米ドル/円が160円を挟んで膠着状態に陥っている。市場参加者の間でこの水準が強く意識されるなか、値動きは限定的となり、方向感を欠いた展開が続いている。このような状況は当面継続すると見られるが、FXトレードにおいては決して手をこまねいている必要はない。むしろ、相場が動かないときこそ、金利差を収益源とする戦略、すなわちスワップポイント(金利)を積み上げる手法が有効となる。本稿では、現在のマーケット環境と、金利差トレードを軸に据えた具体的な通貨ペアの動向、そして今週から来週にかけて注目すべき重要イベントについて、実践的な視点から解説する。
金利差トレードが有効な理由:メキシコペソ/円で蓄積されるスワップポイントの威力
為替市場が方向感を失い、レンジ相場が続く局面では、値幅を取るデイトレードよりも、ポジションを保有し続けることで日々発生するスワップポイントを狙う戦略が有効となる。特に、金利の高い通貨を買い、低い通貨を売るキャリートレードは、ボラティリティが低下した市場において安定したリターンを生み出す手法として知られている。
筆者は、有料メルマガ「ザイFX!FXプレミアム配信with今井雅人」において、昨年(2025年)からメキシコペソ/円の買いポジションを推奨し、実際に自身も継続して保有している。この間、為替介入による急落局面を経験したものの、その後の回復は力強く、現在は高値圏で推移している。そして、その間も日々スワップポイントは着実に積み上がり、その累積額は驚くべき水準に達している。為替差損益だけではなく、金利収入という側面からも、この戦略の有効性が証明されつつあると言える。
相場が荒れているときは、上げ下げを積極的に取りに行く。相場が安定しているときは、金利差を狙いに行く。これがFXトレードの基本であり、現在は後者の戦略を中心に据えるべき時期である。いずれ相場が再び大きく動き出すタイミングが来るだろうが、それまでは、金利差トレードを主力戦略として位置づけておきたい。
ジャクソンホール会議:ウォーシュFRB議長の初の基調講演に注目
今週(8月24日~)は、米国で二つの大きなイベントが控えており、市場の関心が集まっている。まず、米カンザスシティ連銀主催の金融政策に関する会議、いわゆる「ジャクソンホール会議」が8月27日から29日にかけて開催される。この会議は毎年、金融政策を巡る様々な議論が交わされる場として知られており、2026年のテーマは「資金決済分野における金融イノベーションとその政策的含意」とされている。
市場の最大の関心事は、ウォーシュFRB議長による初の基調講演である。ウォーシュ議長は、これまでフォワード・ガイダンス(将来の政策指針)に対して消極的な姿勢を貫いてきた。そのため、今回の講演で今後の金融政策の具体的な道筋について言及する可能性は低いと見られる。しかし、市場参加者の間では、何らかのヒントが得られるのではないかという期待もあり、その内容がタカ派寄りであれば金利上昇・ドル高要因に、ハト派寄りであればその逆に作用する可能性があるため、注意深く見守る必要がある。
G20財務相・中央銀行総裁会議:ベッセント財務長官と植田日銀総裁の接触に注目
ジャクソンホール会議に続き、8月31日から9月1日にかけて、米国(アシュビル)で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催される。会議自体から、マーケットに直接的な影響を与えるような具体的な成果が発表される可能性は低い。しかし、注目すべきは、この会議の合間に行われると見られる二国間協議である。
既に、ベッセント米財務長官は、7月末の日米協調介入以降、日銀に対して利上げを促す発言を行っており、その際に「8月末に植田日銀総裁に会うのを楽しみにしている」とコメントしている。この発言から、G20の場で何らかのやり取りが行われることはほぼ確実視されている。
市場は既に9月の日銀利上げをある程度織り込んでいるため、大きなサプライズにはなりにくいとの見方が有力だ。しかし、仮に、ベッセント財務長官から植田総裁に対して、さらなる利上げのペースを加速させるよう促すような、タカ派的なニュアンスの発言が伝わってきた場合、市場は円高方向に反応する可能性がある。この点は、今後の為替動向を占う上で、注意深く見守る必要がある。
相場が動かないからこそ、金利差トレードで収益を積み上げる。そして、今後のイベントを契機に相場が再び動き出した場合には、その流れに乗る準備を怠らない。この両面の戦略を持つことが、現在の市場環境においては最も重要であると言えるだろう。