Meta(旧Facebook)が運営するSNSプラットフォームを巡り、子どもの安全対策をめぐる集団訴訟が新たな局面を迎えている。2026年8月現在、米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所において、29の州司法長官が原告となった民事裁判が係争中だ。原告側は、Metaが13歳未満の子どもの個人情報を保護者の同意なく収集し、連邦法「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)」に違反したと主張。さらに、自社プラットフォームの安全性やデータ取り扱いに関して消費者を欺く説明を行ったとも訴えている。
この訴訟は、Metaを巡る一連の子ども安全関連の法的紛争の中でも特に大規模なものだ。同社は今年に入り、複数の裁判で厳しい判決を受けている。3月にはカリフォルニア州で争われた別のソーシャルメディア訴訟において、陪審がMetaとYouTubeに対し、アプリの設計機能が若年ユーザーに害を及ぼしたとして法的責任を認定。そして8月上旬には、ニューメキシコ州でMetaのサービスが公的不法妨害に当たるとして、9億4,000万ドル(約1,495億円)超の支払いが命じられた。これらの判決は、大手プラットフォームに対する規制の流れを大きく変える可能性を秘めている。
29州司法長官が追及するメタの「子どもの依存」戦略
今回の裁判の原告は、カリフォルニア州、コロラド州、ケンタッキー州、ニュージャージー州の4州が主導し、合計29州の司法長官が名を連ねている。焦点となっているのはMetaが運営するFacebookとInstagramだ。司法長官らは、Metaが意図的に子どもをプラットフォームに依存させ、その過程でCOPPAに違反する形で個人データを収集したと主張している。
特に重要なのは、Metaがプラットフォーム内に多数の「没入型機能」を実装し、若年ユーザーの利用時間を最大化する設計を採用していたという点だ。原告側の冒頭陳述に立ったカリフォルニア州司法省のメーガン・オニール司法次官補は、「どれだけ多くの機能が、単独でまた相互に作用しながら利用者をアプリに引き込み、より長くとどまらせているのか」を陪審に示すと強調。Metaはこれらの機能を「子どもたちをアプリへ引き込み、繰り返し利用させる」ために活用してきたと批判した。
一方、Meta側の主任弁護士ポール・シュミットは、同社がこれまでに数十もの子どもの安全機能を導入してきたと反論。今後もアプリ改善を継続する姿勢を示す一方で、利用者側にも一定の責任があるとの見方を示した。具体的には、一部の子どもやティーンエイジャーが「利用時間をうまく管理できずにいる」ことや、ソーシャルメディア上に好ましくないコンテンツを投稿するユーザーが存在することを指摘。Meta自身は通信品位法第230条によって、ユーザーが投稿したコンテンツに対する責任を負わないとも主張している。
元従業員の証言が示す「ザッカーバーグの優先順位」
裁判の行方を大きく左右する可能性があるのが、内部関係者の証言だ。先週火曜日から水曜日にかけて行われた審理では、Metaの元従業員で、これまでの裁判でも重要証人として名を連ねてきたアルトゥーロ・ベハールが出廷した。彼の証言は、CEOマーク・ザッカーバーグが若年ユーザーの安全を事業上の優先事項として扱っていなかったという核心をつくものだった。
この証言は、Metaの企業文化や経営判断の実態を赤裸々に語るものとして、陪審に強い印象を与えたとみられる。特に、子どもの安全よりもエンゲージメントや広告収入の最大化が優先されていたという構造的な問題が浮き彫りになった。
法廷では、Meta側の弁護士陣がマイクの不具合に何度も見舞われるなど、思わぬハプニングも発生。傍聴人が埋め尽くす中で、イボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ首席判事のもと、激しい攻防が繰り広げられている。
子ども安全訴訟が問いかけるプラットフォームの責任
一連の訴訟が示すのは、単なるCOPPA違反の有無にとどまらない、より深い問題だ。それは、ソーシャルメディアプラットフォームの設計そのものが子どものメンタルヘルスや発達にどのような影響を与えるのか、という根本的な問いである。今回の裁判では、Metaが導入してきた安全機能の実効性と、企業としての説明責任が厳しく問われている。
また、通信品位法第230条を盾にしたプラットフォーム免責の考え方も、大きな岐路に立たされている。同条項は本来、表現の自由を保護するためのものだが、子どもの安全という公共の利益と衝突するケースが増えている。本裁判の判決次第では、米国におけるソーシャルメディア規制の枠組み全体に波及効果が及ぶ可能性がある。
今後もカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所での審理が続く。Metaが示す反論の説得力と、原告側が提示する証拠の重み。この法廷闘争の結末は、世界中の子育て世代や教育関係者、そして何より子ども自身の未来に、直接的な影響を与えることになるだろう。