Appleは現地時間6月8日、年次開発者会議「Worldwide Developers Conference(WWDC)」において、iPhone向け次期OS「iOS 27」をはじめとする複数の新機能とサービスを正式に発表した。特に注目を集めたのは、Googleの大規模言語モデル「Gemini」を基盤に採用した新たな「Apple Intelligenceaa」、そして刷新された音声アシスタント「Siri AIa」である。本稿では、基調講演で明らかにされた主要な発表を、業界動向やユーザーへの影響も交えて詳報する。
iOS 27、新Siri搭載でパフォーマンスも向上
次期モバイルOS「iOS 27」は、AIを統合した新音声アシスタント「Siri AI」の搭載が最大のトピックだ。これに加え、ユーザーインターフェース「Liquid Glass」のより細かなカスタマイズが可能になったほか、アプリの起動速度が最大30%高速化するなど、パフォーマンス面でも大幅な改善が図られている。対応機種は2019年発売の「iPhone 11」シリーズ以降で、2020年の「iPhone SE(第2世代)」も含まれる。このことは、同社が旧型モデルにもう1年の延命措置を与えたものと解釈できる。
Google Geminiを基盤とする「Apple Intelligence」の全貌
刷新された総合AI機能「Apple Intelligence」の基盤モデルは、Googleとの提携により同社の「Gemini」技術を採用して開発された。長年にわたってうわさされてきたAppleのAI戦略強化がついに現実のものとなったが、同社はプライバシー重視の従来姿勢を堅持。オンデバイス処理とクラウド処理の最適なバランスにより、個人データの保護を徹底しながら高度なインテリジェンスを実現するという。このアプローチは、競合他社とは一線を画すAppleの強みとして、今後のAI市場における差別化要因になると見られる。
新たな音声アシスタント「Siri AI」とは
今回刷新された音声アシスタントは、単なるアップデートではなく、名称も新たに「Siri AI」として生まれ変わった。専用アプリの提供、新しいデザインの採用、そしてビジュアルインテリジェンス機能を搭載。ユーザーが音声を選択する際のカスタマイズオプションも大幅に拡充されている。ただし、提供開始時点では英語のみの対応となり、日本語を含むその他の言語は順次追加される予定だ。
iPhoneカメラに搭載される「Siriモード」
iPhoneのカメラアプリには、新機能「Siriモード」が追加される。シャッターボタンを押すだけで、AIチャットボットがレンズを通して認識した被写体をリアルタイムで解説してくれる仕組みだ。例えば、撮影した花の種類や観光地の史跡名などを、その場で詳細に教えてくれる。これは、カメラを「見るためのデバイス」から「理解するためのデバイス」へと進化させる試みといえる。
フォトリアルなAI画像生成が可能に「Image Playground」
画像生成AI「Image Playground」も大幅に強化された。AIモデルの高度化により、従来のイラスト調やアニメ調に加え、フォトリアル(写実的)なAI画像の生成が可能になった。ユーザーはテキストや画像を基に、より自然で高精細なビジュアルを作成できるようになる。クリエイティブ領域におけるiPhoneの可能性を大きく広げるアップデートと言えるだろう。
macOS 27「Golden Gate」も発表
ソフトウェア責任者のCraig Federighi氏が、バスが走り抜ける印象的な演出とともに紹介したのが、次期macOS「macOS 27 Golden Gate」だ。正式名称からも、Appleがサンフランシスコのランドマークにちなんだネーミングを継承していることがわかる。対応するMacの機種や新機能の詳細については、別途報告されている。
子ども向け安全機能の拡充
iPhoneおよびiPadにおける子ども向けの安全機能も強化された。具体的には、ペアレンタルコントロールの機能向上に加え、許可制のウェブ閲覧など、よりきめ細かな制限が可能になる。Appleは米国小児科学会と協力し、子どものデジタル利用に関する指針を策定していることも明らかにしており、社会的な責任を強く意識した取り組みと言える。
基調講演で「AI」を28分間使わなかった戦略
特筆すべきは、基調講演の冒頭28分間、登壇者が一度も「AI」という言葉を発しなかった点だ。NBC Newsの全米調査によれば、「AI」という言葉に対して肯定的な印象を持つ回答者はわずか26%にとどまる。Appleは自社のAI機能を「Apple Intelligence」という独自ブランドで一貫して呼称することで、ユーザーの警戒心を和らげ、自然に新機能を受け入れてもらう戦略をとったとみられる。
業界への波及効果と今後の展望
今回のWWDCでの発表は、AppleがAI分野で本格的なプレーヤーとしての地位を確立したことを示すものだ。Googleとの提携は、競合であるMicrosoftやAmazonとのAI競争において重要な布石となる。一方で、プライバシー重視の姿勢は、データ収集を前提とする他社のAIサービスとは異なる価値提案をユーザーに提供する。iOS 27の一般提供は今秋を予定しており、Siri AIの日本語対応時期を含め、今後の動向が注目される。