高市早苗首相による台湾発言を受けて冷却化が進む日中関係。その修復に向けた第一歩として、超党派の国会議員で構成される訪中団が月曜日に中国へ出発しました。与党・自由民主党の議員1名と野党議員2名から成る同団は、中国共産党の幹部らとの会談を予定しており、断絶状態にある政治対話の再開を模索します。
今回の訪中は、昨年11月に高市首相が「台湾有事」への自衛隊の関与の可能性に言及したことが発端となっています。北京は台湾を自国の領土と主張しており、この発言に猛反発。その後、中国は日本への渡航警告を発出し、日本企業向けのレアアース(希土類)供給に大幅な減少が生じたと報じられるなど、経済面にも影響が及んでいます。外務当局者間の接触すらままならない状況下で、今回の議員外交が今後の関係改善の糸口となるか、注目が集まっています。
なぜ今、議員派遣なのか――高市発言が招いた中国との緊張
高市首相は昨年11月の講演で、台湾海峡で武力紛争が発生した場合、日本が軍事介入する可能性を示唆しました。この発言は、中国が一貫して主張する「一つの中国」原則に真っ向から反するものとして、中国政府から強い非難を浴びました。事態を重く見た中国は、自国民に対する日本への渡航自粛要請に加え、半導体やハイテク産業に不可欠なレアアースの輸出規制を強化。日本の関連企業は供給網の脆弱性に直面することとなりました。
こうした背景から、政治・経済両面での関係立て直しが急務となっています。昨年7月には日本の外務大臣がマニラで開催された地域外相会合の場を借りて中国の外相と会談し「二国間関係」について協議したと説明しましたが、中国外務省報道官は後にこの会談自体を否定する異例の事態も発生。両国間の不信感の深さが浮き彫りとなっています。
そんな中、今回訪中したのは、超党派の「日中友好議員連盟」に所属する国会議員たちです。メンバーは、自民党の橋本岳・衆議院議員と、野党・中道改革連盟の広報責任者を務める伊佐進一・衆議院議員ら3名。橋本議員は先月、単独で北京を訪問し、華春瑩・中国外交部副部長と会談していたことが今月、共同通信の報道で明らかになっています。当時、橋本氏は日本国际贸易促進協会の会長代行として訪中しており、今回は正式な議員団としての派遣となります。
今回の訪中の目的は何か
今回の訪中団の最大の目的は、政治レベルでの対話の窓口を開くことです。伊佐議員は出発前、「現在、すべてのルートが遮断されている状況において、何とか対話の糸口をつかむ機会にしたい」と報道陣に語っています。彼らは北京で数日間滞在し、中国共産党の対外交流部門である中共中央対外連絡部の幹部らとの会談を調整しているとみられます。具体的な合意や成果よりも、まずは「対話」そのものを再開させることに主眼が置かれていると言えるでしょう。
橋本岳議員と日本国际贸易促進協会の動き
今回の訪中団の中心人物の一人である橋本岳氏は、故・橋本龍太郎元首相の次男であり、これまでも日中間の経済・貿易分野でのパイプ役を務めてきました。日本国际贸易促進協会の会長代行を経て、現在は元外務大臣の岩屋毅氏が同協会の新たな会長に就任。岩屋氏は今年9月下旬にも訪中団を率いて北京を訪問する予定であることが、共同通信の報道で伝えられています。
また、経済界にも動きがあります。関西経済連合会のメンバーを含む約80人の企業関係者が、11月下旬から12月にかけて中国を訪問する計画を進めていることも明らかになっています。政治対話の停滞がビジネス環境に与える悪影響を懸念し、経済ルートから関係修復を後押ししようとする動きが活発化しているのです。
今後の展望:対話再開への道筋は
今回の議員外交が、現在の厳しい日中関係の打開にどこまで貢献できるかは未知数です。中国政府は高市首相の台湾発言以降、首脳レベルや外相レベルでの公式な会談を回避しており、議員団との会談が認められたとしても、直ちに関係が正常化するとは考えにくいでしょう。
しかし、橋本議員が先月実現させた華副部長との会談は、水面下での接触が完全に途絶えているわけではないことを示しています。今回の訪中で、議員団が中国側からどのようなメッセージを受け取るのか、またそれが今後の岩屋氏や経済使節団の訪中にどうつながるのかが、当面の焦点となります。
政治的な緊張が続く中でも、経済的な相互依存関係は無視できません。日本企業にとって中国市場は依然として重要であり、レアアースや重要鉱物の安定供給の確保は国家的な課題です。今回の議員派遣が、冷え切った両国関係に少しでも温もりをもたらす「小さな一歩」となるのか、その行方が注視されます。