フィラデルフィア連邦準備銀行aが発表したワーキングペーパーにより、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の市場参加者の行動に明確な違いがあることが明らかになりました。大口送金(クジラの動き)が公開された後、ビットコインでは非クジラのウォレットが短時間で同じ方向に追随する強い傾向が確認された一方、イーサリアムではそのような顕著な反応は見られませんでした。この分析結果は、暗号資産(仮想通貨)市場における情報伝達の仕組みや参加者の行動パターンの違いを浮き彫りにしています。
クジラの動きを追跡:Whale Alertデータとオンチェーン分析
研究チームは、大口取引の公開通知サービス「Whale Alert」の通知時刻と、2025年末までのブロックチェーン上の送金データを照合。クジラを「一度の送金で5,000万ドル(約75億円)超を移動させたウォレット」と定義し、取引所やスマートコントラクトに関連するアドレスは除外しました。さらに、前後2時間に他のクジラ取引が存在しないケースに絞り込んだ結果、ビットコインで6,645件、イーサリアムで5,075件のサンプルが分析対象となっています。
ビットコインでは非クジラが即座に追随
分析結果は極めて明確です。ビットコインにおいて、クジラが買いを行った後、最初の15分間で小口ウォレットの買い参加率は14.81ポイント、中口ウォレットでは23.72ポイント、大口ウォレットでも3.50ポイント上昇しました。売りの場合も同様で、それぞれ12.95ポイント、29.52ポイント、2.95ポイントの上昇が確認されています。この追随行動は約1時間程度で通常の水準に戻ることも判明しました。
この結果は、ビットコイン市場において、大口保有者の行動が小口や中口の投資家にとって一種のシグナルとして機能している可能性を示しています。
イーサリアムはなぜ無反応なのか
一方、イーサリアムでは、クジラの売却後に一部の大口非クジラ層で限定的な反応が見られたものの、全体としては明確な追随行動は確認されませんでした。この差について、著者らは市場構造の違いに起因すると分析しています。イーサリアムでは、取引所やスマートコントラクト、レイヤー2ソリューションなどを経由して多数の取引が集約・処理されるため、単一の大口送金が持つ情報価値がビットコインとは異なるという解釈です。つまり、イーサリアムのエコシステムでは、大口送金がそのまま「買い」や「売り」の意思表示として単純に解釈されにくい構造にあると考えられます。
研究の限界と市場への示唆
ただし、本研究はあくまで観察研究であり、Whale Alertの通知自体が取引を引き起こしたと断定できる内容ではないとされています。通知を見たトレーダーが自主的に判断した可能性も、他の市場要因が同時に作用した可能性も否定できません。それでも、ビットコインとイーサリアムという二大暗号資産の間で、参加者の情報処理行動にこれほど明確な差が存在することを実証した点は極めて重要です。この知見は、暗号資産市場における価格形成メカニズムや情報効率性を理解する上で、新たな視点を提供するものと言えるでしょう。