トヨタの完全電動SUV、bZ4x(日本名:bZ4X)が2026年モデルとして大幅な改良を施し、北米市場に投入された。1週間にわたるニューヨークでの試乗の結果、その走行性能は「EV版RAV4」と評するにふさわしい完成度を見せている。しかし、唯一にして最大の欠点として、ドライバーモニタリングシステムの仕様に疑問が残る。
2026年型トヨタbZ4xの試乗インプレッション
ニューヨークのストップ&ゴーが絶えないマンハッタンの市街地から、ロングアイランドへと続く高速道路まで、実に多様なシチュエーションでbZ4xを試す機会を得た。まず驚かされるのは、その乗り心地の良さだ。プラットフォームに採用されたe-TNGAは、バッテリーをフロア下に搭載するEVならではの低重心を生かし、しっとりと落ち着いた乗り味を実現している。これは、同社のベストセラーSUVであるRAV4の電動版を想起させる、極めてバランスの取れたフィーリングである。
加速性能は、日常域で必要十分なトルクを瞬時に立ち上げる。モーターならではの静粛性も高く、車内は驚くほど静かだ。内装の質感も向上しており、最新のインフォテインメントシステムは12.3インチの大型ディスプレイを中心に、直感的な操作が可能である。EVとしての航続距離も、実用域で十分な数値が確保されていると感じた。
ドライバーモニタリングの実態:煩わしさの原因
しかし、この優れたパッケージングに水を差すのが、ドライバーモニタリングシステムだ。これは、運転中のドライバーの顔をカメラで監視し、脇見運転や居眠りを検知する安全機能である。狙いは理解できる。だが、bZ4xに搭載されたシステムの感度は、あまりにも過敏で、かつ警告の方法が煩わしいのだ。
例えば、高速道路で前方を注視しながら運転していても、サングラスの位置や顔の向きがわずかに変わっただけで、ディスプレイに警告が表示される。さらに、その警告音は「ピー」という耳障りな高音で、車内の静粛性を台無しにする。この頻繁な誤警報は、ドライバーにストレスを与えるだけでなく、肝心の危険時の警告に対する信頼性を損なう恐れがある。
なぜこのシステムは問題なのか
この問題の根幹は、システムのロジックにある。トヨタは、北米の安全規制に対応するため、このシステムの感度を意図的に高く設定した可能性が高い。しかし、実際の運転シーンでは、人間は首を回してミラーを確認する、信号待ちで周囲を見渡すなど、安全運転に不可欠な動作を行う。bZ4xのシステムは、こうした自然な動作を「脇見」と誤認するケースが多すぎるのだ。
これは単なる「ちょっとした使い勝手の悪さ」ではない。運転の質に直接影響を与える問題である。折角の優れた乗り心地も、警告音と警告表示によって常に中断されるのでは、台無しと言わざるを得ない。この点は、2026年型へのアップデートで最も改善が期待されたポイントのはずだが、その期待は裏切られた形だ。
bZ4xの競争力:良し悪しの明確な線引き
では、このbZ4xは買いなのか、それとも見送るべきなのか。答えは、買い手の優先順位による。走行性能、静粛性、そして実用性というEVの根幹部分において、bZ4xは競合のフォルクスワーゲンID.4やヒョンデ・アイオニック5と互角、あるいはそれ以上の完成度を持つ。RAV4の乗り味をEVで求めるユーザーにとって、この選択肢は極めて魅力的だ。
しかし、運転アシストや安全技術の「完成度」に絶対的な価値を置くユーザーは、注意が必要だ。このドライバーモニタリングシステムは、テスラやメルセデス・ベンツのシステムと比較すると、明らかに洗練度で劣る。特に、高速道路での長距離移動を快適にこなしたいと考えているなら、この煩わしさは無視できない欠点となる。
改善の余地と今後の展望
この問題は、ソフトウェアのアップデートで改善できる可能性が高い。実際、トヨタはOTA(Over-the-Air)アップデートに対応しており、今後のバージョンアップで警告の閾値が調整されることを期待したい。また、エンジニアリングの観点からは、カメラの画角や顔認識のアルゴリズムそのものを見直す必要があるだろう。
bZ4xは、トヨタのEV戦略における重要なピラーである。そのポテンシャルは間違いなく高い。しかし、ドライバーモニタリングという、一見すると「小さな安全機能」の完成度が、製品全体の評価を大きく左右する好例となった。この課題をトヨタがどう克服するのか。今後のアップデートに注目が集まる。