Thinking Machines Labの共同創業者であるリリアン・ウェン氏が、健康上の理由で同社を去り、再びOpenAIに復帰する。ウェン氏は7月27日(現地時間)、自身のXアカウントでこの決断を公表した。
ウェン氏は投稿の中で、「数カ月間考え抜いた結果、継続的なストレスと仕事量が、肉体的に耐えられる限界を超えてしまったことを認めざるを得ない」と述べ、健康を優先するために退社する意向を示した。米TechCrunchなど複数の米メディアは、ウェン氏がOpenAIに戻ると報じている。
Thinking Machines LabのCEOを務めるミラ・ムラティ氏は、この投稿に「あなたがいなくなると寂しくなります。Thinkyを一緒に作ってきた時間は本当に素晴らしいものでした。健康を第一に考えてくれて嬉しいです。すべてに感謝します」とリプライし、感謝の意を伝えた。
ウェン氏のOpenAI復帰と新たな役割
ウェン氏はOpenAIでAI安全性研究担当の副社長を務めた経歴を持つ。OpenAIの声明によると、同氏は再帰的自己改善(Recursive Self-Improvement)に関する分野横断的な研究チームを率いる予定だ。再帰的自己改善は、AIが自らの能力を自律的に向上させる技術領域であり、同社の長期的な安全性研究の中核を担うプロジェクトと位置づけられている。
相次ぐ共同創業者のOpenAI回帰
Thinking Machines LabからOpenAIへの人材流出は今回が初めてではない。今年1月には、共同創業者でCTOのバレット・ゾフ氏、同じく共同創業者のルーク・メッツ氏、サム・ショーンホルツ氏の3人が相次いでOpenAIに復帰している。これにより、昨年1月にムラティ氏、ウェン氏らが設立した同社の共同創業者のうち、すでに4人がOpenAIに戻ったことになる。
Thinking Machines Lab、初のAIモデル「Inkling」を公開
ウェン氏の退社発表の直前、Thinking Machines Labは初のAIモデルとなる「Inkling」を7月16日に発表した。Inklingはテキスト、画像、音声を入力できるマルチモーダルモデルで、Apache 2.0ライセンスの下、全ウェイトをHugging Faceで公開している。同社は「現在利用できる最強のモデルではない」と明言しつつ、ファインチューニングのしやすさを重視した「カスタマイズに適したオープンウェイトの基盤」と位置づけている。
今回のウェン氏の離脱は、同社の研究開発体制に一定の影響を与える可能性がある。一方で、Inklingのようなオープンなモデル公開戦略は、コミュニティベースの開発を促進する狙いもあり、ムラティCEOを中心とした新たな体制での今後の展開が注目される。
OpenAIに復帰したウェン氏が、再帰的自己改善という難易度の高い領域でどのような成果を挙げるのか、業界の関心は高い。AI安全性と自律的な能力向上のバランスをどう取るかが、今後の重要なテーマとなるだろう。