日本銀行は9月18〜19日に開催した金融政策決定会合において、政策金利を0.25%引き上げ、1.25%とすることを賛成多数で決定した。1995年以来、約31年ぶりの高水準となる。2024年3月のゼロ金利解除以降、おおむね半年に1回のペースで進めてきた利上げの間隔が、今回は前回(6月)から3カ月と大幅に短縮された。一方で、審議委員2人が反対票を投じており、全会一致で利上げを決めた先日の米連邦公開市場委員会(FOMC)とは対照的な結果となった。
日銀、31年ぶり高水準1.25%へ利上げ——反対票2票の内訳
今回の利上げに反対したのは、浅田統一郎審議委員と佐藤綾野審議委員の2氏である。浅田氏は、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率が2%を下回っている点を指摘。佐藤氏は、経済・物価情勢が大きく加速していないことを理由に挙げている。両氏とも、高市政権が任命した委員である点も注目される。
声明文では、物価の上振れリスクとして中東情勢、AI需要の拡大、円安進行の3点が、7月会合から引き続き提示された。企業間取引の価格上昇圧力については、7月の「波及していく可能性が高い」から「消費者段階に波及し始めている」へと表現が一段と進んだ。日銀は引き続き、情勢に応じて政策金利を引き上げる方針を明記している。
日銀は、経済の過熱も冷え込みも引き起こさない「中立金利」を1.1〜2.5%と推計している。今回の利上げにより、政策金利1.25%はその下限を上回ることとなり、金融政策のスタンスが徐々に中立圏へと移行しつつあることを示している。
決定後の市場反応——円下落、株高、原油は100ドル割れ
日銀の決定を受けた外国為替市場では、円相場が一時1ドル=157円台まで下落した。一方、日経平均株価は前日比882円高の65,018円と、6万5,000円台に乗せている。暗号資産(仮想通貨)のBTC(ビットコイン)も7万8,000ドル近辺まで上昇した。WTI原油先物は100ドルを割り込み、3日続落となるなど、資産ごとに異なる値動きを見せている。
市場参加者の間では、「日銀の利上げ自体は事前にある程度織り込まれていたが、審議委員の反対が予想以上に多かったこと、声明文で引き続き利上げを示唆したことなどが材料視された」との声が聞かれる。円売り・株買いの動きが並行した背景には、日銀の追加利上げ観測が後退したわけではないものの、米国との金利差が依然として大きいことに対する認識が根強いことがあるとみられる。
S&P500、日経平均、金、原油、BTC、ETH、SOL、XRPの週間パフォーマンス
週間での主要資産の値動きを確認しておく。S&P500は7,457〜7,515のレンジで小幅な下落。イラン情勢の緊迫化やAI関連株の調整が重しとなったが、決算シーズンの好業績が下支えし、週全体では大崩れを回避した。日経平均は66,796〜67,743円で下落。半導体株の調整が継続し下押し圧力がかかった。国内では金融商品取引法(金商法)の改正が成立したが、このポジティブ材料は来週以降に反映される可能性がある。
金(Gold)は4,017〜4,040ドル/オンスで保合い。CPIの鈍化でリスクオン転換が進む一方、地政学リスクによるプレミアムが一部残存し、4,000〜4,040ドル台での安定推移が続く。WTI原油は71〜82ドル/バレルのレンジで変動幅が大きい。ホルムズ海峡情勢の不安定さが供給懸念を高止まりさせている。
暗号資産では、BTCが62,782〜64,562ドルで保合い。64,000〜65,000ドル圏での攻防が続く。ETHは1,769〜1,919ドルで上昇。CPI鈍化によるリスクオンの流れに加え、Robinhood関連の材料が週前半に+3%の急騰をけん引した。SOLは75.68〜77.84ドルで保合い。SBIとの日本市場連携が注目材料であり、金商法の整備で国内取引所上場へのハードルが下がる可能性がある。XRPは1.065〜1.119ドルで保合い。EUのMiCA予備認可という既存材料に加え、日本の金商法整備が国内XRP市場の拡大を後押しする可能性が指摘されている。
WTI原油が100ドル割れ——サウジの供給懸念が後退
WTI原油先物は17日に一時99.10ドルと6日ぶりに100ドルを下回り、18日も99ドル台半ばで3日続落となっている。きっかけは、サウジアラビアがホルムズ海峡の外側にあたるオマーンの港からの原油供給を増やしているとの報道だ。
サウジでは、東西を結ぶ石油パイプラインが攻撃で停止。WTIは15日に一時106ドル台を付けていた。パイプラインについては、数日以内に輸送能力の半分ほどの回復を目指すと報じられているが、完全復旧には6週間ほどかかる見通しだ。供給懸念が引き続き価格の変動要因となる。
英中銀が量的引き締めを減速——市場は年内利上げを織り込み
イングランド銀行(英中銀)は17日、量的引き締め(QT)の計画見直しを発表した。年間の国債削減額はこれまでの700億ポンドから平均460億ポンドに縮小され、超長期債1,200億ポンド分は対象から外れる。市場での売却も当面停止される。発表を受けて英10年債・30年債の利回りは一時0.1%以上低下した。
同日の金融政策委員会(MPC)では政策金利が据え置かれたが、インフレへの警戒をにじませる内容で、年内利上げの織り込みは上昇している。日米欧の中銀がそろって引き締めに動くなか、その起点となっている原油高が和らぐかどうかが、10月のFOMCと日銀の次の一手を読む上での重要な材料となる。
今回の日銀の決定は、長らく続いた低金利時代の終焉を改めて印象づけると同時に、日本経済が物価上昇と金融引き締めの両面で新たな局面に入ったことを示している。今後の焦点は、日銀が示唆する「情勢に応じた追加利上げ」が実際にどのようなペースで実行されるのか、そしてそれが国内景気や企業収益にどのような影響を及ぼすのかにある。市場は、10月末の次回会合での動きをにらみながら、内外の経済指標や中東情勢の行方を注視することになる。