集英社ゲームズが2027年に発売を予定するプレイステーション 5/Nintendo Switch 2/PC用アドベンチャー「UN:Me(アン・ミー)」。本作は「ソウル・トリアージ アドベンチャー」と銘打たれ、体内に4つの魂を宿した主人公の少女を操作し、不安定な世界を探索するという独創的なゲームプレイが注目を集めている。発売元は「都市伝説解体センター」で知られる集英社ゲームズ、開発は「カリギュラ」シリーズのヒストリアが務める。本稿では、総合プロデューサーの河合泰一氏、企画・シナリオの山中拓也氏、企画・ディレクターの佐々木瞬氏、そして主人公の声を務める花守ゆみり氏へのインタビューを通じて、本作の核心に迫る。特に、山中氏と花守氏の間にあった揺るぎない信頼関係が、どのようにして異例の収録方法を実現させたのか、その詳細を明らかにする。
日常の不安を描く、新感覚のアドベンチャー
本作の最大の特徴は、ホラーではなく「不安」をテーマにしている点だ。佐々木氏は「最初は本当にホラーを作るつもりはなかった」と語る。河合氏からの「もっと本当にやりたいことを」という助言を受け、チームは「日々抱える不安」や「トラウマ」といった内面描写を突き詰めていった。山中氏は「どの魂が自分の身体の持ち主で、いつ切り替わるか分からないアンコントローラブルさ」が初期案から存在し、「不安」という言葉が見つかった瞬間にすべての要素が有機的に繋がったと振り返る。
開発チームは、暗くすることで容易に演出できる恐怖とは一線を画し、明るくおしゃれな空間でありながらプレイヤーに不安感を植え付けるという高度なデザインを採用。佐々木氏は「明るいのにプレイヤーの感情を動かす」部分に苦労したと語り、この挑戦が本作のアート面における核心だ。
花守ゆみりと山中拓也、10年の信頼が生んだ収録現場
本作の収録方法は、業界の常識から大きく逸脱していた。通常、ゲームの音声収録では、ミスがあった場合に該当のセリフのみを録り直す「ピンポイント録り」が行われる。しかし、「UN:Me」では、花守氏が違和感を覚えた場合、シーン全体を冒頭から再収録するという手法が採られた。花守氏は「会話の区切りをどこにしようか」と悩みながら、10ページ以上の長尺を一度に録り、納得がいかなければ「全部ひっくり返してもう1回やり直す」という、極めて贅沢な環境だったと明かす。
山中氏はこの判断について「気持ちの部分では繋がっていないことが分かる人には分かってしまう」ため、「丸っとシーンから録り直そう」と決断したと説明。佐々木氏は「信頼がない方に『頭から録り直したい』とは言いにくい」と指摘し、この手法が可能だった背景には、山中氏と花守氏の間に構築された絶対的な信頼関係があったと分析する。両者の「お芝居において何を良しとするか」が完全に一致していたからこそ、摩擦のないリテイクが実現したのだ。
「無駄話」が紡ぐ、唯一無二の会話劇
花守氏は4つの魂を1人で演じ分けているが、声を変えることよりも「心の動き」を重視したという。収録は魂ごとに日を分けて行われ、それぞれのキャラクターが記憶を失った状態から徐々に輪郭を帯びていく過程を、繊細なグラデーションで表現した。山中氏は本作のシナリオについて「無駄話が多い」と語る。ゲームでは通常、キャラクターは必要なことしか話さないが、「UN:Me」では恋バナや話題の逸脱など、現実の会話に見られる「ノイズ」をあえて大量に盛り込んだ。このアプローチは、山中氏が追い求める「人間の表現」に完璧にマッチし、会話そのものが目的となるユニークな体験を生み出している。
花守氏も「関係ない話こそが、その子たちの性質を表している」と同意し、同じテーマでも返し方に個性が出る自然な会話が、各魂の性質を紐解く鍵になっていると語る。この細部へのこだわりこそが、「UN:Me」を他に類を見ないタイトルへと押し上げているのだ。
発売延期の裏にある、クオリティへの飽くなき追求
本作は当初の予定から発売を2027年に延期している。河合氏は「皆さんの反響を受け、モーションキャプチャーを取り入れたことで対話パートのクオリティが大きく上がった」と説明。少女の微細な表情や仕草の変化を捉えるため、開発期間を延長してでもブラッシュアップを選んだという。山中氏は「記号やテンプレートに頼るのをやめた作品」と自信を見せ、「こういったゲームが認められることは、ゲームというメディアがより豊かである証明になる」と語る。
花守氏は最後に「対話の先で何を受け取ってもらえたかが気になる」と述べ、プレイヤーとの対話を促した。選択とトリアージをテーマに掲げる本作は、単なるゲーム体験を超え、プレイヤー一人ひとりの内面に問いかける作品となるだろう。発売は2027年。さらなる情報公開に期待がかかる。