資金難で60年以上の歴史に幕が下りるかと思われた米コロラド州のキバラマーモット追跡調査が、ソラナ(Solana)のミームコインによって存続の道を開いた。米国立科学財団(NSF)が2026年5月下旬に継続助成を却下したことで、11世代・2,196頭にわたる世界最長級の野生哺乳類研究が中断の危機に直面していたが、第三者が発行したトークン「$OnlyMarms」のクリエイター手数料が研究資金として流入。8月時点で15万ドル超の支援が集まり、年間7万5,000〜10万ドルとされる運営費の一部を賄える見通しとなった。
この研究は1962年から個体識別を継続し、血統に基づく社会行動学の貴重なデータを蓄積してきた。NSFの不承認によりフィールドワークが打ち切られる可能性が浮上したことを受け、研究チームはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のダニエル・ブルームスタイン教授が提案した「OnlyFans」アカウントを開設。大学院生エミリー・レンキー氏がほぼ毎日、現地映像と解説を無料で配信する形で投げ銭を募った。最初の数カ月で約6,000ドルが集まったが、ラボ全体の維持費には遠く及ばなかった。
転機は研究チームの外部から訪れた。第三者のグループがPump.fun上で「$OnlyMarms」を発行し、発行時に発生するクリエイター手数料をマーモット研究に充てる設計にしたのだ。トークンは7月25日に流動性プールが立ち上がり、最初の3日間で約2万5,000ドル、2週間で約8万8,000ドルが積み上がった。研究チームは事後的にクリエイター登録を行い、ラボ管理のウォレットに入る手数料を寄付として受け取る仕組みを整えた。トークンの発行や配分、価格変動には一切関与しておらず、投機的な値上がり期待に研究サイドが加担していない点が重要だ。
ミームコインがもたらした資金規模と現実
8月時点の累計寄付額は15万ドルを超え、OnlyFansの投げ銭収入の約25倍に達した。ただし、この資金はトークン取引が継続している間だけ流入する構造であり、恒久的な財源ではない。$OnlyMarmsは8月4日に0.0036ドルの最高値を記録した後、約6割下落して0.0014ドル前後で推移している。
長期縦断研究に必要なのは、毎年決まった時期に訓練された人員を確実に確保できる予算だ。投機的な取引が公共目的へ資金を流す今回の仕組みは、研究チームにとって「もう1シーズン分の時間を買う」手段として機能していると見られる。NSFへの再申請や他の助成金獲得に向けた猶予を得たという側面が強い。
ミームコインが研究資金を救う新たなモデルか
暗号資産を活用したクラウドファンディングはこれまでも存在したが、トークンの投機的需要を研究支援に直接結びつけた事例は珍しい。クリエイター手数料という間接的な寄付経路により、研究チームは価格操作のリスクや規制上の問題から距離を置きながら、市場メカニズムからの資金流入を受けることができている。
ただし、このモデルが他の研究機関や公共プロジェクトに汎用できるかは不透明だ。$OnlyMarmsのケースでは、60年以上続くマーモット研究という学術的ストーリーがトークンの魅力を補強した。単なる投機対象を超えて、応援したい研究テーマとトークン購入が結びつく「共感の経済圏」が成立したからこそ、一定の資金が集まったと考えられる。
投機と公共目的の接合——持続性への課題
トークン価格が下落トレンドにある現状を踏まえると、今後の資金流入ペースは鈍化する可能性が高い。長期的な研究維持には、ミームコインによる即効性のある資金調達と並行して、従来型の助成金や寄付による安定した基盤を築く必要がある。
それでも、今回の取り組みは「資金難に陥った学術プロジェクトが、ブロックチェーン上の投機的需要を現実の研究継続に転用した先駆的事例」として注目される。ソラナのエコシステムが持つ低手数料と高速トランザクションの特性が、少額の投機資金を効率的に集めるプラットフォームとして機能した点も見逃せない。
キバラマーモットの研究はこれからも続く。ミームコインの熱狂が去った後も、フィールドに立つ研究者たちが得た「もうひと夏」の時間が、次なる資金源の確保につながるかどうか。暗号資産と公共研究の新しい関係性を問う実例として、引き続き注視したい。