ビットコイン(BTC)は9月10日の取引で価格を1202万円前後で維持しており、世界の暗号資産市場は底堅さを見せている。中東情勢の緊迫化を背景にブレント原油が100ドルを突破し、米国債利回りも上昇するなか、リスク資産とされる暗号資産がなぜ安定しているのか。その背景には、金(ゴールド)との相関関係が約5年ぶりの高水準に達するという構造変化が潜んでいる。
本日時点の主要通貨の価格を確認すると、イーサリアム(ETH)は約38.0万円、ソラナ(SOL)は約1.56万円で取引されている。世界の暗号資産時価総額は約424兆円、ビットコインの市場占有率(ドミナンス)は約59.5%と、依然としてビットコインへの資金集中が続いている。
原油100ドル突破とビットコイン価格のねじれ現象
ブレント原油が7月24日以来となる100ドル台に乗せ、一時100.19ドルまで上昇した。8月初旬からの上昇率は約25%に達している。地政学リスクの高まりは一般的にリスクオフムードを強めるが、ビットコインは1200万円台を堅持した。
このねじれ現象の背景として浮上しているのが、ビットコインと金の相関関係だ。両資産の相関係数が5年ぶりの高水準に達しており、ビットコインが「デジタルゴールド」としての性格を強めつつある可能性を示唆している。金は従来、地政学リスクやインフレ圧力に対するヘッジとして機能してきたが、ビットコインにも同様の資金シフトが起きていると考えられる。
ビットコイン1200万円はなぜ維持されているのか──3つの要因
第一に、中東リスクの高まりによって原油や金に流れたマネーの一部が、暗号資産市場にも波及している点が挙げられる。ビットコインのドミナンスが約60%に迫る水準は、投資家がアルトコインよりもビットコインに安全資産としての役割を期待していることを示す。
第二に、米国の利下げ期待が依然として市場を支えている。原油高はインフレ再燃への懸念を生むものの、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営における柔軟性への期待は根強い。
第三に、機関投資家によるビットコイン現物ETFへの資金流入が継続している点だ。従来のリスク資産とは異なる値動きを見せることで、ポートフォリオ分散の手段としての評価が定着しつつある。
ロンドン証取がトークン化株式構想──議決権が焦点に
暗号資産と伝統的金融の融合が進む動きとして、ロンドン証券取引所(LSE)の取り組みも注目を集めている。LSEは9月1日、Payward社との協業により、株主の権利を保ったまま株式をブロックチェーン上で管理する構想を明らかにした。ただし現時点では規制当局の承認を得た段階ではなく、あくまで検討段階にある。
また別途、LSEは2027年に自社の取引プラットフォーム「LSE 24」でトークン化株式「xStocks」を取り扱う計画も発表している。こちらも承認が条件となっており、実現可能性は今後の規制環境次第と言える。
ここで最大の論点となるのが「議決権」の取り扱いだ。ブロックチェーン上にトークン化された株式が、既存の株主の権利と完全に同等の地位を保証されるのか。証券法上の整理が整わなければ、機関投資家の本格参入には時間を要するとみられる。
「ビットコインを売らずに現金化」する方法とその代償
ビットコインを長期保有しながら流動性を確保したい投資家にとって、「売却せずに現金を得る」手段として注目されているのが、暗号資産を担保としたレンディングだ。しかしこの手法には複雑な仕組みとリスクが伴う。
多くのレンディングアプリはイーサリアムや他のブロックチェーンネットワーク上で動作するため、ビットコインの記録をそのまま担保として利用することはできない。そこで用いられるのが「ラップドトークン」の仕組みだ。
具体的には、投資家はカストディアンにビットコインを預け、その裏付けとして別のネットワーク上で発行されるトークン(例:ラップドビットコイン)を受け取る。このラップドトークンを担保に借り入れを行う。ただし、この方法にはカストディアンへの信頼性や、預けたBTCとラップドトークンの償還リスクが常に付きまとう。
過去には、特定のカストディアンが破綻したケースや、ラップドトークンの発行体が償還を停止した事例も報告されている。「ビットコインを売らずに現金化する」という言葉の裏には、カウンターパーティリスクという現実的な代償が存在する。投資家は、手軽さだけでなく仕組み全体を理解した上で判断する必要がある。
ビットコイン1200万円維持の背景にある市場構造の転換点
原油高騰という典型的なマクロ経済ショックに対し、ビットコインが1200万円の水準を守ったことは、単なる値固め以上の意味を持つ。金との相関関係が強まるなか、ビットコインは「高リスク・高リターンの投機対象」から「マクロ経済の変動を吸収する分散投資対象」へと、その性格を変えつつある。
一方で、トークン化株式や暗号資産担保レンディングといった新たなユースケースの登場は、規制と実務のギャップに直面している。ビットコインが伝統的な金融システムとどのように調和していくのか。その答えは、今後数年の規制動向と市場参加者のリスク認識によって形作られていくことになる。