アルバムに何曲かの名曲が収録されている一方で、いつも飛ばしてしまうイマイチな曲も混ざっている——それでも、トータルで見れば素晴らしい一枚だと言えるのだろうか。この問いに対する答えの一つが、カプコンが送り出す最新ハックアンドスラッシュアクションゲーム『Onimusha: Way of the Sword』である。2006年の『新 鬼武者 DAWN OF DREAMS』以来、約18年ぶりとなるシリーズ完全新作。本作には、明確に欠点と映る部分が存在する。しかし、その欠点を遥かに凌駕する、天井知らずの高揚感がプレイヤーを待ち受けている。この”とんでもない浮き沈み”こそが、本作の最大の特徴であり、魅力でもあるのだ。
本稿では、本作のストーリー設定やゲームプレイの核心に迫りながら、その賛否両論を呼ぶであろう構成を、日本のゲーム文化に精通した編集部の視点から深掘りする。決して無難なレビューに留まらず、評価の分かれるポイントを正面から扱う。
『Onimusha: Way of the Sword』とは——約18年ぶりのシリーズ復活劇
『鬼武者』シリーズは、2001年の第一作発売以来、和風のダークファンタジー世界観とスタイリッシュな剣戟アクションで多くのファンを獲得してきた。しかし、2006年の『新 鬼武者』を最後に、長きにわたり新作は途絶えていた。そんな中、突如として発表された『Onimusha: Way of the Sword』は、シリーズの正当なナンバリングタイトルではなく、リブート(再起動)作品として位置づけられている。
本作は、日本の民間伝承や神話から大胆にインスピレーションを得ている点が特徴だ。主人公は、伝説の剣豪・宮本武蔵。その容姿は、故・三船敏郎氏のイメージをモデルとしており、重厚で、どこか影を帯びた風貌が物語に深みを与えている。
物語の始まり:主人公・武蔵、一匹の鬼として蘇る
時は江戸時代(1603年–1867年)の幕開け。武蔵は己の剣の腕を極めるべく、京の都を旅していた。ところが、現世と異界の境界を守る結界が弱まり始めたことで、シリーズおなじみの敵対存在である幻魔(げんま)の大群が、続々と現実世界へと侵入を開始する。武蔵はその幻魔の群れに襲われ、無惨にも切り倒され、地獄へと落ちてしまう。
しかし、そこで彼の運命は大きく転換する。謎の意志を持つ鬼(おに)から授けられた不思議な篭手の力によって、武蔵は鬼武者として復活を遂げるのだ。一体その鬼の目的は何なのか、そして武蔵はこの新たな力をどう扱うのか——物語はここから加速度的に動き出す。
圧倒的高揚感:欠点を忘れさせる瞬間の連続
本作の最大の魅力は、なんといってもその戦闘体験にある。序盤こそ手探り状態が続くものの、篭手の能力が解放され、武蔵が多彩なアクションを繰り出せるようになる中盤以降、その没入感は一気に高まる。
敵の群れを一掃する一振りの重み、見切り発動時の一瞬の静寂、そして怒涛の連続斬りによって画面全体が閃光に包まれるカタルシス。これらの瞬間は、まさに「ゲームだからこそ味わえる痛快さ」の極致と言える。この高揚感の前には、細かなテクニカルな不満や、一部の単調なステージ構成といった欠点が、驚くほど簡単に霞んでしまう。
しかし、この「欠点を忘れさせる力」こそが、本作を評価の難しい作品にしている理由でもある。
同時に存在する明らかな欠点——評価が分かれる理由
本稿では、本作の持つ”ダメな部分”についても正面から検討する。楽曲のアナロジーを用いるならば、飛ばしたくなるような曲が確かに存在するのだ。
戦闘以外のテンポの鈍さ
特に指摘されるのが、探索パートにおけるテンポの悪さだ。美しいビジュアルで描かれる京都の街並みは魅力的だが、移動中のアクションにやや単調さが感じられる場面がある。また、特定のギミックを解くための試行錯誤が、時にフラストレーションに変わることも否定できない。
カメラワークと操作感の課題
狭い屋内ステージや、敵に囲まれた状況でのカメラの挙動が、プレイヤーの意図しない方向を向いてしまうことがある。これはハックアンドスラッシュというジャンルにとって致命的なストレス要因になり得る。また、一部のアクションの入力受付にわずかなラグを感じる場面があり、高難易度でのプレイにおいては、これが大きなマイナスとして作用する。
これらの点は、決して無視できるレベルではない。しかし、それでもなお本作をプレイし続けたいと思わせるだけの”何か”が、確実に存在するのだ。
マーケットにおけるポジショニング:待望のリブートが持つ意味
本作がリリースされる現代のゲーム市場において、本格的な和風アクションゲームは、世界的に見てもニッチながら根強い需要がある。特に、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』や『Wo Long: Fallen Dynasty』などの成功以降、日本の歴史や神話をベースにしたダークファンタジーアクションへの注目度は高い。
カプコンとしては、『バイオハザード』シリーズのリブート成功や、『デビルメイクライ5』のヒットを経て、休眠IPの再起動に再び自信を持ったと見られる。本作はその象徴的なプロジェクトの一つであり、その成否は、今後のカプコンのIP戦略にも大きな影響を与えるだろう。
総評:名盤か、それとも駄作か——評価はあなた次第
『Onimusha: Way of the Sword』は、完璧なゲームではない。明らかな欠点がいくつも存在する。しかし、ゲームというエンターテインメントにおいて、完璧さだけが全てではない。プレイヤーに忘れられない体験を提供し、コントローラーを握る手を止めさせない”高揚感”——それこそが、本作の最大の武器である。
あなたがこのゲームに求めるものが、滑らかで死角のないシステムだけならば、不満が残るかもしれない。だが、もしあなたが、宮本武蔵として京の都を駆け、鬼の力を借りて幻魔の大群をなぎ倒す——そんな圧倒的な没入感と、エンターテインメントの熱量を求めているのであれば、本作はきっと、あなたにとっての”名盤”になるだろう。