米上院共和党が公開した暗号資産(仮想通貨)市場のルールを明確化する「CLARITY法案」の修正案により、分散型金融(DeFi)の運営に実質的な支配力を持つ者に対する規制の線引きが進むことになりました。630ページに及ぶこの修正案は、サービスの名称ではなく、運営主体の権限や実際の業務内容に基づいて規制を適用する枠組みを提示しており、市場に大きな影響を与える可能性があります。
実質的な「支配者」をどう定義するか
今回の修正案の核心は、DeFiと称するサービスであっても、その運営に対して実質的な支配力を行使できる人物や集団を特定し、既存の金融規制を適用する点にあります。具体的には、管理者がサービスの重要な機能を変更できるか、利用者のアクセスを制限できるか、あるいは取引が事前に公開されたプログラムだけで自動処理されているかなど、複数の観点から判断される仕組みです。
一方で、ソフトウェアや分散型台帳そのものに登録を義務付けることはなく、事故対応やセキュリティ対策のための組織に参加しているだけでは「支配している」とは見なさない規定も盛り込まれています。このバランス設計は、分散型の理念と実社会の規制を調和させるための苦心の跡と見ることができます。
米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の役割分担も整理され、暗号資産市場に対する監督の枠組みがより明確になりました。上院では現地時間9月15日に法案審議のための手続き上の採決が予定されており、通過には60票が必要とされています。
拡大するDeFi市場、規制の線引きが急務に
法案がDeFiの扱いに踏み込んだ背景には、この市場の急速な拡大があります。DeFi最大手の貸付サービスであるAaveの預かり資産は170億ドルを超え、同じく貸付サービスのMorphoも直近1カ月で預かり資産を2割以上増やしました。
注目すべきは、2020~2021年のブームが高利回りを目的とした投機的な資金に支えられていたのに対し、現在はステーブルコインやトークン化された株式といった、より伝統的な金融資産が流入している点です。株式のトークン化はすでに一定の規模に達しており、9月10日時点での残高は約29億ドル、保有者は300万人を超えています。
直近では、Nasdaqが暗号資産取引所Krakenの親会社に1億ドルを投資し、上場株のトークン化を本格化させています。また、米証券決済大手のDTCCも10月に本番サービスを控えており、トークン化された株式の増加に伴い、それらを売買する取引所や担保とする貸付の受け皿として、DeFiの重要性はさらに高まると見られます。
「分散型」という名と実態の乖離
既存金融の資金が流入するほど、「分散型」という名称と実態の乖離が問われることになります。2026年に行われたイーサリアム上の主要48のDAO(分散型自律組織)を分析した研究では、上位10の保有者が投票権の過半数を握る組織が39に上りました。名目上の分散とは裏腹に、少数の大規模保有者による実質的な支配が進行している実態が浮き彫りになっています。
今回の修正案が名称ではなく権限の所在で規制の線引きをする構成を採用したのは、こうした実態を踏まえたものと考えるのが自然でしょう。暗号資産市場は米国の動向に大きな影響を受ける傾向が強く、同法案の行方は世界中のDeFiプロジェクトや投資家にとって極めて重要な先行指標となります。