中国共産党は2月24日、党中央軍事委員会(CMC)の副議長を務めていた張又侠氏と、CMC委員で連合参謀部参謀長の劉振立氏を、党および軍から追放したと正式に発表した。不忠誠や汚職、その他重大な規律違反があったとされている。この発表は、中国の最高指導部における異例の規模の粛清として、国内外で波紋を広げている。
習近平氏に最も近い軍事アライ、張又侠氏の失脚
張又侠氏は、国家主席である習近平氏の下でCMCのNo.2として長年軍の指揮系統を支え、習氏の最も信頼する軍事アライとも目されてきた人物である。その張氏が「不忠誠」という極めて重い理由で追放されたことは、中国軍の内部に深刻な亀裂が生じている可能性を示唆している。
劉振立氏もCMCの一員であり、軍の作戦中枢である連合参謀部を統括するポストにあった。両氏に対する調査は2025年1月に公表され、その後2025年8月末には国家レベルのCMCから解任されていた。今回の党籍と軍籍の剥奪は、その調査結果に基づく最終的な処分とみられる。
背景にある権力闘争と軍内の動揺
今回の処分が注目されるのは、単に高位の軍幹部が処罰されたという事実だけではない。張又侠氏は習氏の側近中の側近であり、その人物が「不忠誠」と断じられたこと自体が、中国政治の文脈において極めて異例だからだ。これは、習指導体制の基盤そのものに関わる重大なシグナルと解釈できる。
「不忠誠」とされた具体的な理由は何か
公式発表では「不忠誠、汚職、その他重大な規律違反」とされているが、具体的な内容は明らかにされていない。中国の政治風土において、「不忠誠」という文言は個人の思想や行動が党の路線に背いた場合に使われることが多く、単なる汚職問題に留まらない政治的な断罪である可能性が高い。これは、軍内部における権力構造の再編や、特定派閥の一掃を目的とした粛清であるとの見方が専門家の間では有力だ。
中国軍の指導体制と今後の影響
中央軍事委員会(CMC)は中国軍の最高指揮機関であり、そのメンバーは事実上、国家の安全保障を握る最重要ポストである。張氏と劉氏という2人のトップメンバーを同時に失ったことは、CMCの求心力と作戦指揮系統に一時的な混乱を招く可能性は否定できない。
市場と国際社会の受け止め
今回の発表を受け、米中関係や台湾海峡の情勢に対する懸念が再び高まっている。過去の粛清では、軍内部の人事異動が大規模な政策転換に直結した例もある。特に、習指導部が国防費の増額や軍の近代化を加速させる中で、今回の粛清が軍の統制強化と、より強硬な安全保障政策への舵切りにつながるかどうかが、今後の焦点となる。
今後の焦点:軍の統制強化か、内部抗争の長期化か
この粛清が一時的な「綱紀粛正」で終わるのか、それとも更なる高位幹部の追放に発展するのかは、中国政治の行方を占う上で極めて重要な指標となる。習指導部が軍に対する支配をより強固なものにする意図であることは明白だが、長年側近として仕えた張又侠氏を切り捨てたという事実は、内部に相当な軋轢が存在することを示唆している。
今後の中国軍の人事動向と、世界第2位の軍事予算を誇る軍隊の指揮系統がどのように再編されるのか、日本としても注視していく必要があるだろう。