東急電鉄は2025年6月18日、車内におけるモバイルバッテリーの使用に関する注意喚起を更新し、一部の車両に設置されている電源コンセントを使ったモバイルバッテリーの充電を控えるよう呼びかけた。これは充電中の発火トラブルが相次いでいることを受けた措置であり、6月15日に出した「車内での充電を控えて」という呼びかけに、コンセントからの充電自粛を追加する形となった。
東急電鉄が「車内でのモバイルバッテリー充電」自粛をお願いする理由
東急電鉄が今回の注意喚起を更新した背景には、2025年6月15日朝に発生したトラブルがある。東横線・武蔵小杉駅付近を走行中の車内で、充電中のモバイルバッテリーが発煙する事故が起きたのだ。この影響で東横線は一時運転を見合わせ、直通路線を含む各線でダイヤの乱れが生じた。
更新後の告知では、従来から求めていた「車内でのモバイルバッテリーを使用した機器の充電」の自粛に加え、「一部の車両に設置されている電源コンセントを使用したモバイルバッテリーへの充電」も控えるよう明記された。両方とも禁止ではなく、あくまで利用者への「お願い」としての位置づけである点が特徴だ。
コンセントを備えるのは有料座席「Q SEAT」連結車両
東急が車内に電源コンセントを設置しているのは、有料座席指定サービス「Q SEAT」を連結する車両に限られる。Q SEATは、東横線や目黒線などで運行される列車の一部に連結された、追加料金で利用できる座席指定車両だ。長時間の移動や通勤時の快適性を求める乗客に利用されており、ノートPCやスマートフォンをコンセントで充電しながら使う光景が日常的に見られた。
しかし、今回の注意喚起により、Q SEAT車両でもモバイルバッテリーの充電のためにコンセントを使う行為は控えるよう求められている。なお、スマートフォンやノートPCといった端末そのものの充電については、引き続きコンセントの使用が可能と見られる。
モバイルバッテリーの発火リスクと鉄道各社の対応
モバイルバッテリーによる発煙・発火トラブルは、鉄道業界に限らず航空機や公共施設などでも相次いで報告されている。リチウムイオンバッテリーは内部短絡や過充電、外部からの衝撃などにより熱暴走を起こすリスクがあり、特に充電中は発熱が伴うため注意が必要とされる。
鉄道各社ではすでに、車内でのモバイルバッテリー使用に対する注意喚起やルールの整備が進められている。JR東日本や東京メトロも、車内放送や掲示を通じて、発熱や発煙時の対応を周知している。東急電鉄の今回の対応は、こうした業界全体の流れをさらに強化するものといえる。
充電中の発火が発生した場合の影響は甚大
電車の車内は密閉された空間であり、一度モバイルバッテリーが発煙・発火すると、乗客の避難や消火が困難になる。2025年6月15日の東横線のケースでも、発煙により列車が緊急停止し、運転見合わせによって通勤時間帯のダイヤが大きく乱れた。ラッシュ時であった場合、被害はさらに拡大する可能性があった。
東急電鉄は、車内でモバイルバッテリーが異常に発熱した場合や発煙が生じた場合には、直ちに乗務員に知らせるよう呼びかけている。また、モバイルバッテリーそのものの車内への持ち込み自体は禁止されておらず、あくまで充電行為の自粛が求められている点を理解しておく必要がある。
ユーザーはどう行動すべきか
今回の注意喚起は、モバイルバッテリーの安全な取り扱いを改めて意識させる機会となる。モバイルバッテリーは、PSEマーク(電気用品安全法の適合証明)が付いた製品を選ぶ、破損や膨らみがないか定期的に確認する、直射日光の当たる場所や高温になる環境で保管しないといった基本的な対策が重要だ。車内で充電が必要な場合は、事前に十分な残量を確保しておくか、駅構内のサービスを活用するといった工夫が求められる。
東急電鉄の対応は、安全最優先の観点から合理的な判断であり、他の鉄道事業者や交通機関にも波及する可能性がある。モバイルバッテリーの普及が進む一方で、その安全性が改めて問われることとなった。