米ドル/円相場は、7月の高値164円をピークに下落基調を強めており、市場ではさらなる円高進行への警戒感が高まっている。投機筋の間では依然として円売りポジションが積み上がっているものの、複数の分析機関が今後数カ月のうちに142~146円程度まで下落する可能性を指摘。7月高値から20~22円の下落が見込まれる状況だ。
米ドル/円、153円割れと投機筋の立ち位置
米ドル/円は9月初頭、一時153円の大台を割り込み、年初来安値を更新する場面が見られた。この下落局面においても、ヘッジファンドをはじめとする投機筋の多くは押し目買い、すなわち円売りの好機と捉えている模様だ。米財務長官が「私が胴元だ」と発言し、円安をけん制したことも物議を醸しているが、市場では「政府の介入は効果が限定的」「財務長官の発言で相場は動かない」という見方が支配的であり、円安が構造的・宿命的であるとの認識が広がっている。
しかし、筆者はこのようなコンセンサスこそが、歴史的な転換点を示唆していると見る。相場の歴史において、大きな転換点では常に少数派の見方が正解となってきた例は枚挙にいとまがない。大多数が円安継続を信じる局面だからこそ、筆者はさらなる円高進行を確信している。
円高ターゲット142~146円、JPモルガンも同水準を指摘
では、円高はどこまで進むのか。目先の動きとしては、再度153円を割り込むかどうか、その後150円の心理的節目を維持できるかが焦点となる。しかし、筆者は前回のコラムでより大きなターゲットとして142~146円を提示した。
興味深いことに、JPモルガンも同時期にまったく同じターゲットを示している。同社は、投機筋の円売りポジションが16兆~17兆円残っていると推計。このポジションが完全に巻き戻された場合、理論上ドル・円は142~146円まで下落する可能性があると指摘した。
ただし、筆者の見解とJPモルガンの間には決定的な違いがあった。JPモルガンはこの水準をあくまで「サプライズシナリオ」として位置づけ、基本想定レンジは155~165円としていた。一方、筆者は一貫して円安の行き過ぎを指摘してきており、この下落シナリオを確実視している点が異なる。
過去のパターンから見た20~22円下落の必然性
よりシンプルで説得力のある根拠として、過去の月足チャートのパターン分析が挙げられる。米ドル/円の月足を見ると、7月は大陰線で頭打ちを示した。過去の例では、月足が陰線で頭打ちを形成した後、いずれも大きな下落が実現している。
直近の例を時系列で見てみよう。2025年1月高値158.89円から同年4月安値139.88円までは約19円の下落。2024年7月高値161.95円から同年9月安値139.57円までは約22円の下落。2022年11月高値148.83円から2023年1月安値127.22円までも約22円の下落に近い数字だ。これらの下落はすべて3~4カ月以内に達成されている。
今年2026年の7月高値は164円だった。仮に平均20~22円の下落幅を適用し、期間を4カ月と想定すれば、誰でも142~146円というターゲットを算出できる。日米金利差やファンダメンタルズ分析も重要だが、このような前例に基づく計算は、より直感的でわかりやすい。
なぜ142~146円は必然か、転換点における少数派の論理
相場は複雑でありながらもシンプルだ。複雑に考えれば無限に複雑になるが、シンプルに捉えればごく単純な構造が見えてくる。筆者がシンプルさを重視するのは、風見鶏のようにその時々の市場の雰囲気に流される解釈を避けるためである。
今、市場では「円安は構造的だ」「日本は金利を上げられない」という論調が強い。しかし、歴史的な転換点において、このようなコンセンサスが覆された例は数多い。投機筋の円売りポジションが16兆~17兆円という巨額の規模で残っていること自体、これが巻き戻される過程で相場が大きく動く可能性を示唆している。
2026年10月いっぱいは、強い円高の進行を警戒すべき時期である。米ドル/円の142~146円というターゲットは、もはや仮説ではなく、現実的なシナリオとして捉えるべきだろう。次の注目ポイントは、153円のサポートを再び割り込むかどうか、そして150円の大台を巡る攻防である。