MIT准教授・Daniela Rus氏、バイエルン州高技術賞を受賞

Daniela Rus氏がバイエルン州高技術賞を受賞。ロボティクスとAIの研究が高く評価された。

投稿者 central
MIT教授Daniela Rus氏がバイエルン州高技術賞を受賞。授賞式はミュンヘン王宮で行われた。
ハイライト
  • Rus氏は自己組織化ロボット群、ソフトロボティクス、自律移動、脳型AIの4分野で評価された。
  • 彼女はソフトロボティクスのパイオニアであり、柔軟素材のロボットを開発している。
  • 今回の受賞は物理的AIの発展への期待を高めるものだ。

MIT(マサチューセッツ工科大学)コンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)の所長であり、Panasonic記念コンピュータ科学教授を務めるDaniela Rus氏が、このたび「2026年バイエルン州高技術賞(High-Tech Prize of the Bavarian Minister-President)」を受賞した。同賞はドイツ・バイエルン州政府とバイエルン科学人文アカデミーが共同で授与するもので、ドイツ国内の技術・工学部門において最高額の賞金が贈られる権威ある賞として知られる。授賞式は7月23日、ミュンヘン王宮のヘルクレスザールにて執り行われた。

ロボット工学とAIの30年——選考委員会が評価した4つの柱

選考委員会が特に評価したのは、Rus氏の研究における以下の4つの領域である。すなわち、自己組織化するロボット群、ソフトロボティクス、自律移動、そして脳にヒントを得た人工知能だ。これらのテーマは、実験室の外で、人間が事前に想定しない状況下でも確実に動作する機械を構築するという、30年にわたる彼女の研究の歩みを集約したものと言える。

Rus氏の研究は、物理的なAI(Physical AI)が産業界や政策立案者の間で大きな関心事となっているまさにそのタイミングで、最高潮に達している。人間とロボットの協働というと、一般的には家事や工場のライン作業がイメージされるが、Rus氏はその数桁も上のスケールで研究を進めている。彼女が開発するアルゴリズムやシステムは、運輸、農業、医療、家庭、環境モニタリングといった多様な分野への自律ロボットの導入を可能にするものだ。

また、Rus氏はソフトロボティクスのパイオニアとしても知られる。柔軟な素材で作られたロボットは、従来の硬い構造のロボットよりも安全に、かつ環境に適応しながら作業を行うことができる。

解説:Daniela Rus氏とは?——液体ニューラルネットワークと折り紙ロボット

Rus氏が率いるCSAIL内の分散ロボティクス研究室(Distributed Robotics Laboratory)では、従来のアプローチでは解決が難しかった課題に対して、独創的な解決策を生み出してきた。代表的なプロジェクトの一つが、子どもが誤飲したボタン電池を消化管から安全に除去するための、経口投与可能な折り紙ロボットである。さらに、小型の自律ボート群が自ら組み合わさって橋やプラットフォームを形成し、都市の水路を需要に応じて再構成可能なインフラに変えるシステムも開発している。

特に注目すべきは、Rus氏が共同発明した液体ニューラルネットワーク(Liquid Neural Networks)である。これは体長1ミリメートルという線虫のコンパクトな神経系に触発されたアーキテクチャで、わずか19個の制御ニューロンを使って、未踏の環境で車両を自律操縦することを可能にする。この驚異的な効率性は、従来のアーキテクチャでは到底達成できない水準だ。この研究成果を基に、Rus氏と元CSAILの研究員であるRamin Hasani氏、Alexander Amini氏、Mathias Lechner氏は、MIT CSAIL発のスタートアップLiquid AIを設立。同社は、実行するデバイスのハードウェア制約を最初から考慮したモデルを設計している。

「人間と機械の対立ではない」——Rus氏が掲げる協調の哲学

Rus氏は一貫して、ロボットに現実世界で推論し適応する知能を与え、その行動が説明可能であるアルゴリズムの開発に注力してきた。彼女は次のように語っている。「AIは、人間がやりたがらない仕事を機械に任せるための技術です。これは人間と機械の戦いではありません。両者が一体となることで、人間も機械も単独では解くことのできない問題を解決できるシステムが生まれるのです」。

ドイツ・ミュンヘン工科大学のLorenzo Masia教授(知能生体ロボットシステム学)も、公式プレスリリースで「Daniela Rus氏はソフトロボティクスと物理的AIの先駆者であり、この賞はその科学を最前線に引き上げる助けとなるでしょう」とコメントしている。

受賞歴とアカデミアでの地位

Rus氏はこれまでに、2025年のIEEE Edison Medal、2024年のJohn Scott Awardなど数々の栄誉を受けてきた。2002年にはマッカーサー・フェロー(天才賞)に選出され、現在はフランス国立医学アカデミー、米国国家工学アカデミー、米国芸術科学アカデミーの会員を務める。さらに、Association for Computing Machinery(ACM)、Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)、Association for the Advancement of Artificial Intelligence(AAAI)のフェローにも名を連ねている。

今回のバイエルン州高技術賞の受賞は、ロボティクスとAIの分野におけるRus氏の長年にわたる貢献が、国際的に改めて高く評価されたことを示すものであり、今後の物理的AIの発展に向けた期待をさらに高めるものと言えるだろう。

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