Midjourney、全身3Dスキャナー発表 医療分野に参入

画像生成AIの巨人が医療機器に挑戦。水中超音波で全身を60秒スキャンする新装置とは。

投稿者 central
Midjourneyが発表したMidjourney Scannerは、水中超音波で全身の3Dマップを生成する医療機器。
ハイライト
  • Midjourneyは水中超音波を使い、約60秒で全身の3D画像を生成するスキャナーを発表した。
  • この装置はMRIの約100倍の速度で、放射線や強磁場を使用しないため安全性が高い。
  • Midjourneyは画像生成AIの枠を超え、医療分野でFDA承認を目指し2031年までに5万台の展開を計画。

画像生成AIで世界的に知られる米Midjourneyが、医療分野への本格参入を発表した。同社は現地時間6月17日、新たに「Midjourney Medical」事業を立ち上げ、第一弾製品としてハードウェア「Midjourney Scanner」を公開。水中で超音波を照射し、約60秒で全身を3D画像化するというこのスキャナーは、従来のMRIとは一線を画すアプローチで、医療検査の在り方を根底から覆す可能性を秘めている。

テキストから画像を生成するAI企業として名を馳せてきたMidjourneyにとって、医療機器の開発は完全な異業種参入となる。同社自身も発表文で「これまで当社が見せてきたものとは無関係だ」と認めた上で、「MRIほど強力で、スパに行くくらい気軽な何か。その実現への道筋を、きょう示す」とその狙いを明確に語っている。

「超音波CT」が実現する全身スキャンの全容

Midjourneyが「超音波CT」と呼ぶこの装置は、放射線や強力な磁場を一切使用しない。利用者はまず、黄金色にライトアップされた浅いプールに立つ。足元の台がレールに沿って毎秒約5cmの速度で沈み、体が水中のセンサーリングをくぐり抜けていく仕組みだ。

リングは砂粒ほどの大きさの四角い素子、約50万個で構成されている。それぞれの素子は小さなスピーカーとマイクを兼ねており、超音波を発しながら体に当たって返る反射波を毎秒数百万回記録する。Midjourneyはこの仕組みを、反響定位(エコーロケーション)で泳ぐイルカの群れに例えている。

収集されるデータ量は毎秒テラバイト級に達する。同社の説明によれば、1秒分のスキャンデータはHD動画にして500時間分に相当するという。水から皮膚、脂肪、筋肉、骨へと密度や硬さが変化するたびに超音波の波形も変化。その微妙な変化を、数千台のコンピューターからなる大規模クラスターで解析し、体内の様子を再構成する。

こうして得られるのは「ミリ以下の精度の全身3Dマップ」であり、Midjourneyは「現在のMRIによく似ているが、速度はほぼ100倍」と主張する。スキャン時間は60秒以内を目標に掲げており、従来のMRI検査に比べて圧倒的な短時間化を実現する。

半導体型超音波技術の核心とパートナーシップ

装置の中核には、半導体型の超音波技術を持つ米Butterfly Networkのチップが使われている。翌18日に同社が発表した公式コメントによると、現行の試作機には「超音波オンチップ」モジュールが1台あたり40個搭載されていることが明らかになった。ジョセフ・デビボ社長兼CEOは「約50万個のセンサーが同時にスキャンし、2ペタフロップスを超える処理能力を持つ。放射線も磁気のリスクもなく、低コストで利用しやすい」とコメントしている。

この技術により、従来の超音波診断装置では難しかった全身の高速・高精度スキャンが現実のものとなりつつある。超音波は空気中では減衰が大きいが、水中では効率的に伝播するため、プールに立つという方式は物理的に理にかなっている。

「スパ」に併設する戦略 検査を日常に溶け込ませる

Midjourneyは、このスキャナーを単体の医療機器として販売するのではなく、「スパ」に併設する形で普及させる計画だ。最初の施設はサンフランシスコ中心部に2027年末ごろ開設する予定である。

スパにはホットタブやサウナ、冷水浴に加え、前述のスキャン用プールが設置される。24時間営業を想定し、Midjourneyは「スキャンはあくまで副産物だ。スパに行くとき、その存在はほとんど意識しない。それでも気づけば、自分の体に関する膨大なデータが手元にたまっている」と説明する。健康診断という構えではなく、「ただ行きたくなる場所」を作ることで、検査を日常生活に自然に溶け込ませる狙いがある。

この「スパ構想」は、医療機関を受診する心理的ハードルを下げ、定期的な体の状態把握を習慣化するという、これまでにない試みである。利用者はリラックスしながらスキャンを受けられるため、検査に対する抵抗感が大幅に軽減される可能性がある。

2031年に5万台展開へ FDA承認は段階的に

現在から12カ月間は、アルゴリズムとハードウェアの改良、性能を示すための研究試験、第2世代機の設計、そして最初の「研究用スパ」の建設に充てられる。2028年には対象都市を拡大し、半導体を完全に独自設計した第3世代機へ移行する計画である。

ただし、診断機能をうたうには米食品医薬品局(FDA)の承認が不可欠だ。Midjourneyは当面、診断ではなく「詳細な体組成マップ」の提供にとどめ、機能の拡張に向けて試験結果を定期的にFDAへ提出していく方針を示している。つまり、現時点では診断用途の承認は得ていない。

同社は2031年までに世界で5万台超の装置を展開し、月10億回のスキャン能力を確保するとの目標を掲げる。さらに「将来、十分な早期画像診断が広まれば、世界の死亡の30%、医療費の50%を回避できる可能性も十分にある」とまで主張している。

Midjourneyは「当社に投資家はいない。日常のユーザーに支えられた、新しい形のコミュニティ型研究ラボだ」と改めて強調し、スパの順番待ち登録や臨床試験ボランティアの募集を開始した。同社は「ここ数年取り組んできた、もっとわくわくするプロジェクトがほかにもある」とも予告しており、画像生成AIに続く第二の柱として、医療技術事業に大きな期待を寄せていることがうかがえる。

医療機器としてのFDA承認という高いハードルが控える一方で、検査を「スパ体験」として再定義するMidjourneyの試みは、予防医療の普及に向けた新しいモデルを提示している。従来の医療業界の常識にとらわれないアプローチが、どれだけ現実のものとなるのか。今後の動向から目が離せない。

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