大阪大とNEC、1TBを約90秒で転送する「RED-ONION」構築

大阪大学とNECが共同開発した「RED-ONION」は、1TBのデータを約90秒で転送し、研究現場のボトルネック解消を目指す。

投稿者 central
大阪大学とNECが次世代データ転送基盤「RED-ONION」を構築。試験運用は2026年10月から。
ハイライト
  • RED-ONIONは100Gbps級の専用光ファイバーネットワークで大阪大学の研究施設を接続する。
  • この基盤により、1TBの研究データを約90秒で転送でき、AI処理やシミュレーションが迅速化される。
  • NECは本技術を「BluStellar」枠組みで社会実装し、防災や医療分野への応用を目指す。

国立大学法人大阪大学のD3センターと同大学産業科学研究所、NECの3者は、ゲノムや医療データといった厳格な管理が求められる機微データを安全かつ超高速に転送する次世代データ転送基盤「RED-ONION(レッド・オニオン)」を共同で構築したと発表した。2026年10月より、大阪大学吹田キャンパス内で試験運用を開始する。この基盤により、研究現場の実験設備とスーパーコンピューターを直結し、日本の学術研究における「AI for Science」を強力に推進していく方針だ。

約90秒で1TBを転送——RED-ONIONが実現する超高速データ連携

最先端の科学研究において、実験装置や計測機器の進化、AI技術の発展に伴い、取り扱うデータ量は爆発的に増加している。しかし、多くの大学や研究機関では、大容量データを日々生成する「実験室」と、高度なデータ分析やシミュレーションを行う「高性能計算システム」が物理的・組織的に離れて設置されているケースが多い。そのため、機密性の高い大容量データをいかに迅速かつ安全に移動させ、計算資源と連携させるかが、研究開発における大きなボトルネックとなっていた。

RED-ONIONは、この課題を解決するために構築された。大阪大学の産業科学研究所とD3センターを100Gbps級の専用光ファイバーネットワークで接続。ネットワークやサーバー内のデータ処理を専用エンジンで一括制御し、並列実行する技術を採用した。これによりディスク間の大容量データ転送が劇的に高速化され、1TBの研究データを約90秒で転送できる見込みだ。この超高速・高セキュアな通信基盤により、産業科学研究所で生成された機微データは、即座にD3センター内のスーパーコンピューター「SQUID」や「OCTOPUS」、クラウド基盤「mdxII」などに安全に収容される。高性能な計算システム上でAI処理やシミュレーション解析を瞬時に行い、その結果を再び研究所へ送り返すといった双方向の連携がシームレスに実現する。

なぜ「速度」と「セキュリティ」の両立が研究の鍵を握るのか

AI for Scienceの推進において、データの転送速度は単なる効率化の問題にとどまらない。実験機器が生成するデータは、しばしばリアルタイム性が求められる。例えば、放射光施設や電子顕微鏡、ゲノムシーケンサーなどは、1秒間に数ギガバイトから数十ギガバイトのデータを連続的に生成する。このデータをいったん保存し、後日手動で転送する従来の方法では、研究の迅速なフィードバックが困難だった。RED-ONIONは、実験と計算をほぼリアルタイムで連携させることで、研究サイクルを根本から変革する可能性を秘めている。

さらに、医療データやゲノムデータは、個人情報保護の観点から極めて厳格な管理が求められる。従来のネットワーク経由での転送には、暗号化やアクセス制御に加え、データ漏洩リスクへの対策が不可欠だった。RED-ONIONは専用の光ファイバーネットワークと専用エンジンによる制御で、外部からの不正アクセスを物理的・論理的に遮断する設計となっている。これにより、機微データを安全かつ高速に移動できる環境が整った。

「SQUID」「OCTOPUS」との連携——大阪大学が持つ計算資源のフル活用

RED-ONIONのもう一つの重要な要素は、大阪大学が保有する最先端の計算資源との連携だ。D3センターには、スーパーコンピューター「SQUID」と「OCTOPUS」、そしてクラウド基盤「mdxII」が整備されている。SQUIDは、大規模並列計算に特化したシステムで、シミュレーションやAIモデルの学習に強みを持つ。一方、OCTOPUSは、データ解析や機械学習のワークロードを効率的に処理する。これらのシステムが、RED-ONIONを通じて産業科学研究所の実験設備と直結されることで、データ生成から解析、結果のフィードバックまでを一貫して高速に行えるようになる。

特に注目すべきは、3者が10月からの試験運用を通じて、対象とするデータ種別や運用範囲を順次確定させていく点だ。将来的には、大阪大学内の他部局や、他の研究機関へのインフラ拡張も見据えている。この柔軟な拡張性は、RED-ONIONが単なる学内プロジェクトにとどまらず、日本全体の研究基盤として発展する可能性を示唆している。

NECが「BluStellar」の枠組みで展開する社会実装戦略

NECは、今回の共同開発で培った超高速データ転送技術を「NEC Ultra-high-speed Data Transfer System(NEC UDTS)」として独自のソリューションに昇華させる。そして、同社の価値創造モデル「BluStellar」の枠組みの中で、広く国内外の大学・研究機関へ社会実装していく方針だ。BluStellarは、NECが持つネットワーク、AI、セキュリティ技術を統合し、社会課題の解決を目指すビジョンである。RED-ONIONで実証された技術は、防災や医療、製造業など、さまざまな分野でのデータ転送課題に応用できる可能性を秘めている。

研究現場のボトルネックを解消するRED-ONIONは、日本の学術研究の競争力を高めるだけでなく、データ駆動型社会の基盤技術としても注目される。2026年10月からの試験運用の成果が、今後の研究開発のスピードをどのように変えるのか。その動向から目が離せない。

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