キオクシアに371億円賠償評決、株価ストップ安

キオクシアに371億円の賠償命令、米Viasat特許訴訟で陪審が全面勝訴の評決。株価はストップ安。

投稿者 central
陪審がキオクシアの特許侵害を認め、371億円の賠償を命じた。株価は急落しストップ安。
ハイライト
  • キオクシアは米Viasatとの特許訴訟で陪審敗訴し、371億円の賠償命令を受けた。
  • 株価は前日比16.1%安のストップ安となり、市場はリスクを織り込んだ。
  • キオクシアは評決を不服として控訴する方針を明らかにし、法的手段を尽くす構えだ。

キオクシアホールディングス(キオクシアHD)は7月17日、米国子会社が米衛星通信大手Viasat(ビアサット)から提起されていた特許侵害訴訟において、陪審が原告の主張を全面的に認める評決を下したと発表した。損害賠償額は暫定で約2億2900万ドル(1ドル=162円換算で約371億円)に上る。この判決を受け、同日の東京株式市場ではキオクシアHD株が急落。値幅制限いっぱいの前日比1万円(16.1%)安となる5万2110円まで売り込まれ、ストップ安で取引を終えた。

キオクシアに371億円の賠償命令——Viasat特許訴訟で陪審評決

問題となったのは、キオクシアのフラッシュメモリ製品に関連する特許侵害だ。Viasatは2021年11月、米テキサス州西部地区連邦地方裁判所にキオクシアおよび米Kioxia Americaを提訴。同社のグループ製品の一部が、自社の持つ特許の請求項1件を侵害していると主張していた。陪審が評決を出したのは米国時間7月16日である。

キオクシアHDは「Viasat社の主張及び陪審の判断は到底容認できるものではない」と強く反発。評決内容に誤りがあるとして、評決後の申し立てを行うとともに、必要に応じて控訴も視野に入れた「取り得るあらゆる法的手段」を講じる方針を示している。

争点となった特許と技術の中身

ロイター通信や米Bloomberg Lawなどの報道によれば、今回の訴訟で争点となったのは、フラッシュメモリのエラー訂正に関する米国特許(米国特許8615700号)だ。この技術は、データ読み書き時の誤りを効率的に訂正することで、機器の消費電力を抑える効果を持つとされる。Viasatは、キオクシアの製品がこの特許の請求項16を侵害していると主張していた。

賠償額は、2026年3月末までの過去の侵害分を、特許使用料に相当する形で算定したものとみられる。キオクシア側はこれまで、米国特許商標庁の特許審判部(PTAB)でこの特許の有効性を争ってきた。一部の請求項は別の審判で特許性を否定され取り消されたものの、今回の訴訟で争われた請求項16は維持された経緯がある。2025年12月には連邦巡回控訴裁判所も、請求項16を含む残りの請求項についてPTABの判断を支持していた。

株価ストップ安——市場が示した厳しい評価

市場の反応は辛辣だった。7月17日の東京株式市場においてキオクシアHD株は寄り付きから売りが殺到。前日比1万円(16.1%)安の5万2110円でストップ安を付け、そのまま引けた。371億円という巨額の賠償金が業績に与える影響に加え、今後の訴訟対応や控訴の行方次第では長期間にわたる不確実性が経営を圧迫するとの懸念が広がった格好だ。

キオクシアHDは、今回の評決が顧客への製品やサービスの提供に影響することはないと説明している。連結業績への影響は現在精査中であり、開示すべき事由が生じた場合は速やかに公表するとしているが、市場関係者の間では「訴訟費用や和解金の可能性も含め、今後の動向を注視する必要がある」(国内証券アナリスト)との声が聞かれる。

Viasatとは——衛星通信大手が仕掛けた知財戦略

Viasatは米カリフォルニア州に本社を置く衛星通信会社で、航空機内インターネット接続や衛星ブロードバンドサービスで知られる。同社は積極的な特許ポートフォリオの構築で知られ、半導体関連企業に対しても知的財産権を行使するケースがある。今回の訴訟も、その一環と位置づけられる。

特許訴訟の行方は、キオクシアの経営戦略にも影響を及ぼす可能性がある。同社は2024年10月に東京証券取引所プライム市場に上場。NAND型フラッシュメモリ市場では、韓国サムスン電子やSKハイニックス、米国マイクロン・テクノロジーとの競争が激化する中、知財リスクの顕在化は経営上の新たな重荷となる。

今後の展望——控訴の可能性と業界への示唆

キオクシア側は、PTABで特許の有効性を争った経緯があるだけに、今回の陪審評決を不服として控訴する可能性が高い。米国特許訴訟では、陪審評決後に裁判官が法律判断を下し、その後に控訴審へと進むのが一般的な流れだ。キオクシアが主張する「評決の誤り」が具体的にどのような点にあるのか、今後の法廷闘争で明らかになるだろう。

半導体業界では、特許を巡る訴訟が後を絶たない。特にフラッシュメモリ分野では、エラー訂正技術やメモリセル構造に関する知的財産権が複雑に絡み合い、企業間のクロスライセンス契約が重要な競争力の源泉となっている。本件は、キオクシアにとどまらず、日本の半導体産業全体にとっても、知財戦略の重要性を改めて認識させる出来事と言える。

371億円という賠償額は、キオクシアHDの連結業績に与える影響が無視できない規模である。同社の2025年3月期の営業利益が約3000億円であったことを踏まえると、その12%超に相当する金額だ。控訴審で結果が覆る可能性は残されているものの、市場は当面、このリスクを織り込んで値を付けることになりそうだ。

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