日本一高いビル建設現場にヒューマノイド、清水建設がAI巡回ロボを実装

投稿者 central

清水建設は2025年7月8日、建設現場へのAIロボット(フィジカルAI)の本格導入を目指し、実証実験を開始したと発表した。同社が施工を手がける、完成時には日本一高いビルとなる「Torch Tower(トーチタワー)」の建設現場では、すでにヒューマノイドロボットによる自律巡回の実証が行われている。国内の建設業界において、こうした取り組みは先陣を切るものだとしている。

Torch Towerの現場でヒューマノイドが自律巡回を実証

実証実験は、東京駅前に建設中の「Torch Tower」の現場で実施された。ヒューマノイドロボットは手にカメラを保持し、秒速1.0mで自律歩行。あらかじめ指定された道順に従い、現場の状況をセンサーとカメラで感知・判断しながら巡回した。

撮影された映像は、マルチモーダルLLM(大規模言語モデル)を活用したAI技術で解析される。このデータを活用することで、現場巡回などの管理業務を効率化できるかどうか、検討を進めている。従来、人が行っていた定期パトロールの一部をロボットが代替できれば、作業員の負担軽減や省人化につながると期待されている。

フィジカルAIとは何か——定義と建設現場での可能性

フィジカルAIとは、カメラやセンサーで取得した現実世界の状況をAIが把握し、ロボットや機械システムを環境に適応させながら制御する技術の総称である。変化する環境に対応しつつ物理的な動作でタスクを遂行するAIロボットが、その代表格といえる。

建設現場で従来使われてきたロボットは、プログラムされた動作しか実行できず、作業ごとに専用機を用意する必要があった。しかしフィジカルAIを搭載したロボットが実用化されれば、1台で複数の作業をこなせる汎用機として機能する。慢性的な労働力不足に直面する建設業界にとって、この技術は課題解決の切り札の一つとして位置づけられている。

なぜ清水建設はヒューマノイドを選んだのか

同社がヒューマノイド型ロボットに着目した背景には、建設現場特有の環境変化の激しさがある。工事の進捗に伴い、現場のレイアウトや障害物の位置、作業スペースは日々変化する。二足歩行が可能なヒューマノイドであれば、こうした非構造化された環境でも柔軟に移動・作業できる可能性が高い。

さらに、建設業では現在も人手による作業が圧倒的に多い。ヒューマノイドは人間と同じ空間で、人間と同じような動作で作業を行えるため、既存の作業プロセスを大きく変えずに導入できる利点がある。これらの特性が、同社がヒューマノイドに注目した理由だと説明されている。

実証中の塗装作業——ロボットアームが熟練技能を模倣学習

現場巡回と並行して、ロボットアームによる塗装作業の実証も進められている。作業者の動作を模倣学習(模倣学習)したロボットアームが、実際の塗装作業を試行的に行っている。この技術は、単に動作をコピーするだけでなく、塗料の粘度や対象物の材質に応じて力加減やストロークを調整する能力を、AIが学習することを目指している。

塗装作業は建設現場において、品質と作業者の熟練度に大きく依存する工程の一つである。ロボットアームがこの作業を代替できれば、品質の均一化と作業時間の短縮が期待できる。同時に、人手不足が深刻化するなかで、施工能力の維持にも貢献する。

AIエコシステムの構築と技能伝承への展望

清水建設は、実用化に向けて建設業に特化した「AIエコシステム」の構築を進めている。現場でのデータ収集・分析、シミュレーション、AI学習モデルの構築、ロボットへの実装——このサイクルを継続的に回すことで、AIロボットの適用範囲を段階的に拡大する計画だ。

このプロセスの中で、熟練技能者の動作や判断をモデル化しアーカイブすることも重要な目的の一つである。日本の建設業界では熟練技能者の高齢化が急速に進んでおり、高度な技能の継承が喫緊の課題となっている。AIが技能をデジタルデータとして保存し、ロボットを通じて再現できるようになれば、次世代への技術継承の手段としても機能する。

今後の展開——ソニーなど複数企業との協力体制

同社は、自社単独でロボット開発を進めるのではなく、ソニーなど複数の企業から技術協力を得ながら、AIロボットの実用化を加速させる方針を示している。異業種の技術を建設現場に応用するクロスインダストリー型のアプローチは、建設業界のデジタル変革(DX)の新しいモデルケースとなる可能性がある。

Torch Towerは、完成時には高さ約390mに達し、現在日本一であるあべのハルカス(300m)を大きく上回る日本最高層ビルとなる予定だ。その建設現場が、同時に日本最先端の建設ロボット技術の実証の場にもなっていることは象徴的である。フィジカルAIの実用化が、建設業界の労働力不足と技能継承という二つの構造的課題を解決する鍵となるのか——今後の実証結果が注目される。

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