夜試合が問題になるたびに浮上するのが、男子の序盤ラウンドを3セット制に短縮する案だ。試合時間を短縮すれば深夜化は避けられるが、5セットマッチをグランドスラムの醍醐味ととらえるファンも多く、意見は割れている。

アメリカの世界ランク12位、フランシス・ティアフォーは、男子ツアーの伝統を守る立場を明確にした。

「僕は男子は5セット制のままでいいと思っている。この議論がどこに向かうのかは分からないし、人それぞれ考え方は違うだろう。でも、5セッターではこれまで数えきれない名勝負が生まれてきた。僕が5セッターを愛しているか? そんなわけない。2セット先行して“ここで握手して帰りたい”と思うことは何度もある。でも、それがテニスなんだ」

全米オープンは今後、大会運営の根幹に関わる選択を迫られることになる。深夜の激闘は“伝説”として記憶される一方、選手の健康や観客の利便性、スタッフの労働環境をないがしろにすれば、来年以降も同じ議論が繰り返されるだろう。ショーとしての価値と選手保護を両立する新たな枠組みを、主催者がいつまでに提示できるのか。来年の全米オープンは、その成否が問われる大会になる。

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