ナスダック(Nasdaq)は、暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケン(Kraken)の親会社であるPaywardに対し、1億ドル(約150億円)の出資を行うと発表した。この大型出資は、ナスダックが得意とする市場監視技術を、クラーケンが運営する複数の取引市場に展開する計画の一環として位置づけられている。仮想通貨市場と伝統的な金融市場のさらなる融合が進む中、規制の枠組みをめぐる議論も活発化している。
ナスダック、クラーケン親会社へ1億ドル出資——監視技術を複数市場に展開へ
今回の出資により、ナスダックの監視技術は、クラーケンが取り扱う現物の暗号資産に加え、株式、トークン化された株式、先物、オプションといった多様な金融商品の市場に適用される見通しだ。しかし、具体的な導入時期や、原資産となる米国現物株式の注文・約定データとの照合を実施するかどうかについては、現時点では明らかにされていない。
ナスダックとPaywardは、トークン化証券の分野でも協業を進めている。2026年3月18日には、ナスダックのトークン化証券が米証券取引委員会(SEC)の承認を取得したものの、DTC(Depository Trust Company)の基盤整備や会員向けの30日前通知などの条件が残っており、取引開始には至っていない。両社が協力して進めるNasdaq Equity Tokensのローンチ目標は2027年第2四半期に設定されている。
規制当局間の管轄争い——SECとCFTCの立場の違い
この動きと前後して、金融業界では規制の枠組みをめぐる動きが活発化している。大手市場メーカーのシタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)は、9月9日付の意見書をSECに提出。上場企業の株式や財務指標を参照する金融商品について、SECの管轄下に留めるよう求めた。同社は、株式連動型商品の監督には原資産市場との一体的な監視が不可欠だと主張している。
一方で、商品先物取引委員会(CFTC)の規制下では、より柔軟な商品上場が可能な状況にある。CFTC規則40.2は、指定契約市場が前営業日までに自己認証を届け出れば、事前承認なしに新商品を上場することを認めている。これに対し、SEC側ではCboeの二者択一型オプションやMEMXの証券イベント契約が、規則変更案として審議されている。
CFTCは2026年5月29日、ビットコインを参照するKalshiEXの永久先物「BTCPERP」を規則40.3に基づき承認した。しかし、株式連動型の永久先物(Perpetual Futures)の扱いは未確定のままであり、今後の規制動向が注目される。
トークン化証券の現状と今後の展望
ナスダックによるトークン化証券の取り組みは、伝統的な金融市場と暗号資産市場の橋渡し役として期待されている。しかし、SECの承認を得た後も、DTCの決済基盤の整備や参加金融機関への周知期間が必要となるなど、実際の取引開始までにはハードルが残されている。
こうした状況を受け、SECは9月17日に円卓会議を開催。関係者間での意見交換を行ったが、具体的な分類や規制の方向性については、結論を出すには至らなかった。同会議は論点を整理する場にとどまり、今後の議論の継続が示唆されている。
ナスダックによるPaywardへの戦略的出資は、市場監視の高度化とトークン化証券の実用化という2つの側面から、金融市場の未来を形作る重要な一歩といえる。規制の枠組みが整備されるまでの間、両社の協業の進展と、SECとCFTCの間での調整がどのように進むのか、引き続き注視する必要がある。