ステーブルコイン大手Circle、AI同士が決済する「経済のOS」公開 次世代市場へ布陣

CircleがUSDC対応L1ブロックチェーンArcを公開、AI 同士の自律決済を可能にするEconomic OSを提供。

投稿者 central
ハイライト
  • ArcはUSDCでガス代を支払えるレイヤー1ブロックチェーンである。
  • 決済確定時間は約0.5秒で、100万分の1ドルの超少額決済にも対応する。
  • 創設バリデーターにはブラックロック、Visa、Mastercardなど金融大手が参画している。

米ステーブルコイン大手Circleが、独自レイヤー1ブロックチェーン「Arc」のメインネットを公開し、AIエージェント同士が自律的に決済を行う次世代の経済基盤を「Economic OS(経済のOS)」として発表した。ガス代をUSDCで支払える仕組みや約0.5秒で完了する高速決済、さらには100万分の1ドル規模の超少額決済に対応する「Circle Nano Payments」まで視野に入れており、AIが主体となる経済圏のインフラとして注目を集めている。

Arcとは何か──USDCでガス代を払えるL1ブロックチェーン

Circleが先日メインネットを公開したArcは、同社が発行するステーブルコインUSDCをネイティブ通貨として採用するレイヤー1ブロックチェーンだ。従来のブロックチェーンではガス代(手数料)をETHやその他ネイティブトークンで支払う必要があったが、ArcではUSDCの残高から直接手数料を差し引ける。企業は価格変動リスクのあるトークンを保有する必要がなく、送金用のUSDCをそのまま運用資金として活用できる点が大きな特徴である。

決済の確定時間は約0.5秒と、実用的な速度を達成。創設バリデーターには資産運用大手のブラックロック、証券決済基盤のDTCC、Visa、Mastercardといった金融業界の巨人が名を連ねており、既存の金融システムとブロックチェーンを橋渡しする存在としての位置付けが明確だ。

「Economic OS」が目指すもの──既存の金融活動をオンチェーンへ

Circleの最高製品・技術責任者(CPTO)であるNikhil Chandhok氏は、Arcを「Economic OS(経済のOS)」と表現する。このフレーズに込められた意図は、既存のブロックチェーンやDeFi(分散型金融)から流動性を奪うことではない。むしろ、現在は銀行や証券市場、企業間決済といった従来の金融チャネルで行われている活動を、徐々にオンチェーンへと移行させることにある。

具体的な展開はすでに始まっている。Arc上では約16種類のステーブルコインが扱われ、各国通貨をオンチェーンで交換する「StableFX」が稼働。ブラックロックは同社のマネー・マーケット・ファンド「BUIDL」をArc上で展開済みであり、DTCCも2027年後半を目標に保管資産のArc接続を計画している。金融機関が実用レベルでブロックチェーンを活用する流れが、着実に加速していることが分かる。

AIエージェントが主体となる経済圏──仕事の発注から決済まで

Circleがその先に見据えるのは、AIエージェント自身が経済活動の主体となる世界だ。エージェントが自ら資金を持ち、仕事を受け、報酬を受け取り、さらに別のエージェントに仕事を依頼する。こうした「AIがお金を動かす経済圏」のインフラをArc上に構築する計画である。

特に象徴的なのが、100万分の1ドル(約0.0001円)規模の決済まで想定する「Circle Nano Payments」だ。人間が数円単位の仕事を一件ずつ発注し、請求や決済を処理するのは現実的ではない。しかし、AI同士が自動的に仕事を発注し、即座に支払いまで完了できるのであれば、これまで採算が合わなかった極小額の取引も市場として成立する可能性がある。

Circleはこの経済圏に向けて、AIエージェントを探すマーケットプレイスやレピュテーション機能、エージェント間の超少額決済などをArc上に順次実装する方針を示している。

市場規模は3〜5兆ドル──競合も動き始めるAI決済分野

この見立てはCircle独自のものではない。マッキンゼーは2030年までにエージェント主導の取引額が3〜5兆ドルに達すると試算しており、バイナンス創業者のCZ(Changpeng Zhao)氏も、AIエージェントの決済需要にはブロックチェーンが最も自然な手段になると予想している。CoinbaseらによるAI決済プロトコル「x402」はすでに市場を先行しており、Circleは有力プレイヤーが出揃いつつある分野に、自前のL1ブロックチェーンで参入する形だ。

ただし、現時点では1件あたりの取引額が極めて小さいため、件数に比べて決済総額はまだ限定的である。また、AIにどこまで支払い権限を委ねるかという「承認の委任」の課題も残されており、実運用には法的・制度的な整理も必要となる。

インフラ整備はすでに始まっている

AIエージェントによる決済は、まだ黎明期にある。しかし、ArcのようなL1ブロックチェーンの登場により、その基盤整備は確実に進み始めている。Circleは自社のUSDCという流動性と、金融機関との強固なパートナーシップを武器に、次世代の経済インフラとしての存在感を高めようとしている。Arcが本当の意味での「経済のOS」として普及するかどうかは、今後のエコシステムの拡大と、AIエージェント市場の成熟度にかかっている。2027年以降の動向から目が離せない。

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