Amazon、Temu、TikTok Shopの各プラットフォームにおいて、水銀を含有する美白クリームが依然として販売されている実態が、公開情報の調査により明らかになった。対象となった製品は、健康被害のリスクから国際的に製造・輸入・販売が禁止されているにもかかわらず、第三者が運営するマーケットプレイス上で20種類以上が確認されたという。
2013年に採択された「水銀に関する水俣条約」には150以上の国と地域が加盟しており、WHO(世界保健機関)も腎臓や脳、神経系に深刻なダメージを与えるとして、水銀を含む化粧品の流通を長年にわたり規制してきた。しかし今回の調査結果は、こうした国際的な規制の枠組みが、オンラインプラットフォーム上の取引に対して十分に機能していない実態を浮き彫りにしている。
禁止指定された水銀含有美白クリーム、いまだに流通
問題となっているのは、肌の漂白効果をうたった一部のクリーム製品だ。これらは各国の規制当局によって販売が禁止されているにもかかわらず、AmazonやTemu、TikTok Shopのマーケットプレイスで引き続き購入可能な状態にある。調査では、製品の成分表示に水銀が明記されていないケースや、原産国や製造元を偽装する手口が確認されており、販売業者が意図的に規制の網をかいくぐっている可能性が指摘されている。
特に深刻なのは、一度サイトから削除された製品が、名称を変えたり、別の販売業者によって再出品されたりするケースが後を絶たない点だ。排除措置が一時的な対処に終わっており、根本的な解決に結びついていない実態が浮かぶ。
水俣条約の成立から10年以上、なぜ規制は実効性を持たないのか
水俣条約は、水銀の健康リスクに対する国際的な認識の高まりを受け、2017年に発効した。条約の締約国は水銀を含む製品の製造、輸入、輸出を原則禁止しており、化粧品もその対象に含まれている。しかし、国境を越えた電子商取引(EC)の拡大に伴い、規制の執行は極めて困難な課題となっている。
特にAmazonやTemu、TikTok Shopといったプラットフォームは、世界中の多様な販売者が出品するマーケットプレイスモデルを採用している。これにより、一国の規制当局が販売を差し止めても、別の国から同じ製品が出品されれば、取引は容易に継続される。調査では、日本の消費者がこれらのプラットフォームを通じて水銀含有製品を購入できる可能性も否定できないとして、注意を呼びかけている。
健康リスクと消費者が取るべき対策
WHOの見解によれば、水銀は皮膚から吸収されると腎臓や脳、神経系に蓄積し、長期的な健康被害を引き起こす可能性がある。特に美白を目的としたクリームは継続的に使用されるケースが多く、少量の水銀であっても慢性的な曝露によって深刻な影響が生じるリスクがある。
消費者が回避するためには、以下の点に注意が必要だ。
- 成分表示に「水銀」「mercury」「Hg」「calomel」などの表記がないか確認する
- 極端に短期間での美白効果を謳う製品は疑ってかかる
- 販売者の情報が不明瞭な商品は購入を避ける
- 購入前に各国の規制当局が公表している禁止製品リストを参照する
また、すでに購入してしまった場合でも、使用を直ちに中止し、適切な方法で廃棄することが推奨されている。
プラットフォーム各社の対応と今後の課題
Amazon、Temu、TikTok Shopの各社はこれまで、禁止商品の出品防止に向けたポリシーを掲げてきた。しかし、今回の調査結果は、それらの対策に依然として抜け穴が存在することを示している。特にTemuは急速に市場シェアを拡大しているプラットフォームであり、出品される商品のチェック体制が需要の増加に追いついていないとの指摘もある。
一方で、AmazonはAIを活用した不審商品の検出や、規制当局との連携強化を進めているものの、出品者が商品名や説明文を巧妙に変更することで検出を逃れるケースが後を絶たない。TikTok Shopにおいても、ショート動画を通じて拡散される商品の実態把握が難しく、プラットフォーム側の管理体制が課題となっている。
今後、各国の規制当局がECプラットフォームに対してより厳格な監視を求める可能性は高い。特にEUではデジタルサービス法(DSA)に基づき、プラットフォームに出品商品の安全性に対する責任をより明確に求める動きが強まっている。日本国内においても、消費者庁や経済産業省が同様の規制強化を検討する可能性は否定できない。
水俣条約の発効から8年が経過した今もなお、規制の隙間を縫って危険な製品が流通し続けている現実は、国際的な規制の枠組みだけでは越境ECの課題に対処できないことを示している。プラットフォーム事業者、規制当局、消費者の三者がそれぞれの立場で対策を強化することが求められる。特に日本の消費者にとっては、海外プラットフォーム経由の化粧品購入に際し、成分表示の確認と販売者の信頼性を見極める習慣がこれまで以上に重要になるだろう。