Slackは、チャット画面から直接、インタラクティブなレポートやダッシュボード、アンケート、プレゼンテーション資料をAIで生成できる新機能「Slackforce Surfaces」を発表した。この機能により、ユーザーはデータを外部ツールにエクスポートすることなく、Slackbotに自然言語で指示を出すだけで、業務に必要な情報資産を作成できるようになる。Salesforceが展開するSlackにとって、コミュニケーションツールから「作業の起点」への進化を象徴するアップデートであり、2026年10月より実データを用いた運用が可能となる。
「Slackforce Surfaces」とは何か——対話型AIによるレポート作成の全容
新機能「Slackforce Surfaces」の核となるのは、チャット上での対話を通じてAIに作業を依頼するというシンプルな体験だ。具体的には、ユーザーがSlackbotに対して「AIトークンの使用状況を、アーケードゲーム風のビジュアルで表示して」といった要求を自然言語で送る。するとAIは、設定された権限に基づいて、関連するチャンネル上の会話や、連携済みのGoogle Drive、Salesforceなどの外部アプリから必要なデータを収集。その場でインタラクティブなダッシュボードやレポートを生成する。
Slackの最高マーケティング責任者(CMO)であるRyan Gavin氏は、本機能の意義について「データを理解するために他のツールにエクスポートする必要はない。会話が行われているその場で、Slackbotにダッシュボードや資料、レポートの作成を依頼できる。チーム全体でそれをもとにすぐに行動を起こせる」と説明している。
チャットの流れを止めない——作成から共有、コラボレーションまで
Surfacesで作成されたコンテンツは、単なる静的なドキュメントではない。同僚と共有可能で、特定のチャンネルにピン留めすることもできる。他のメンバーは、そのデータを閲覧するだけでなく、画面上で操作を行ったり、コメントを残したりといったインタラクションが可能だ。これにより、レポート作成のために会話の流れを中断したり、専用のツールに移動する必要がなくなり、業務のコンテキストを維持したまま意思決定を進められる。
例えば、顧客サポートのキューをリアルタイムで表示するライブダッシュボードを作成すれば、サポートチーム全体が常に最新の状況を把握できる。また、連携アプリからデータを引っ張ってきて、天気をテーマにした財務予測のビジュアライゼーションを作るといった、創造的な使い方も想定されている。
全ユーザーが対象——無料プランでも利用可能に
Slackは、このSlackforce Surfacesを、Slackbotが有効化されているすべてのワークスペースで利用可能とすると明言している。つまり、有料プランのユーザーだけでなく、無料プラン(フリーミアム)で利用している組織であっても、この機能の恩恵を受けられるという点は注目に値する。実データを使った運用は2026年10月から開始されるが、それに先駆けてプレビュー版や初期アクセスが提供される可能性もある。
なお、本機能が参照するデータは、あくまでユーザーがSlackのAIツールに対してアクセスを許可した情報のみに限定される。企業データのセキュリティやコンプライアンスに配慮した設計となっており、機密情報が意図せずレポートに含まれるリスクは低減されている。
ビジネス現場にもたらすインパクト——「情報収集」から「情報創造」へ
Slackforce Surfacesがもたらす最も大きな変化は、Slackのポジションそのものの変革にある。これまでSlackは、プロジェクトやチーム内での「情報収集」や「コミュニケーション」の場として機能してきた。しかし、本機能によって、チャット上で直接「情報を創造し、分析し、可視化する」プラットフォームへと進化を遂げる。
特に日本企業において、ミーティングやメール、チャットを経由した情報の非効率な流れは長年の課題だ。「会議のための資料作り」に多くの時間を費やし、肝心の議論がおろそかになるといったケースは少なくない。Slackforce Surfacesは、こうした非効率を根本から解消する可能性を秘めている。AIがリアルタイムでデータを集約し、可視化してくれるため、人間は本質的な分析や意思決定、創造的な議論にリソースを集中できるようになる。
競合サービスとの比較——Slackの独自性
ビジネスチャット市場では、Microsoft TeamsがCopilotを統合し、Google ChatがGeminiと連携するなど、AI機能の強化が加速している。こうした競合に対し、SlackはSalesforceという巨大なCRM・データ基盤を背景に持つ点で差別化を図る。Surfacesは、Google DriveやSalesforceといった外部サービスとのシームレスな連携が売りであり、特に営業やマーケティング、カスタマーサポートといった、多様なデータソースを扱う部門での活用が期待される。
また、インタラクティブ性を重視した点もユニークだ。単なるテキスト要約やグラフ生成にとどまらず、ユーザーが操作できるダッシュボードや、コメントを残せるレポートをチャット空間で完結させる設計は、他の競合にはない明確な特徴となっている。
今後の展望——エンタープライズAIの新たな標準へ
Slackforce Surfacesの登場は、エンタープライズ向けAIツールの進化において、一つの節目となるだろう。これからのビジネスツールは、単に「情報を伝達する」だけでなく、「情報の価値を最大化し、行動を促進する」ことが求められる。Slackは、この新機能によって、チャットアプリケーションの概念を超えた、次世代のワークプレイスプラットフォームを目指している。
2026年10月からの実データ運用開始後、この機能が実際の業務効率やチームのアウトプットにどのような変化をもたらすのか。日本企業を含むグローバルなユーザーの反応とともに、その効果が注目される。