ドイツ東部のザクセン=アンハルト州で実施される州議会選挙を前に、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が勝利への自信を強めている。第二次世界大戦後、ドイツで極右政党が州政府を主導する事態が現実味を帯びてきた。
ハルツ山地の麓に位置する村レーブリンゲン・アム・ゼーでは、ビールとソーセージが振る舞われる夏のピクニックに集まった家族連れが、一人の男性にサインと自写メ(セルフィー)を求めて列を作った。彼こそ、次期州首相として極右政党出身者を据える歴史的な局面を目前にした、AfDの州指導者ウルリッヒ・ジーグムント氏である。
同氏は日曜日に投開票が行われる今回の選挙で過半数を獲得し、州政府を主導する立場を得ることへの確信を隠さない。仮に過半数に届かなかった場合でも、その後発生する政治的混乱は「数カ月」続くにすぎず、AfDは次の選挙で勝利するとの見通しを示している。
「我々は未来だ」——旧東ドイツ地域で広がる極右支持
ジーグムント氏はインタビューに応じ、「いずれにせよ、我々は未来であり、私はこの選挙を前向きに見ている。我々は勝つことしかできない」と語った。同氏は35歳の元実業家で、整ったサイドパートの髪型に温和な人柄を持つ。旧東ドイツに位置するザクセン=アンハルト州は、統一後も経済格差や人口流出が続く地域であり、既存政党への不満を背景にAfD支持が急速に拡大している。
今回の選挙は、単なる一地方の政治日程にとどまらない。連邦レベルでもAfDが支持率を伸ばす中、東部諸州での勢力拡大は来年の連邦議会選挙にも影響を及ぼす可能性がある。ショルツ首相率いる連立政権への批判票がAfDに流れる構図が、東部で顕著になりつつある。
冷戦後最大の試金石——連邦政治への波及リスク
ドイツでは第二次大戦後、極右勢力が州政権を担った例はなく、仮にAfDが州政府を主導する事態となれば、戦後政治秩序の転換点として歴史的に位置づけられる。既に旧東ドイツ地域の複数の州ではAfDが第一党または第二党に躍進しており、連邦政府の対応が注目される。
ジーグムント氏の楽観的な発言は、有権者の心理にも一定の影響を与えている。同氏の言う「我々は未来だ」というフレーズは、既存政党への失望を背景に、変化を期待する層へ強く響いている。一方で、経済界からはAfDの政策的な不透明感や、EU離脱に近い主張への懸念も根強い。
今回の選挙でAfDが過半数に届かなかった場合、連立交渉は難航することが予想される。他党はこれまでAfDとの協力を拒否する「防火壁(コルドン・サニテール)」の立場を取ってきたが、州政権運営の現実を前に、その戦略が持続可能かどうかが問われる局面を迎えている。
東部三州で相次ぐ選挙——秋にかけての政治日程
ザクセン=アンハルト州に続いて、チューリンゲン州やザクセン州でも州議会選挙が予定されている。いずれの州でもAfDは高い支持率を維持しており、ドイツ全体の政治地図が塗り替えられる可能性が現実のものとして議論されている。連邦政府が東部地域の経済振興や社会的分断の解消にどこまで本腰を入れられるかが、極右勢力封じ込めの鍵を握る。
日曜日の投開票は、ドイツ民主主義の強度を試す試金石となる。ジーグムント氏の言葉を借りれば「勝つことしかできない」というAfDの確信が現実のものとなるか、それとも既存政党が最後の砦を守るのか。結果は日本時間の月曜日未明には判明する見通しだ。