ビットコイン(BTC)の対円相場が、心理的節目である1300万円の大台目前で上値の重い展開を見せている。28日正午時点で1270万円前後に位置しており、先週からの急伸基調に一服感が漂う。市場関係者の間では、目先の焦点は今週開催される米カンザスシティ連銀a主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)後の米国債イールドカーブ(利回り曲線)の動向に移っている。この半年で最も重要なマクロ経済イベントを前に、投資家はポジション調整を余儀なくされている。
米国債買い戻しが引き起こした急騰と調整局面
先週のビットコイン相場は、米財務省による長期国債買い戻し(バイバック)の規模拡大発表を強力な触媒として、1000万円台前半から1260万円台へと急伸した。この動きは、米国債市場における需給改善期待から長期金利が低下し、相対的なリスク資産としての暗号資産(仮想通貨)に資金が流入した構図だ。しかし週末にかけては一時1230万円台まで押し戻される場面も見られ、高値圏での利益確定売りに加え、ジャクソンホールを前にした様子見姿勢が広がった。
ここで注目されるのは、買い戻しの原資が財務省一般会計から拠出されている点だ。この仕組みは事実上の資金供給と受け取られやすく、市場に過剰な流動性をもたらす可能性がある。その結果、株式市場や暗号資産市場は短期的に大きく反応した。しかし、中長期的な視点では、この政策がFRB(米連邦準備制度理事会)の金融引き締めスタンスとどのように整合性を持たせるのかが疑問視されている。
なぜビットコインは1300万円の壁を突破できないのか
現時点でビットコインが1300万円を目前にして伸び悩む最大の要因は、金利観の不透明感にある。ジャクソンホール会議では、パウエルFRB議長が講演で今後の金融政策の基本方針を示すとみられている。市場が特に注目するのは、利下げ開始時期に関する具体的な言及と、長期的な中立金利(R-star)に関する見解だ。
具体的には、長期金利の指標である10年物国債利回りと短期金利の差(イールドカーブ)が再びスティープ化するのか、それともフラットな状態が続くのかが焦点となる。スティープ化は経済成長期待の高まりを示唆する一方で、FRBが金融緩和に慎重になる可能性もはらむ。こうした不透明なマクロ環境下では、ビットコインのようなボラティリティの高い資産に対して、積極的な買い上がりは期待しにくい。
イールドカーブの逆転解消が示すシグナル
現在の米国債市場では、2年物と10年物の利回り差(逆イールド)が急速に縮小している。過去のパターンからすれば、この逆転が解消に向かう局面はしばしば景気後退入りと重なる。仮にジャクソンホール後のイールドカーブが急激に正常化(逆転解消)に向かう場合、それは市場が近い将来の利下げを織り込み始めたことを意味する。
このシナリオはビットコインにとって短期的にはポジティブ材料となり得る。なぜなら、利下げはドル安とリスクオン志向を強めるからだ。しかし、同時にそれが景気後退懸念に根差した「悪い利下げ」である場合、安全資産への逃避が強まり、ビットコインを含むリスク資産全体が売られる可能性も否定できない。市場はこの複雑なシナリオを巡り、神経質な値動きを続けている。
機関投資家の動向に見る強気と慎重の狭間
直近のオンチェーンデータからは、長期保有者層(ロングタームホルダー)の間では供給が逼迫しつつある兆候が確認されている。これは価格の下値を支える要因となる。一方で、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物市場では、大口投機筋のネットロングポジションが高水準で推移しており、上昇を期待する向きが依然として多い。
だが、そのポジションの多くがジャクソンホール後の金利ショックに備えたヘッジを伴っている可能性が指摘されている。つまり、表面上の強気ポジションの裏側では、大きな方向感が出るまでは様子を見るという慎重な姿勢が透けて見える。この綱引き状態が、1300万円手前での膠着感を生み出していると分析できる。
今週の注目ポイントと1300万円突破の条件
ビットコインが再び上昇モメンタムを取り戻すには、以下の2つの条件が満たされる必要があると考えられる。
- 第一に、ジャクソンホール会議でパウエル議長が明確な緩和シグナルを発信すること。具体的には、9月のFOMCでの利下げ開始を示唆する何らかのフレージングが求められる。これにより長期金利が抑制されれば、再びビットコインに資金が向かうとみられる。
- 第二に、1300万円(約8万8000ドル)のレジスタンスラインを出来高を伴ってブレイクすること。現状の1270万円付近は、過去数カ月の安値と高値の中間点にあたり、テクニカル的にも重要な節目となっている。この水準を明確に上抜けなければ、調整局面が長期化するリスクがある。
逆に、ジャクソンホールでタカ派的なスタンスが確認されれば、再び1000万円台後半までの調整も視野に入れるべきだろう。イールドカーブの動向は、単に債券市場の話題に留まらず、ビットコインを含む全てのリスク資産の命運を左右する鍵を握っている。今週後半にかけては、一貫性のない方向感に振り回されないよう、ポジション管理を徹底することが投資家にとって最も重要となる局面と言える。