トークン化株式(Tokenized Stock)の市場規模が、数字で明確に捉えられる段階に突入した。Token Terminalの集計によれば、株式トークンの保有者数は約260万人に達し、わずか半年で8倍以上に拡大した。特に注目されるのは、参入から約2カ月で86万2800人の保有者を集めたRobinhood(ロビンフッド)の存在だ。2位のBinance(バイナンス)は82万7200人と、両者の差はわずか3万5600人と拮抗している。
取引量も同時に急増している。直近30日間におけるトークン化株式の分散型取引所(DEX)出来高は約64億ドル(約9600億円)に上り、前の30日間から90%超の増加を記録した。CoinDeskの報道によると、トークン化株式市場全体の規模は36億ドル(約5400億円)と推定されている。現状、集計対象によって数字にばらつきがある点は押さえておく必要があるが、市場そのものが拡大フェーズにあることは間違いない。
保有者数の偏在と流動性の極端な集中——浮かび上がる構造的リスク
市場の拡大と同時に、その内部構造を読み解くことが重要になる。64億ドルに膨らんだDEX出来高のうち、PancakeSwapa(パンケーキスワップ)が約31億ドル、Uniswap(ユニスワップ)が約25億ドルを占め、この2つの取引所だけで全体の約88%を掌握している。保有者数がRobinhoodとBinanceでほぼ拮抗しているのとは対照的に、実際に価格が形成される場所は極端に限定されているという構図だ。
トークン化株式とは何か
トークン化株式とは、ブロックチェーン上で発行されるデジタルトークンであり、裏付けとなる原資産(実際の株式)の価値に連動するよう設計されている。法定通貨建ての株式取引とは異なり、24時間取引が可能であり、決済期間の短縮といったメリットが期待されている。ただし、現時点では特定のDEX上の流動性プールに価格発見が依存しており、伝統的な証券取引所のような気配管理や値幅制限といった仕組みは存在しない。
この流動性の極端な集中は、新たなリスクを生み出す。株式そのものであれば、上場取引所の取引時間や値幅制限、気配管理といった仕組みが価格の連続性を担保する。しかし、トークン化株式の価格発見が特定のDEXプールに依存する場合、流動性提供者がプールから資金を引き揚げるだけで、原株との乖離が急拡大する可能性がある。さらに、参照先の株式が取引停止や急激な需給変動に見舞われた局面では、24時間稼働するトークン側だけが先行して値を付けるという構造的な歪みも内包している。
日本の投資家は「観測対象」と割り切るべき現実
米国の株式取引プラットフォームとして知られるRobinhoodが発行する株式トークンは、Regulation S(レギュレーションS)に基づく米国外向けの商品として設計されている。そのため、米国居住者への販売は認められておらず、カナダ、英国、スイスにも制限が及ぶ。日本の居住者が国内の登録業者を通じて購入できる商品ではないため、現状は「観測対象」であって「投資対象」ではないという整理が実務的だ。
しかし、この市場の動向が日本と無関係というわけではない。株式のオンチェーン化(トークン化)は、決済期間の短縮や24時間取引といった論点において、伝統的な証券インフラに変革を迫る可能性を秘めている。保有者数の急拡大と流動性の一極集中が同時進行している現状は、この市場がまだ価格形成の信頼性を証明していないことを明確に示している。
規模が拡大する局面だからこそ、出来高の分散度合いは注視に値する指標となる。トークン化株式市場が、真に成熟した金融商品として認知されるためには、流動性の分散と価格発見メカニズムの信頼性向上という、二つの課題をクリアする必要があるだろう。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言を目的としたものではありません。暗号資産およびトークン化商品への投資は、元本が保証されておらず、価格変動により損失が生じる可能性があります。投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。
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