米投資運用会社アークインベストの暗号資産リサーチディレクター、ロレンツォ・ヴァレンテ氏が2日、X(旧Twitter)に投稿した長文分析が暗号資産(仮想通貨)業界で大きな注目を集めている。同氏は、主要レイヤー1(L1)ブロックチェーンであるイーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)、そしてハイパーリキッド(HYPE)を、それぞれ異なるタイプのファストフードチェーンに例えるという独自の視点を提示。それぞれのブロックチェーンが持つビジネスモデルの本質的な違いを浮き彫りにした。この比喩は、単なる皮肉ではなく、各プロトコルの経済構造と持続可能性を理解する上で極めて示唆に富んでいる。なぜ今、L1ブロックチェーンがファストフードチェーンに例えられるのか。その分析の核心に迫る。
ヴァレンテ氏が示した3つのL1とファストフードチェーンの対応関係
ヴァレンテ氏の分析は、まず3つのブロックチェーンを特定のファストフードブランドに分類するところから始まる。イーサリアムは「マクドナルド」、ソラナは「シェイクシャック」、そしてハイパーリキッドは「ファイブガイズ」にそれぞれ例えられた。一見すると単なる洒落に思えるこの分類だが、その背後には各ブロックチェーンのトランザクション処理能力、手数料体系、そして何よりその収益構造に対する深い洞察が隠されている。
特に注目すべきは、イーサリアムが「マクドナルド」に例えられた点だ。マクドナルドが世界中に膨大な店舗網を持ちながら、1店舗あたりの利益率が極めて薄いビジネスモデルであるように、イーサリアムもまた、膨大な数のトランザクションを処理する一方で、そのバリデーターやステーカーに分配される手数料収入が極めて少ないという構造を指摘している。ヴァレンテ氏は、イーサリアムの「地代収益」、すなわちブロックチェーンがその基盤として提供する経済圏から得られる本質的な収益が、他のL1と比較して僅少であると強調する。
イーサリアムの「地代収益」はなぜ僅少なのか
この「地代収益」という概念は、ヴァレンテ氏の分析の要となる。ブロックチェーンにおいて「地代」とは、ネットワークを利用するためにユーザーが支払う手数料のうち、基盤プロトコル自体に還元される部分を指す。イーサリアムはL2ソリューションへの移行を積極的に推進しており、多くのトランザクションがL2で処理されるようになった。その結果、L1であるイーサリアムメインネットの手数料収入は相対的に減少している。
具体的には、イーサリアムのL1手数料収入は、ソラナやハイパーリキッドと比較しても低い水準にあるとされる。これは、マクドナルドがフランチャイズオーナーに利益の多くを委ね、本体が受け取るロイヤリティ収入が限定的である構図に酷似している。ヴァレンテ氏は、この構造がイーサリアムの長期的な価値蓄積に対する根本的な課題であると指摘する。優れたプラットフォームでありながら、その経済的価値の多くを上位レイヤー(L2やアプリケーション)に奪われているというジレンマを抱えているのだ。
ソラナとハイパーリキッド、異なる収益構造
一方、ソラナは「シェイクシャック」に例えられた。シェイクシャックが高品質な商品を比較的高価格で提供し、限定的な店舗展開で高い収益性を維持するプレミアムファストフードであるように、ソラナもまた、そのハイパフォーマンスなネットワークを活かし、1トランザクションあたりの手数料は低いものの、その処理量の多さとエコシステムの活性度によって安定した収益を生み出している。シェイクシャックが「マクドナルドより美味しい」と評価されるように、ソラナはその高速性と低コストで多くのユーザーを獲得し、独自の経済圏を形成している。
そして、ハイパーリキッド(HYPE)は「ファイブガイズ」に例えられた。ファイブガイズが、カスタマイズ可能なプレミアムバーガーを提供し、1店舗あたりの売上高が非常に高いビジネスモデルであるように、ハイパーリキッドもまた、そのプラットフォーム上で行われる取引から高い手数料収入を得る構造を持っている。ヴァレンテ氏は、ハイパーリキッドが他のL1と比較して、発行済みトークン(時価総額)に対する日次手数料収入の比率が非常に高いことを指摘。これは、プラットフォームの経済活動が直接的にプロトコルの収益に結びついていることを示しており、言わば「一人当たりの客単価が高い」ファストフードチェーンに例えられる所以である。
ファストフードの比喩が示すL1ビジネスモデルの本質
このファストフードチェーンの比喩は、単に収益の大小を比較しているだけではない。各チェーンのビジネスモデルの「持続可能性」と「成長戦略」の違いを浮き彫りにしている。マクドナルド(イーサリアム)は、スケールメリットとブランド力で圧倒的な市場シェアを誇るが、その収益構造は薄利多売であり、新たな競合が出現した際のリスクや、上位レイヤーへの価値流出という構造的な課題を抱える。
シェイクシャック(ソラナ)は、品質とブランドで差別化し、効率的な運営で利益を上げるバランス型だ。そしてファイブガイズ(ハイパーリキッド)は、特定の高付加価値サービスに特化し、高い収益性を追求するニッチ戦略とも言える。ヴァレンテ氏の分析は、これらのビジネスモデルの違いが、トークン価格の変動やネットワークの長期的な発展にどのような影響を与えるかという、投資家視点の問いを投げかけている。
市場への示唆と今後の展望
ヴァレンテ氏の分析は、暗号資産市場において、単なる技術比較や価格予測ではなく、プロトコルの「経済モデル」に注目することの重要性を改めて示した。特に、イーサリアムの地代収益の低さは、同ネットワークのセキュリティ維持や長期的な価値向上に対する潜在的な課題として、今後も議論の的となりそうだ。一方で、ソラナやハイパーリキッドのように、より直接的に収益を生み出す構造を持つL1プロトコルへの関心は、一段と高まる可能性がある。
今後の暗号資産市場において、投資家は単なるチェーンの取引速度やエコシステムの規模だけでなく、そのプロトコルがどのように価値を生み出し、トークンホルダーに還元するのかという「ビジネスモデル」そのものを、より厳密に評価する時代に入ったと言える。ファストフードチェーンという身近な例えを用いたヴァレンテ氏の分析は、複雑なブロックチェーンの経済学を直感的に理解させるだけでなく、各プロトコルの未来図を描く上での重要な視点を提供している。この議論が、今後のL1間の競争にどのような影響を与えるのか、引き続き注目が集まる。