ビットコインは新たな強気相場の前触れとなる買い場を迎えている可能性がある。8万ドルを割り込んだ現状は、市場に悲観的な見方が広がるなかで、むしろ強気に転換するための複数の材料が育ちつつある局面と捉えられる。AI関連資産からの資金分散、規制整備による再評価、そしてDeFi(分散型金融)の利用拡大――これら3つの論点が、ビットコインの次の上昇を支える可能性がある。本記事では、現在の調整局面を「最後の買い時」と見るべきかどうか、その根拠を詳しく検証する。
金利ショックが生んだ一時的な売り場
足元の下落の直接的な引き金は、金融引き締めへの警戒感である。9月4日に発表された米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比16万2,000人増加し、市場予想(約5万人増)の約3倍に達した。この予想外の強い労働市場を受けて、ビットコインは8万ドルを割り込み、一時7万8,660ドルまで下落した。予測市場Polymarketでは、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げが実施される確率が一時59%へ上昇。市場は利下げ期待から一転し、金融引き締めの再開を警戒する局面へと移行している。
だが、こうした金利主導の下落が、結果的に買い場となるかどうかは別の問題である。短期的な金利ショックを乗り越えた先に、どのような価格上昇要因が待っているのか。以下の3つの論点がその判断の鍵を握る。
論点1:AI偏重からの資金シフト──暗号資産への再評価機会
第一の論点は、AI関連資産と暗号資産の間で起こり得る資金配分の見直しだ。AI関連株への期待は、企業収益の成長や数千億ドル規模のインフラ投資によって支えられている。一方、ビットコインの値動きは市場全体の流動性や投資家のリスク選好に大きく依存する。両者の上昇要因が異なる以上、AIへの投資が継続するなかでも、暗号資産の上昇率がAI株を大きく上回る局面は十分に想定できる。
ただし、AI株の下落がそのまま暗号資産への資金流入を意味するわけではない。金利や流動性の変化はどちらの市場にも等しく影響を与える。強気シナリオの核心は、AI相場の崩壊ではなく、投資家の関心や投機熱が相対的に薄れていた暗号資産が、あらためて評価されることにある。市場のリスク選好が高まるタイミングで、資金がAIから暗号資産へとシフトする可能性は十分にある。
論点2:規制の明確化が促す「前提の見直し」
第二の論点として注目されるのは、米国における暗号資産市場のルール整備を目的としたCLARITY法案の行方だ。Milk Roadのジョン・ギレン氏は、Polymarketが織り込む同法案の成立確率を約10〜15%と紹介する一方、自身の見積もりは約50%としている。この差は成立の確実性を示すものではなく、市場参加者と強気派の見立ての隔たりを表している。
市場の低い期待を覆す形で法案が成立すれば、投資家は評価の前提を根本から見直すことになる。規制の不透明感が払拭されることで、機関投資家の参入障壁が低くなり、価格の急速な上昇を引き起こす可能性がある。現時点では市場が織り込んでいないこの「サプライズ」が、買い場を支える材料の一つとなり得る。
論点3:DeFiのユースケース拡大が生む独自の需要
第三の論点は、DeFi領域におけるサービスの利用拡大が、暗号資産への独自の需要を創出している点だ。ギレン氏がUniswapへの投資理由に挙げたのは、Robinhood経由の取引増加と、トークンの買い戻し・焼却メカニズムの存在だった。ビットコインの上昇に連動するだけでなく、サービスの利用そのものが独自の買い材料になるという視点である。
実際に、Robinhoodの周辺では取引が活発化している。同社が開発するレイヤー2「Robinhood Chain」では9月上旬、ミームコインを中心に24時間のDEX取引高が16.8億ドルに達し、イーサリアムの15.6億ドルを上回った。また、トークン発行プラットフォーム「Pons」では、8月中旬からの約半月で約47万種類のトークンが新たに発行されている。投機色の強い動きではあるものの、暗号資産取引への需要そのものが膨らんでいることは、サービス利用拡大の観点から見逃せない。
ギレン氏はAerodromeのトークン(AERO)にも、定例の投資額500ドルに加え、手元資金から1,000ドルを上乗せした計1,500ドルを投じている。その理由として、Coinbaseのトークン化株式向け流動性提供と、Velodromeとの統合への期待を挙げている。市場全体の調整を警戒しながらも、成長材料の明確な銘柄には資金を振り向ける姿勢が読み取れる。
ただし、こうしたDeFiの成長が直接ビットコインの買い需要に直結するわけではない。また、暗号資産を売却せず担保として借り入れを行い、課税を繰り延べる手法の広がりが、DeFiにおける債務不履行のリスクを押し上げているとの学術研究も存在する。利用拡大とともにレバレッジに伴うリスクも高まっている点には注意が必要だ。それでも、暗号資産への投資を再検討する理由が、単なる値上がり期待以外にも広がっていることは重要な変化である。
「最後の買い時」を見極める日程と価格
買いのタイミングを考えるうえでは、9月の経済指標と金融政策の日程が具体的な手がかりとなる。9月11日に発表される米消費者物価指数(CPI)と、9月15〜16日のFOMCを経て、今後の金利の方向性が見えやすくなる。さらに、9月30日にはFRBが重視するPCE(個人消費支出)物価指数の年次改定が控えている。物価上昇の鈍化が確認されれば、利上げ観測やドル高による価格への下押し圧力が和らぐ可能性がある。
もう一つ見落とせないのが、8月のビットコイン上昇(月間約25%高)を支えた材料がいつまで続くかである。米財務省による国債買い戻しの増額枠は11月4日までで、その後の規模は同日に発表される四半期入札計画で改めて示される。国債買い戻しの増額が継続されるかは今後の発表次第であり、秋の相場ではこの流動性供給による下支えが弱まる可能性も考慮しておく必要がある。
価格面では、7万4,000〜7万5,000ドルまで調整した場合に、前回の安値を上回る水準で下げ止まれるかが焦点となる。その後、8万3,000ドルを回復し、同水準を支持線として維持できるかどうかが、強気転換を確認するうえでの判断軸になる。「最後の買い時」と呼べるかどうかは、下落の深さだけでなく、資金回帰を促す材料と相場の底堅さがそろうかにかかっていると言えるだろう。
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